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![]() ○0505 『臨場』 横山秀夫 △0504 『天使の牙』 大沢在昌 △0503 『殺人の門』 東野圭吾 △0502 『小説ペイオフ―通貨が堕落するとき』 木村剛 △0501 『闇先案内人』 大沢在昌 ○0505 『臨場』 >横山秀夫/光文社 何度も書いていることだが、横山秀夫は短編がうまい。しかも、連作の短編が非常にうまい。『第三の時効』など、その最たるものであろう。これにひけを取らず、うまさを感じさせたのが本書『臨場』である。「臨場」とは、事件現場に臨み、初動捜査に当たること。鑑識の倉石は「終身検視官」の異名を持つプロである。この倉石が臨場する場面を、関係する登場人物を変えて描いている。 上司にも言いたいことをずけずけ言い、私生活は荒れ放題の倉石。しかしながら、その倉石を「校長」と慕う刑事たちが多くいる。それは、自分の仕事に自信とプライドを持ち、上司にも食って掛かる倉石の姿勢から来るものであろう。 確かに倉石の仕事振りは凄い。動植物に滅法強く、現場に残された観葉植物などから、事件の真相を炙り出す。もちろん動植物に限らず、雨、ほこりなどに対する観察眼も鋭く、自殺とみせかけた他殺や、他殺のように見える自殺の真相に迫っていく。 また、ぶっきらぼうに見えて、意外と情にもろいようである。普段、憎まれ口を叩く人間に、ふと優しさを見せられると、妙にうれしくなるのではなかろうか。そんな人間的な魅力も兼ね備えた倉吉という男。 本書を読みながら、私はある人物を思い描いていた。職場でお世話になった大先輩である。あえて役職につかず、一生現場主義を掲げる「頑固親父」 しかしながら、内面には温かい愛情を持っておられ、いろいろとご指導いただいた。上司にもきちんと意見をいい、部下をきちんと叱る。厳しさの中にも、自分を育てようとしてくれている「意志」を感じるから、嫌にならない。「怒る」のは簡単だが「きちんと叱る」のは褒めるより難しいと思う。部下にミスの原因を悟らせ、同じ失敗を繰り返さないよう、かといって落ち込ますのではなく、ミスを前向きな努力に転換するように叱るというのは至難の業である。 もちろん、職場における人間関係は非常に重要である。しかしながら、人間関係を重視しすぎて、本来の職務から外れるようなことがあっては本末転倒。そんな当たり前のことがなかなか実現出来ないのが、日本という国のサラリーマン社会なのかもしれない。
△0504 『天使の牙』 >大沢在昌/角川文庫 背表紙あらすじ:【上巻】覚醒剤に替わり、日本全土を脅かす新型麻薬アフター・バーナー。その元締「クライン」を牛耳る独裁者・君国辰郎の愛人神崎はつみが逃亡した。はつみは組織内部のことを知りつくしていた。そのはつみが警察に保護を求めてきたのだ。連絡を受けた保安二課長・芦田は、「クライン」壊滅の切り札として護衛・移送することを決める。この極秘指令を受けた男まさりの女刑事明日香は、はつみとホテルで接触するが、ヘリからの銃撃を受け二人は瀕死の重体に。だが、奇跡は起こったー!!冒険小説の新しい可能性に挑戦したノンストップ・アクション。 【下巻】犯罪組織「クライン」の独裁者君国の愛人はつみの身体と、女刑事明日香の精神を持つアスカは、己だけを信じて決死の囮を演じていた。組織は警察内部の通報者を使い、次々と殺戮の罠を仕掛けてくる。アスカを守るのは、明日香の元恋人・仁王こと古芳ひとり。だが、古芳はアスカの精神が明日香であることを知らない。一方、アスカは古芳が組織の内通者である疑いを捨てきれない。不協和音が生じた二人にさらなる刺客が…!!息もつかせぬアクション、巧みな構成、想像を絶する展開。感動と興奮を呼ぶエンターテインメントの真髄。 決算でバタバタ。経理にいると10月と4月は読書が進まない。連日の残業と休日出勤で少々疲れ気味。今日は久しぶりに早く帰れたので、久しぶりの更新。 ノンストップ・アクションという肩書き通り、最後まで飽きさせず一気に読了させる作品。脳移植という大沢作品にしては異色の設定。「誰も信じられない」というスリリングな状況が、スピード感と相まって、物語を一層盛り上げている。映画化もされたようだが、主人公のアスカやその相方・仁王など、確かになかなか魅力的なキャラクターが揃っている。 敵方の君国や神(じん)のキャラクターも立っており、またアクションシーンも壮絶で、映画向きの作品といえよう。美貌の戦士・アスカが入れ替わった肉体の脆さに辟易しながら、彼らに立ち向かう場面も面白い。ラストの戦闘シーンでは仁王と金村が中心の闘いであったが、ここでももう少しアスカに活躍してもらいたかった。 しかしながら、人が死に過ぎる。敵の凶暴性を強調する為だろうが、事件に関係の無い人たちまでがバタバタと倒れていく。中でも許せなかったのが金村の妻の死。ここまでやるかと、少々興醒めしてしまった。☆にもかかわらず、主人公の2人が生き延びて、めでたしめでたしというのはいかがなものか。ラストのハッピーエンド的な終わり方は、途中で命を落としていった人たちに顔向け出来ないのではなかろうか。☆ もう少ししんみりとしたラストでもよかったように思うのだが…。
△0503 『殺人の門』 >東野圭吾/角川文庫 背表紙あらすじ:「倉持修を殺そう」と思ったのはいつからだろう。悪魔の如きあの男のせいで、私の人生はいつも狂わされてきた。そして数多くの人間が不幸になった。あいつだけは生かしておいてはならない。でも、私には殺すことができないのだ。殺人者になるために、私に欠けているものはいったい何なのだろうか?人が人を殺すという行為は如何なることか。直木賞作家が描く、「憎悪」と「殺意」の一大叙事詩。 いつの間にか500冊を超え、1ページにつき5冊分の感想をアップしている為、ページ数も100を超えた。htmlの名前をdokusho99.htmlなどとしているので、100ページ目はdokusho100.htmlに。このHPをご覧になっている方にはまったく関係ないことだが、作成者である私にとって、このhtmlの名前はなかなか重要な問題。というのも、各ページのリストがhtmlの順に並んでいる為、dokusho19の次にdokusho100が来てしまうのである。これを見越して、dokusho001とか、dokusho019とかにしておけばよかった…。実を言うと、dokusho10の時点でヤバイと思っていたのだが、まぁよかろうと放っておいたツケが、ここに来て効いてきた。本の冊数の方は、4桁で0001から始めた為、このような問題は生じていないのだが。・・・本当に、どうでもよい話である。 さて、本書の感想を。ひとことで言うと「『白夜行』のコメディ・バージョン」という印象を受けたのが本書である。私こと田島和幸とその友人・倉持。歯医者の息子に生まれ何不自由ない暮らしから、一転して貧乏生活に落ちぶれてしまう田島と、豆腐屋の息子から犯罪すれすれの世界で成金として成功している倉持。対照的な二人の人生を描いた叙事詩である。 『白夜行』との共通点を挙げるなら「長期的・計画的な犯罪」という部分であろうか。倉持の執念ともいえる長期的・計画的な田島に対する「罠」には、背筋が凍る思いがする。倉持のことを恨みながらも、最後までは憎みきれないお人よしの田島。何度も倉持を殺そうと決意するのだが、実行には至らない。殺人という大きな一線を越えることを田島は「殺人の門」と呼ぶ。 倉持と田島の奇妙な友情を淡々と描いているのだが、大きな事件というのは起こらない。詐欺まがいの犯罪に手を染めたりするのだが、殺人を犯すわけでもない。小学生時代から始まり青年となり結婚し、と一人の人生を綴っただけなのだが、読者を飽きさせないのは流石である。 ともすれば非常に暗く重い作品になりそうなところだが、田島のとぼけたキャラクターがそれを救っている。「コメディ」と表したのは、そのあたりのとぼけた雰囲気から。何度騙されても倉持のことを信じてしまう辺りに、田島の育ちの良さが現れているのであろうか。しかしラストでは一転して、厳しい展開に。果たして田島は殺人の門を超えたのか。その答えを筆者は明らかにしていない…。
△0502 『小説ペイオフ―通貨が堕落するとき』 >木村剛/講談社 背表紙あらすじ:2003年12月30日、銀行一斉モラトリアム宣言へ。そして2004年3月末、ペイオフ凍結が解禁される――。日本の金融システムが機能不全に陥るまで、政府、日銀、与党、そして破綻銀行は「迷走」を繰り返してきたかに見える。だが、このシナリオには陰の「演出者」がいた! 2000年6月に刊行された作品。初読は2000.12.22。蔵書整理の一環で再読したのだが、随分前の作品でもあり、かつ途中までは現実の金融危機に即して書かれているため、どこまでがノンフィクションで、どこからがフィクションなのかが分からず、充分に楽しめなかった。初読の際にはリアルタイムで起こっている現実と、これから起こるであろう筆者の予想が明確に区分できていた為、このようなストレスは感じなかった。やはり時事に関する作品はリアルタイムで読むに限る。 しかしながら、大蔵省が公的資金を投入する名目を得るために、わざと金融危機を誘発したという設定は面白い。本書では別の名前になっているが、いわずもがな、北海道拓殖銀行と山一證券の破綻が政府主導というストーリーである。また海外当局者たちが、日本の当局のことを「WTI」つまりWell-Trained Incapabiliy と揶揄しているのは筆者自身なのか実話なのか。 印象に残ったエピソードが2つ。1つ目は「あまり認識されていないが、一万円札とか千円札というお札は、日本銀行の借用証書にすぎない。日本銀行が金利ゼロで一万円や千円の価値がある財貨を手に入れるための借金をしたという証書にすぎないのだ。よくよくお札を観察してみると、それがよくわかる。お札の表面には「総裁之印」というハンコが押してあり、日本銀行総裁の借用書であることが示されている」という部分。これは知らなかった。 もう1つは作中で紹介されている「PT=MV」という等式。PはPrice(物価)、TはTransaction(取引量)、MはMoney(通貨量)、VはVelocity(通貨の流通速度)を表わすという。つまり全ての取引ではモノとカネの交換が成立し、モノの値段と取引量を掛けた数字は、カネの量とその回転速度を掛けたものに等しいという意味だそうである。ここしばらく日本経済が復活しなかったのは、通貨量(M)をいくら増やしても、企業が設備投資などを手控えた為、カネが流通せず、流通速度が上がらなかったからだ、とのことである。 確かにその通りである。日本企業はバブルの痛手を十数年かけて癒し、漸くバランスシートを改善させてきた。ここへ来て日本経済が復活の兆しを見せ始めたのは、量的緩和でカネ余りの状態になっていた日本の金融市場が設備投資などのはけ口を見つけ始めたからであろう。先ほどの等式が正しいのであれば、今まで歯止めを掛けていた(V)が改善し、(MV)が向上する、つまり(P)や(T)がアップするということになる。土地や株式に至っては(T)が限られているから、自ずと(P)が上がっていく。つまりは資産インフレが発生するということであろう。 この度、日銀がゼロ金利を解除したのも、量的緩和に歯止めをかけ、(M)を減らす方向ということだろうか。簡単な等式だが、なかなか奥深い意味を持っていると感じた次第。たまたま読み返した本だが、この等式を目に留めることが出来ただけでも儲けものかもしれない。
△0501 『闇先案内人』 >大沢在昌/文春文庫 背表紙あらすじ:【上巻】やばい「客」を追手の手が届かない闇の先に逃がす―それが「逃がし屋」葛原の仕事だ。「極秘入国した隣国の最重要人物を捕えて逃がせ」。依頼はよりによって警察庁幹部からだった。断れば殺人犯として追われる。大阪に向かった葛原を待ち受けるのは、暗殺を狙う隣国の工作員たち。壮絶なチェイスが始まった。 【下巻】忽然と消えた「客」の背後にはもう一人の「逃がし屋」の影が…。跡を追って東京に戻った葛原を迎えたのは、工作員、在団特務、ヤクザ、公安が入り乱れる「戦争」だった。誰が裏切り者で、誰が囮なのか?殺し合いに大義はあるのか?権力をめぐる謀略と死闘が渦巻く中で、はたして「客」は逃げ切れるのか―。 500冊を突破して一段落。USCPAの倫理試験の準備もあるので、少し読書は休もうかとも思ったのだが、積読本を一気に消化中で読書の勢いが止まらない。試験が終わった解放感からだろうか。今までにもたまに、滅茶苦茶読書がはかどるとき、というのがあった。妙に集中して読めるのである。そんなときは、読書のスピードもこころなしか速くなるような気がする。そういえばいつの間にか夏もすっかり終わってしまった。読書の秋だなぁ。 さて本書であるが、5日間というタイムリミットが定められており、スピード感の溢れる作品。「逃がし屋」という設定も面白く、舞台も凝っている。それなりに面白いのだが…。筆者が大沢在昌ということで、期待が高すぎる為、評価が辛口になってしまうのかもしれないが、大沢作品にしては今ひとつという感想。 キャラクターが描けていない訳ではないのだが、もう一歩、深みが感じられなかった。主人公・葛原が「逃がし屋」になった過去や、女性SPの咲村が背負っている過去などが「軽い」感じがするのである。そう大層な理由が必要という訳ではないのだが、舞台や設定が凝っているだけに、人物の造詣にも、もう一工夫欲しかったところ。 葛原と同行する刑事の大出が実は内通者だった、といったどんでん返しがあれば、また違う面白さがでたかもしれないが、結末も結構あっさりしていた。スカッとするといえばスカッとするのだが、残念ながらあまり心に残らない作品であった。
苗村屋読書日記 [101]
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