△0545 『美しい国へ』 安倍晋三
△0544 『花屋のMBA』 津崎盛久
△0543 『蚊トンボ白鬚の冒険』 藤原伊織
△0542 『ソニーの壁』 城島明彦
△0541 『新版・ソニー燃ゆ』 城島明彦


△0545 『美しい国へ』 >安倍晋三/文春新書

 新首相、安部晋三氏の著書である。政治に対する興味が薄かったこともあり、一国の宰相の本を1冊くらい読んでおかないとと思い、手に取ったもの。  最近は当初に比べて支持率が落ちてきているようだが、果たしてこの「支持率」とは何だろうか。政策というのは国全体の進行方向を決めるものであり、多種多様な分野にまたがっている。当然の如く全体のバランスが必要であり、たとえば農業に注力すれば建設の分野が疎かになるかもしれないし、その逆もあり得るのである。しかし、支持率の調査対象者には農家の方もいれば、土建業の方もいらっしゃるであろう。果たして彼らが新首相の全体的な政策を見て支持する・しないを判断しているかというと、ほとんど否であろう。

 かく言う私も、勉強不足であることが露呈してしまうが、本書を読むまで安部首相が力を入れている政策や得意とする政策が何かを明確には知らなかった。全体でどのような政策を実行しているかを知らないので、支持するか否かの判断ができないのだが、あえて言うならば「好感」を持っていると言えよう。

 さて、本書についてだが、前述した政治家としての全体感が示されていなかったのが残念であった。「わたしの原点」という第1章で生い立ちを語り、少しだけ政治に対する「姿勢」をして示しているのみである。ちなみに、目に留まったのは「確たる信念を持ち、批判を覚悟で臨む」という言葉。やさしいイメージから強固な意志を感じさせないが、内に秘めた熱い思いが伝わってきた。

 拉致問題、靖国問題、少子化問題、教育問題と各種の問題に紳士に取り組む姿と、本質を突く視点は素晴らしい。靖国問題にしても、いわゆるA級戦犯についてなど、国際法を交えて分かりやすく説明している。しかしながら、やはり政治家としての考え方というか、骨格となる部分が語られないまま、いきなり「各論」に入ってしまった印象が拭えない。また、経済分野に関する言及が少ないのも残念であった。

 首相といえどもスーパーマンではないので、全てを一人で網羅するのは不可能である。であるならば、いかに優秀な人材を登用していくかがキーとなるであろう。その点からも、首相が若いだけに、もっと若手の登用があってもよかったのではと、考えてしまうのである。

 もうひとつ印象的だった言葉を抜粋して終わりたい。「心の底から外国人とコミュニケーションを取ろうとしたら、自らのアイデンティティをまず確認しておかなければならない。大切にしている文化、誇りに思うこと、何に帰属して、何者なのか。外国語がうまいだけでは深く打ち解けたり、心を開いてはくれない」

>2007.02.05.TUE


△0544 『花屋のMBA−最強の経営理論で人生を変える』 >津崎盛久/グラフ社

 MBAの知識を個人の人生に置き換えて語っている点は非常に面白い。MBAとは何ぞやという人にとっては格好の入門書になるであろう。一方でMBAに対して、ある程度知識を持っている人にとっては物足りない内容ではなかろうか。筆者の意図は、MBAを知らない人に、こんなに素敵な学問の世界があるということを知らしめ、もっと知識を得たいのであれば、MBAの取得を目指しなさいということであろうから、物足りないと言われても困るのだろうが。

 さて、USCPAの資格を取得した現在、次に何を勉強しようかと模索している状態である。取り敢えず、頭の中にあるものを羅列してみよう。英語力強化がまずは必須と考えている。具体的には、マン・ツー・マンでの英会話力強化。日本で起こった事件などを外国人の教師に説明し(explain)、意見を交わす(divate、discassion)ということをやってみたい。またCNNのポッドキャストを活用し、早口の時事英語にも慣れていきたい。更には苦手な文法を、一度しっかり学ばなければと考えている。会計に関してはFAREと呼ばれる財務会計について、随分前に試験に受かってしまったので復習が必要。また最近は内部統制がうるさく言われているので、CIA(公認内部監査人)という資格にも注目している。こちらは日本で受験が可能な世界標準の資格らしい。さらには企業結合会計と絡んで、M&Aに関する知識を頭に入れておきたい。そしてMBA的知識の習得。こちらについては、もう少し詳しく述べておこう。

 私が考えるMBA取得のメリットは4つ。(1)マーケティングやファイナンスといった専門知識の習得、(2)ケース・メソッドによる経営の疑似体験、(3)共に学んだ優秀な人材との人脈形成、(4)CerticicateなどによるMBAホルダーであることの客観的証明の獲得。このうち(1)に関しては、グロービスが出版しているテキストなどである程度の独学が可能であろう。『30歳からの成長戦略』で山本真司氏が語っていたことだが、最低限、常識としてこれらの知識は身につけておくべきとのこと。山本氏は必ずしもタイトル・ホルダーである必要はないとの意見であったと記憶している。

 (2)と(3)については、学校で身につけられれば、それに越したことはないが、学校でなければ得られないものではない。(2)については市販のケース・メソッドや経営者の自伝などを読み、自分なりの考察を加えるということが出来るであろうし、それを仲間内で議論しあってもよい。(3)の人脈については、当然、通常のビジネスでも構築することが出来る。そういえば、先日USCPAの先生と飲む機会があったのだが、アメリカ人は普遍的な知識を構築するのが苦手だから、ケース・メソッドに落とし込むのだ。日本人は普遍化が得意だから、テキストを読めば十分とおっしゃっていた。自らがビジネス・パーソンとしても成功していらっしゃる方なので、だからこそ言える言葉なのだろうが、なかなか興味深いものだった。

 (4)は当然のことだが、初対面の人に自己紹介をする際には有効であろう。特に転職の際など、資格を持たないよりは持っていた方が有利。そもそも資格というのは、その分野に関する一定の知識があり、それを獲得するために一定の努力をしたという証明にすぎない。資格を生かせるかどうかはその人の実力にかかっているのであり、資格があっても使えない人もいれば、資格がなくとも優秀な人もいるのである。結局は普段一緒に仕事していない初対面の人に、ある程度の自分の価値を測ってもらうために提示するツールのような気がする。であれば、転職をする際には強力なツールになるが、ひとつの会社にとどまるのであれば、タイトルそのものは必須ではないのかもしれない。(知識としては必要)

 また、MBAを取得するに当たって、2年間留学するか、日本で働きながら取得するかという問題もある。個人的にはどうせ取るならば一流校へ留学すべきと考えている。前述の(1)(2)(3)について、それぞれ密度の濃いものを得ようとすれば、日本で働きながら学ぶよりも、2年間どっぷりと学問の世界に身をおくほうがよいであろう。そうなると時間とカネの問題にぶつかってしまうのだが。

 タイトルを取得する前から言い訳を並べ立てているようであり、取得もしておらずMBAのことを語る資格がないのは重々承知しているが、やはり今から留学というのは私にとっては非現実的。一方で、働きながらというのは中途半端な感じがしてしまう。もやもやとした気分が抜けず、だったら思い切って踏み出してみればとも思うのだが、このあたりが私の限界なのだろうか。結論としては転職を考えるならMBA取得、そうでないなら独学で知識を身につける、というのが現実的な選択だと考える。まずは、テキストを読むことから始めてみよう。…本の感想から大きく脱線してしまったが、このようなことを改めて考えるきっかけを作ってくれた筆者に感謝。

>2007.02.03.SAT


△0543 『蚊トンボ白鬚の冒険』 >藤原伊織/講談社文庫

 背表紙あらすじ:【上巻】羽音と不思議な声がすべての始まりだった…。陸上競技への夢を断念し、水道職人となった若者・達夫の頭の中に、ある日奇妙な生物が侵入してくる。その名も蚊トンボ・シラヒゲ。超人的能力を得た達夫は、アパートの隣人・黒木を理不尽な暴力から救う。しかし、それは恐るべき闇社会との対決を意味していた。 【下巻】黒木は暴力団に巨額の損失を与え、追われる身だった。その行方を知るべく、彼らは卑劣な手段で達夫を脅迫した。そこに凶悪獰猛な赤目の男・カイバラが介入、達夫の恋人・真紀を誘拐する。そのとき皮肉にもシラヒゲの能力は尽きようとしていた。カイバラの挑発に単身敵地に乗り込む達夫。はたして真紀を無事救出できるのか。

 とにかく、単純にというか、純粋にというか、面白かった。設定自体が突拍子もないせいか、漫画的に楽しめた本。たまにはこういった肩の凝らない読書もいいものである。

 主人公・達夫は、頭の中に入り込んだ蚊トンボのおかげで、超人的な能力を持つとともに、ヤクザとの抗争に巻き込まれてしまうというストーリー。途中で、恋愛あり、ピンチありと息をつかせない展開。上下巻の2冊組だが、長さを感じさせなかったのは流石、藤原伊織である。飽きさせないのは、サブ・キャラクターについてもしっかりと書き込まれていたからだろうか。

 ここまで褒めると素晴らしい作品のように思えるかもしれないが、評価の方は残念ながら△。というのも、「漫画的」と評したことからも分かるように、さらっと読めてしまい、後に残るものが少なかった為。これまでの藤原作品には、何かしら私の心に残るものがあったように思う。あっけない終わり方のラストシーンもそう感じた一因かも知れない。宿敵カイバラとの対決の後、エピローグでもあれば、また印象は変わったのであろうが、あまりにも突然、終わってしまったように感じたのである。筆者のことであるから、計算ずくでの終わり方なのだろうが、個人的には尻切れトンボのように感じてしまった。

【上巻】 【下巻】 >2007.02.02.FRI


△0542 『ソニーの壁−この非常識な仕事術』 >城島明彦/小学館文庫

 背表紙あらすじ:良くも悪くもソニーは注目を集める企業だ。そのモノづくりは常に世界の最先端を走ってきた。現在も日本代表として、高いブランドイメージを保つ。その「常識破り」の企業戦略の裏には、日々社内で戦わされている熱い議論と、他社から見れば「非常識」とも言える仕事術があった。しかし、二〇〇三年春の「ソニーショック」、つまり株価急落と大規模リストラで、神話にもかげりが見える。もはやソニー流仕事術は限界なのか。ソニーOBの著者が同社の栄光と蹉跌を徹底分析した、本邦初の「ソニー実用書」。あなたは「この非常識な仕事術」を、毒にするか薬にするか―。

 ソニー再読の3冊目。今回、この3冊を再読する予定だったのだが、よく見たら全て同じ筆者であった。初読の時期は不明。

  • 17条のSOBA(Sony Old Boys and girls Association)スピリッツ:(1)自分のやりたいことをやる。(2)規模の大なるを追わず。(3)不屈でしたたか。(4)新しもの好きである。(5)ベンチャー・スピリットがある。(6)「自由闊達」という言葉が大好きだ。(7)人と同じことはしたくない。(8)自分ではまともだと思っているが、他人からは変わっているといわれる。(9)好奇心がきわめて強い。(10)発想がグローバルで、行動力がある。(11)どちらかというと、ビジネスではドライだ。(12)先例がないから、やるのだ。(13)いくつになっても夢を追い続けたい。(14)人との出会いを大切にする。(15)ソニーが好きだ。(16)井深大と盛田昭夫を一番尊敬している。(17)ソニーで働いたから今日の自分がある。

  • 盛田さんは「早速動の人」 つまりは早く速く行動する人であった。曰く「競争とは時間の早さだ。われわれは、人より早くいいものを出せば高くても売れたという例を、過去にいくつも持っている。今の時期は、何としても『知恵』を出して『早く動く』ことが大事」
  • 物事は大所高所から見よ。ただし、心に余裕がないと、そうはできない。
  • 高篠静雄副社長:パスポートサイズのビデオカメラ開発中に、部下が「これ以上小さくする余地はありません」と言ったところ、バケツに水を汲んできて製品を水につけてしまった。「泡が出るということは、まだ小さくできるはずだ」と部下たちを奮い立たせた。

  • 城島流・ソニー社長に求められる20の条件:リーダーシップ(指導力・行動力)、(グループ企業の)統率力、(グローバルな)戦略立案力、人心掌握術、カリスマ性、自己顕示欲(パフォーマンス力)、国際性(語学力)、求心力(情報収集力)、交渉力(折衝力)、先見性、決断力、情報発信力、陽性(ネアカ人間)、ソフト(コンテンツ)に強い、技術理解力、宣伝・広報がわかる(芸術的センスがある)、感性の鋭さ、(動物的)直観力、5〜6年は社長を務められる若さと体力(行動力)、好奇心の強さ。
  • 盛田昭夫と織田信長の共通点:尾張の出身、好奇心が旺盛、成果主義、先見の明、非情な一面あり、進取の気質、おしゃれ、合理主義者、自由競争を尊ぶ、舶来品大好き、柔軟で奇抜な発想、知略家。
プロフェッサー盛田のビジネスマンの心得20ヶ条
  1. 時間はつくるもの。使いようで、一日が25時間にも26時間にもなる。
  2. 中途半端はいけない。仕事でもスポーツでもとことんやり抜け。
  3. つねに好奇心をもって挑戦せよ。
  4. 仕事では厳しく目配りすべきだが、相手への気配りを忘れず、言葉と態度でそれを示せ。
  5. 人と会う前にはその人に関する情報を収集し、その人の好きな話題から入れ。
  6. 恐れず、媚びず。相手が誰であっても「イエス」「ノー」をはっきりいおう。
  7. 会話や講演では、必ずエスプリの効いたジョークを交えること。
  8. 時間を共有した人たちが「勇気」と「力」をもらったといわれるようにせよ。
  9. あらゆる場所にメモ帳と鉛筆を置き、アイデアが浮かんだら、即、メモせよ。
  10. 同席する者をわくわくさせるような「夢」を語れ。
  11. 電話魔になれ。疑問に思ったことや知りたいと思ったことは、すぐに確かめよ。
  12. 一流のもの(音楽・映画・絵画・ファッションなど)に接して、感性を磨き、発想力を柔軟にせよ。
  13. 自分よりはるかに若い者から何かを得ようと努めよ。
  14. おしゃれを心がけ、「歩く広告塔」になる努力をせよ。
  15. 日頃から「集中力」を養え。
  16. いつも前向きであれ。
  17. 輝く未来は自分でつくれ。
  18. 郷に入っては郷に従え。
  19. 情報を的確に把握し、先見力をつける訓練をせよ。
  20. 本質を見抜く眼力を養え。
>2007.02.01.THU


△0541 『新版・ソニー燃ゆ』 >城島明彦/集英社文庫

 背表紙あらすじ:不況に強いソニーと言われる。常識破りのソニーとも言われる。同社の創造力、技術力が他社に比して群を抜いているのはなぜか。自由奔放な発想を大切にする基盤はどこにあるのか。「困難にこそ挑戦し続ける」というソニーの実態が、いま本書で解明される。これまで、誰も語り尽くせなかったソニーの謎に鋭く迫る、型破りの一冊。

 前回に続いてソニー関連の書籍。初読は2001.10.03。

  • 大賀から見たソニー後継者の条件。リーダーシップ、言語明瞭であること、語学に強く国際性があること、カレントな技術に対する嗅覚を持っていること。出井は上記を満たしていた。言語明瞭というのは経営先着の明確さ、指示内容の明確さ。出井のスピーチには必ず印象的なキーワードが散りばめられていて分かりやすい。
  • 盛田は電話魔だった。どんな情報も何人もの人を経ていくうちに変わってしまったり、忘れられたりする。大事な情報や用件は気づいたその場で、当事者に伝えることが大事。

  • シャープ創業者・早川徳次の言葉:景気の波に乗ることは誰でも可能。そのときには既に危険をはらんでいることを忘れてはならない。事業経営は不況のときに伸びよといわれている。それは不景気のときに屈することなく、次に来る好機に伸びていく準備をすること。
  • 一番大変なところへ回されても、いつもニコニコしてやり遂げる。
  • ソニーの経営者に共通するのは2つのカン。1つは勘所の「勘」、もう1つは感性の「感」
  • 盛田曰く、市場想像=市場がなければ作ればよい。

  • 大曽根語録10ヶ条:(1)何でも半分にできると信じろ。(2)サイズなどは中味に関係なく決めろ。(3)目標は単純明快にしろ。(4)検討しないでOKの約束をしろ。(5)困難は可能であり、不可能は不可能と割り切れ。(6)説明する前に物をデッチあげろ。(7)ブレストは目標達成するまで帰るな。(8)新しいアイデア、面白いアイデアは上司に内緒でつくれ。(9)頼み事は忙しい奴に頼め。(10)本業を疎かにするな。
  • 困難は可能。不可能は不可能=難しいと思えるようなことはできる。ただし、できないものもある。そういうものに対してはできないということを早く見極め、明快に割り切ることが大切。

  • 出井は、先のビジョンを目先でなく、中長期的な方向はどうあるべきか、戦略的な把握の仕方はどうすべきか、ソニーがどの方向に向かうべきか、世の中がどう変わってどう向かうか、という見方を常にしている。
  • 孫正義と出井の対談:知的集約型産業に必要な経営者の資質とは、理念が在り、ビジョン・戦略があり、グローバルな視点を認識していること。(孫) さらにはフレキシブルであること、好奇心に溢れていること。(出井)
>2007.01.30.TUE

苗村屋読書日記 [109]