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○0525 『鉄コン筋クリート』 松本大洋
○0524 『リング』 鈴木光司
△0523 『実践的リーダーシップの鍛え方』 堀紘一
△0522 『海は涸いていた』 白川道
△0521 『天窓のある家』 篠田節子


○0525 『鉄コン筋クリート』 >松本大洋/小学館

 我家ではテレビ番組の案内本として隔週で『TVBros』を購入している。最近はほとんどテレビを見なくなったのだが、雑誌としても面白いので継続して購入中。特に面白いのは巻末の爆笑問題の『天下御免の向こう見ず』というコラム。大田光の鋭い視点から見たエッセイが面白い。

 さて、話題がそれてしまったが、12.09の週のBrosは、いつもに増して表紙がお洒落。松本大洋原作の『鉄コン筋クリート』の映画化特集を渋目の赤い表紙で飾っている。特集の中味を見てみてもなかなか面白そう。と、よく考えてみると松本大洋の作品を読んだことが無い…。『鉄コン筋クリート』だけでなく、『ピンポン』『花男』など以前から気になっていたのだが、なんとなく読まないままに。今回、『鉄コン筋クリート all in one』という愛憎版が出ていたので早速購入。

 妻の方は、ちょうど本作が連載中の頃の『ビッグコミックスピリッツ』を愛読していたそうで「世界観に付いていけたら面白い作品だよ」とのコメント。「世界観かぁ」と思いつつ読み始め、一気に読了。宝町という近未来の町を舞台に、二人の少年が闊歩する漫画なのだが、大友克洋の『AKIRA』や、村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』を思い出した。

 ストーリーもさることながら、「絵」が素晴らしい。定規を使わずにフリーハンドで丁寧に書き込まれた絵が、漫画というよりもイラスト群を思わせる。スピード感の溢れるストーリーなのだが、ひとコマひとコマにじっくりと見入ってしまう。そんな作品であった。

 「世界観」と妻が語った理由は後半部分で理解できた。前半は少年とヤクザの抗争を描いたものなのだが、数々の事件を通じて、主人公「クロ」と「シロ」の覚醒に繋がっていく。特に「クロ」の覚醒はちょっと唐突な感じもしたので、SF的な作品になじみの無い人には、理解しづらいかもしれないな、などと思いつつ読了した。

 映画の方も、豪華な声優陣が揃っている。二宮和也、蒼井優、宮藤官九郎などなど。絵の方は若干原作と異なるテイスト。個人的には原作の方が好きだが、映画のテイストも悪くは無い。12.23公開。見に行くかなぁ…。

>2006.12.20.WED


○0524 『リング』 >鈴木光司/角川文庫

 同日の同時刻に苦悶と驚愕の表情を残して死亡した四人の少年少女。雑誌記者の浅川は姪の死に不審を抱き調査を始めた。―そしていま、浅川は一本のビデオテープを手にしている。少年たちは、これを見た一週間後に死亡している。浅川は、震える手でビデオをデッキに送り込む。期待と恐怖に顔を歪めながら。画面に光が入る。静かにビデオが始まった…。恐怖とともに、未知なる世界へと導くホラー小説の金字塔。

 初読は1996.07.16、約10年前である。10年も前に読んだ作品にも関わらず、結構細部まで覚えていたのは、やはり優れた作品だからであろうか。いずれきちんと感想を書きたいと思いつつ、そのままになっていたのだが、部屋の掃除のついでにふと手に取ったのをきっかけに、一気に読了。

 一本のビデオテープ、という部分が既に時代の移り変わりを表わしている。随分前の作品であり、映画かもされたものなので、ネタバレとさせていただくが、今の時代であればDVDや、YouTubeなど、ウイルスの氾濫はもっと激しいものになっていたであろう。浅川が高山に相談するのも、メールで画像データを送付、などと味気の無いものになっていたかもしれない。そう考えると、絶妙のタイミングで出された作品といえよう。まるで貞子の呪いのように、なんてね。

 SFホラーなので非現実的な部分が多いのは仕方がない。また、長編といえどもさほど長くも無い作品の中で、かつ、死へのタイムリミットが存在するという設定では、ある程度のご都合主義もやむを得ないであろう。ラストを知りながらの2回目の読書だったので、高山が登場してから、とんとん拍子にさまざまな謎が解明されていくのが、ちょっと気になったが、まぁ許せる範囲である。

 ラストの、必死の形相で車を走らせる浅川の姿が、人間の本質的な怖さを、一番象徴しているのかもしれない。ビデオテープを媒体に広がるウイルスという発想も素晴らしいが、ラストへ向かうまでの浅川の心理描写も、本書の秀逸な部分である。

>2006.12.16.SAT


△0523 『実践的リーダーシップの鍛え方』 >堀紘一/PHP研究所

 「最後は人間力で決まる!」という文字が表紙に躍っている。ドリームインキュベータ会長の堀紘一氏が考える、リーダーシップ論である。気になった部分を抜粋。

  • 真のリーダーたちは、(1)意志、(2)アイデア、(3)粘り強さの3つを備えている。
  • 自分のメッセージが正確に伝わるように、論理的かつ相手にとって最も理解しやすい言葉を選びながら語りかけていくこと。
  • 企業における社長と管理職との最も根本的な違いは、管理職が赤ペンを手に仕事をするのに対して、社長は青もしくは黒ペンを手に仕事をする点にある。どういうことかというと、管理職の仕事は、部下が書いてきた書類に赤字を入れて修正することだが、社長の仕事は青ペンか黒ペンで白紙に指針を書き、これから会社が進んでいく方向性を示す、という意味である。

  • リーダーの仕事:(1)組織の目的を設定する。(2)組織が置かれた現状を的確に把握、認識する。(3)これから先の環境変化を読み、起こりうる事態に備える。(4)目的を達成するための戦略を策定する。(5)部下たちを励まし、策定した戦略を実行させる。
  • 真のリーダーシップとは、権限をかさに部下を自分勝手に使うことではなく、生き生きと部下が働いてくれる環境をつくることをいう。
  • 哲学者アリストテレスの言葉:等しき者は等しく扱い、等しからざる者は等しからざるように、ただし、その差異に応じて
  • 日本電産・永守社長の言葉:人間の総合的な能力の差なんて、天才は例外とすれば、せいぜい2,3倍程度の違いです。しかし、やる気とか意識の差は100倍の開きがあるんです。

  • DIの採用条件:(1)地頭がよい。(2)学習能力がある。(3)素直かつ謙虚である。(4)好奇心が旺盛である。(5)攻撃力がある。
  • ディベートで大切なことは、ただ自分が話すことだけではない。相手から何を聞くのかのほうがよほど大切なのである。
  • 論理構成力の身に付け方:(1)プラス思考で、(2)仮説構築をし、(3)論理展開させていく作業を、(4)三人寄れば文殊の知恵の要領で複数の人間の知恵を出し合って行なう。
>2006.12.12.TUE


△0522 『海は涸いていた』 >白川道/新潮社

 背表紙あらすじ:都内に高級クラブ等を所有する伊勢商事社長、36歳の伊勢孝昭は暴力団に会社の経営を任されていた。彼には殺人の過去があったが、事件は迷宮入りしていた。しかし、孤児院時代の親友が犯した新たな殺人が、その過去を呼びおこし、警視庁・佐古警部が捜査に当たる。そんな折、伊勢はヤクザ同士の抗争に巻き込まれて―。天才音楽家の妹と友人を同時に守るため、男は最後の賭に出た。

 ここ一月ほど、週末は家の掃除。掃除というよりも模様替えといった方がよいだろうか。2年前に購入した家は、狭小住宅の3階建て。1階は私の書斎で、3階が寝室と物置という変則的な構造。というのも、1階に床暖房が入っており、物置にするのがもったいないと思っていたから。しかしながら、私が1階に常駐、妻が3階に常駐という生活パターンが多くなってきたため、物置を3階から1階へ移動することに。これに伴い蔵書の整理も行なった。

 さて、金銭面からも文庫本派の私だが、利便性から考えても、電車の中でも気軽に読める文庫の方についつい手を出してしまう。その結果、たまに購入する未読や再読候補の単行本が溜まってきている。USCPAの勉強も一段落したので、当面、積読の単行本を片付ける作業に入ろうかと思っている。その1冊目が本書。初読は1999.02.20。

 白川道というと、忘れられないのが名著『流星たちの宴』 本書も『流星たちの宴』に触発されて購入したものである。しかしながら、ラストシーンが悲惨だったという記憶があり、なかなか手を出せないでいた。今回読み返してみて、懸念していたラストも、哀しさには変わりは無いがなんとなく納得のいくものに感じられた。やはり自分自身が経験を重ねることにより、抱く感想というものも変わってくるということであろう。99年の時点で既に結婚していたが、家族という大切なものを守るという感覚が、当時より強くなった為に、変化したものではないかと思う。

 ストーリーの方は、まずまず。『流星たちの宴』と比べてしまうと今ひとつという感が拭えない。『流星たちの宴』が醸し出していた、ヒリヒリとした緊張感というよりも、むしろ長編『天国への階段』につながる、恵まれない出自からの成功体験と、その暗部を描いた作品といえよう。今ひとつと言いつつも、本書がなければ『天国への階段』も生まれなかったのではなかろうか。そういった意味でも、筆者のターニングポイントとなる作品だったのかもしれない。

>2006.12.11.MON


△0521 『天窓のある家』 >篠田節子/新潮文庫

 背表紙あらすじ:こんなはずではなかった。なぜ、こんなふうになってしまったのか。気づかぬうちに日常に巣食う焦燥。人生に疲れた女の心をかき乱す隣人。幸せを願いながら、いつのまにか何を求めていたのかよく分からなくなってしまった―。なぜ、あの人はしあわせそうにしているの?ちいさな衝動がおさえられなくなる…心もからだも不安定な中年世代の欲望と葛藤をあぶりだす、リアルに怖い9編。

 篠田節子の短編は怖い。長編にはSF的なものがあったり、女性賛歌があったりとバラエティに富んでいるのに、短編にはなぜかホラーが多いような気がする。まぁ、面白いから文句は無いのだが…。

 ホラーといえども、怪奇猟奇的な怖さではない。人間の奥底に潜む、深層心理をじわりじわりと描写している様が怖いのである。本書もそんな心理ホラーの秀作である。

 主人公はどれも女性。女性ならではの悩みやコンプレックスを抱え、その結果が様々な結末を産む。篠田節子は長編向きの作家だとは思うが、個人的には短編も結構好きである。重たいテーマを凝縮し、ラスト以降を読者に想像させるような余韻の持たせ方が好きなのである。

 本書には9つの短編が収められているが、特に面白かったのは『手帳』という短編。キャリア・ウーマンが手帳一冊でONとOFFを切り替えていく様がこ気味よく、またその切り替えの上手さが破綻へ繋がっていくという皮肉が面白かった。自分自身も仕事と家庭の切り替えがなかなかうまくいかず、悩むこともある為、余計にリアリズムを感じたのである。

 篠田作品といえば、先日『コンタクト・ゾーン』を読了したばかりだが、amazonで検索してみると、未読のものも多い。久しぶりに作者別の固め読みをしてみようかな。

>2006.12.08.FRI

苗村屋読書日記 [105]

     



































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