[PR]アナタのウラ県民性をチェック:こっそり一人で?ワイワイ皆で?診断しょ
![]() ○0520 『風化水脈−新宿鮫VIII』 大沢在昌 △0519 『金児昭の七人の社長に叱られた!』 金児昭 △0518 『コンタクト・ゾーン』 篠田節子 △0517 『ミッション』 鳥谷陽一 △0516 『世界標準で考える』 傳田信行 ○0520 『風化水脈−新宿鮫VIII』 >大沢在昌/光文社文庫 背表紙あらすじ:殺人傷害事件で服役していた藤野組組員・真壁が出所した。だが、真壁が殺そうとした男は、藤野組と組む中国人組織のボスになっていた。一方、高級車窃盗団を追う鮫島は、孤独な老人・大江と知り合う。大江に秘密の匂いを嗅いだ鮫島は、潜入した古家で意外な発見をした―。過去に縛られた様々な思いが、街を流れる時の中で交錯する。心に沁みるシリーズ第8弾。 読み始める前は、新宿鮫シリーズも第8弾となり、そろそろ行き詰ってくるのではないかという危惧を抱いていた。というのも、第7弾では舞台すら新宿から離れた九州の地へ移し、今まで登場していたサブキャラも登場せず、とシリーズものに必ず訪れてしまう「マンネリ」を打破しようとする筆者のもがきのようなものが見て取れたからである。 しかしながら、本書は「原点回帰」を果たした素晴らしい作品に仕上がっていた。タイトルもいい。『風化水脈』という意味深な題名の意味を、読了後に溜息とともに知ることになる。大沢在昌の底力を見た感じがした。 文庫本で660ページという大作であるが、今回は人物や風景の描写だけでなく、新宿の歴史が盛り込まれての枚数である。筆者はあとがきで今まで書き続けてきた新宿という街をもっと知りたいと述べているが、その思いを凝縮するかのように、古き良き新宿が愛情を込めて描かれている。その象徴ともいえるのが大江老人である。駐車場の管理人としてストイックな生活を送る大江老人。その陰には苦悩の人生が隠されていた。鮫島の真摯な態度が老人の心を少しずつ溶かしていき、最後には事件解決への大きな一歩となる。 もう一人のキーパーソンが第1作で登場した真壁である。実を言うと、この真壁という存在についてはあまり記憶に無い。木津という銃マニアの印象が強くてあまり覚えていないのである。しかしながら、ヤクザとはいえ、いやヤクザだからこそ筋を通そうとする気構えや、男っぷりは筆者の好みそうな人物像である。最後は大きなトラブルに巻き込まれてしまうのだが、前作の古山の例があるので、死なないでくれと祈るばかりであった。 苦言を呈すならば、偶然の要素が大きいところであろうか。大江と真壁を結ぶ女性については、ちょっと出来過ぎの感あり。特にラストシーンの偶然の再会は、非常に盛り上がるとはいえ、偶然嫌いの私にとってはしらけてしまうものであった。他の部分が素晴らしいので多少点は甘くなってしまうのだが、これらの偶然に必然性を感じられたなら、評価は◎となったであろう。 さらに今回印象的だったのは、警察組織に対する鮫島の(=筆者の)考え方である。従来から「鮫島」というキャラクターを生み出す過程で、警察に対する考えは述べられていたが、今回はその色が更に強まったように感じた。例えば、今後外国人の犯罪が増えることを想定し、警察官にも外国籍の人材を投入すべきではないかという斬新な理論をはじめとし、一級の組織論が展開されているのである。 では、印象的であった組織論・警察論を抜粋して終りとしたい。
△0519 『金児昭の七人の社長に叱られた!』 >金児昭/中経出版 背表紙あらすじ:経理・財務のエキスパートである金児昭氏が、新入社員の頃から、61歳で取締役を自らの意思で辞任する最後の最後まで、7人の“すごい社長”に叱られ続けて教わった大事なこと。判子の押し方といった一見ささいなことから、人間関係、ビジネス・センスなど、実際に“叱られた”本人だから語れる、貴重な教訓が満載。 どこかで読んだ記憶がある内容だと思っていたら、会社で購読しているCFO協会の会報に出ていた記事とほとんど同じものであった。記事の方が、エッセンスが凝縮されており、読み応えがあったように感じた為、余計に文庫本を買って損したかなと思ってしまった。まぁ本というものは、当たり外れがつき物であるし、たとえ一行でも心に触れるものがあれば、財産となるのだから、よしとしよう。
△0518 『コンタクト・ゾーン』 >篠田節子/文春文庫 背表紙あらすじ:【上巻】ノンキャリ公務員の真央子、買い物依存症の祝子、不倫の恋に悩むOLありさの三人組は、バカンス先のバヤン・リゾートで、テオマバル国の内乱に巻き込まれる。ゲリラの手に落ちた島で、虐殺を逃げ延び、彼女たちは生き残れるのか…?圧倒的なスケールで、異文化接触地点での女たちの闘いを描いた感動巨編。【下巻】バカンス先で内乱が発生し、虐殺を逃れた真央子、祝子、ありさがたどりついたのは、山間の小さな村、テンバヤン。そこは異なる宗教、異なる価値観のせめぎあう異文化接触地点だった。村人は真央子たちをかくまいつつ、「解放」と称して略奪、支配を強めるゲリラと対決する。彼女たちは無事、日本へ帰れるのか。 篠田節子は好きな作家である。彼女の作品の特徴は、物語の先が読めないことではなかろうか。多くの小説は、起承転結で完結しており、最初の数十ページから、ラストに向けて物語の舞台というのはさほど大きくは変わらない。もちろん、ミステリーであれば真犯人が誰かとか、歴史小説であれば主人公の晩年はどうなるのかといった部分まで予測できるわけではないのだが、舞台設定はほぼ一貫している。当然といえば当然だが、舞台があまりにも大きく転換しては、物語自体が破綻してしまう。 篠田節子はその筆力で、大きな舞台の転換を描ききってしまう作家と言えるであろう。本書は、南国のリゾート地に旅行に出かけた3人の女性が、内乱に巻き込まれる話であるが、冒頭のリゾート三昧の描写から、ホテルでの殺戮のシーン、無人島と思しき島でのサバイバル、そしてテンバヤンという小さな村。日本人から見た日常から、非日常的な世界に一気に引きずり込まれてしまう。しかし、これはあくまでも私が日本人だからこそ持つ感想。内乱の多発する地方や、発展途上の貧しい村々からすれば、それこそが日常ということを、思い知らされる。 筆者は、浮ついた日本人女性が現地に溶け込んでいく様を描くことにより、飽食の日本を批判している。しかしながら、その裏側には日本人女性に対する愛情も感じるのである。『女たちのジ・ハード』で描いたキャリアウーマン達にも通ずる3人の女性。特に祝子には「自分探し」という点で共感できる部分も多い。私自身、この年になっても自分自身とは、と常に自問してしまう。ふらふらと迷っているように感じてしまうこともあるが、現状に満足し、妥協し、成長を望まなくなってしまうよりはよいのではないかと考えている。 物語としては上下二巻組みということもあり、篠田節子にしては冗長さを感じてしまうものであった。特に後半部分は思い入れたっぷりに小村での戦闘を描いているが、もう少し簡潔でもよかったのかなと思う。ラストシーンも、途中までの悲惨さ、悲壮さを考えるとあまりにも能天気な終わり方のように感じてしまった。語りたい内容をいかに凝縮して簡潔に表現するかというのは、小説であっても、メールやビジネスの文書であっても、難しいものである。
△0517 『ミッション』 >鳥谷陽一/ダイヤモンド社 大手飲料メーカーを退職し、父親が率いる外食企業に転じた青年の物語。オリモフードという外食企業は、さまざまな問題を抱えながらも少しずつ成長している。その成長をさらなるものにしようと、主人公の木村卓が奮起し、卓自信も成長していくというストーリーである。 ビジネス小説であり、私の好きな成長譚でもある為、楽しく読み進めることができた。卓の熱意と、卓と同時に転職してきた元経営コンサルタントの中居の力により、オリモフードは成長の第2ステージといえる段階に入っていく。少々出来過ぎの感はあるが、総じて面白い小説であった。 しかしながら、本書の目的は何であろうかと考えると、少し辛口になってしまう。私が考えるに、本書では中小企業を通じて若い青年が努力し、成長する様を描くことにより、何に向けて努力していいか分からなくなっている現在の若者たちに希望の光を抱かせようとした小説ではなかろうか。そう考えると、主人公にはもう少し「挫折」を経験させ、つらい思いもさせた方が良かったように思うのである。サクセスストーリーも大切だが、現実は甘くないと認識させることも大切だと感じた次第。 私自身は34歳という年齢であり、会社では中堅の立場。最近の新入社員を見ていると、非常に頭はよいのだが、単純作業など面白くない仕事をやりたがらない傾向があるように感じている。確かに資料のコピーなど単純作業は誰もやりたがらない。だとすれば、単価の安い新入社員にそのような仕事が回ってくるのはやむを得ないことである。にもかかわらず、コピー取りをやるために会社に入ったわけではないという妙なプライドを丸出しにして訴えてくる者がいる。 しかしながら、そういった輩に限って、他の部署とぶつかったりして自分の力を発揮できていないことが多いように感じる。反面、コピー取りであっても、いかに効率よく済ませることができるかを工夫したり、コピーする書類の中身に興味をもって積極的にコピー取りを買って出る人の方が、後々伸びているように感じる。要は、妙なプライドを持たず、自分の役割を心得てできる仕事から着実にこなしていく姿勢が大事なのではなかろうか。人の嫌がることであっても快く受けてくれる人のところには、やがて大きな仕事が舞い込むことになるであろう。 少し話がそれてしまったが、本書は若いときの苦労は買ってでもやれという教訓を実践した青年の物語である。父親との微妙な関係や、頼りになる彼女との関係など人間関係もそれなりに書き込まれている。残念なのは中居や卓のやり方に反対していた古参社員たちとの関係修復が、曖昧なまま終わってしまったところであろうか。 では、最後に感銘を受けた部分を抜粋したい。
△0516 『世界標準で考える 僕がインテルでやってきたこと』 >傳田信行/あさ出版 インテルといえば、今や知らない人の方が少ない超優良企業である。他社のパソコンのCMにも流れている「Intel inside」のキャッチフレーズは、流れ始めた当初、なぜ東芝や富士通がインテルのことを宣伝するのかと不思議に感じていたのだが、本書を読めば周到に用意された戦略であったことがよく分かる。このような戦略の一翼を担ったのが本書の著者である、傳田信行氏である。 確かに戦略は素晴らしい。また、たまたまとはいえインテルが伸びる以前に、インテルという会社に目をつけ、その日本法人で働き始めたという着眼点もよかったであろう。しかしながら、自分の入った会社がたまたま大きくなったと言えなくもない。なぜこのような斜に構えた言い方をするかというと、本書の随所に自慢めいたフレーズが散見されるからである。自信を持った人は好きだが、自慢する人は…。実際にお会いすれば非常に謙虚な人なのかもしれないが、そう考えると文体、文章の調子というのは恐ろしいものである。 とはいえ、さすがに参考になるようなことも多いので、いくつか抜粋しておきたい。
苗村屋読書日記 [104]
![]() |