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◎0550 『SLAM DUNK−スラムダンク』 井上雄彦
○0549 『外資系トップの仕事力』 ISSコンサルティング
△0548 『制服捜査』 佐々木譲
×0547 『外資系コンサルの真実』 北村慶
△0546 『松坂世代』 矢崎良一


◎0550 『SLAM DUNK−スラムダンク』 >井上雄彦/集英社

 区切りのよい番号の時には、好きな作品の感想を書くのが自分の中の決まりごとになってきている。500冊目は『永遠の仔』だった。好きな作品ということで、やはり既読の中から選んでしまうのだが、再読するに値し、更に好きな作品と言うと数が限られてくる。パッと頭に浮かぶのは『ホワイトアウト』『夏の災厄』『神々の山嶺』『復活の日』など。そんな中、ふと思い出し、再読したのが『スラムダンク』である。

 読書日記としながら、コミックスの書評を書くかどうかは非常に迷ったのだが、浦沢直樹の『Monster』を読んだ時点でその迷いはふっきったつもりである。そういえば『Monster』も350冊目というキリ番であった。

 さて、感想を述べる前に、印象的だった3つのシーンを紹介したい。まずはとあるきっかけで不良仲間と付き合うようになってしまった三井が安西先生に「安西先生、バスケがしたいです」と涙を流すシーン。今回の再読が5〜6回目となるが、何度読んでも泣けてしまう。次に海南戦での主人公・桜木花道の活躍。キャプテンの赤木が足首を捻挫してしまうのだが、赤木の海南戦にかける思いを知る桜木の心意気が頼もしい。また、ここでやるかというフェイクも桜木の成長を思わせて忘れられないシーンとなっている。最後はやはり山王戦。特に宿敵?流川との最後のコンビネーションは最高。お互いにパスを出し合うという展開が涙を誘った。

 私が本書を好きな理由は恐らく、全編を通じて主人公・桜木の「成長」が描かれているから。4ヶ月という短期間で成長する様に、連載当時は高校生だった私が感激したのは紛れもない事実である。もしかしたら、30歳を超えた今なお、成長したいと願い続けているのは、感受性の強いこの頃に、本書と出会ったおかげかもしれない。

 それにしても、なぜ中途半端な形で終わってしまったのだろうか。これから対戦するであろう、他県の強豪たちを紹介しておきながら、突然終わってしまった。第一部完とのことだが、あれから10年以上。もう次作は期待できないであろう。

 まず疑ってしまうのは、少年ジャンプの編集との確執。人気投票で下位のものは有無を言わさず打ち切りにする世界に嫌気がさしたのではと勘繰ってしまう。人気の面からして、『スラムダンク』が打ち切りとは考え難いが、ストイックな筆者だからこそ、こういった世界に魅力を感じなくなったのかもしれない。もうひとつ思い当たるのは、桜木をこれ以上、急成長させることに限界を感じたのではないかというもの。最高峰といわれる山王工業を倒し、筆者自身が燃え尽きてしまったのではなかろうか。

 さて、ここでスポーツについての所感を。私はスポーツとビジネスのメンタリティについてよく考えるのだが、試合に出たい、いいプレイをしたいという欲求は、ビジネスでいい仕事がしたいという気持ちにつながると思う。

 私自身、大学時代ボート競技に熱中したのだが、これが非常にいい経験になったと感じている。その理由をいくつか考えてみたい。(1)まず、スタープレーヤーが存在しないということ。ボートの花形といわれるのはエイトという8人乗り(コックスを入れると9人)だが、誰か一人が突出した力を持つよりも、選手全員が均等に力を発揮しないと船は進まない。それどころか、一人だけの力が異様に強いと、左右の力が対象とならず船は曲がってしまう。全員が同じ動きをすることを求められる究極のチームワークのスポーツであるという点で、チームプレイの大切さを学んだ。

 (2)次に、一人でも選手が休んでしまうと練習すら成立しないという点。他のチームがどうかは知らないが、われわれの大学では、ひとつの試合に向けてのチームは固定的であったため、一人が怪我や病気(たまには遅刻)などで欠けてしまうと、代わりに乗るものがいない限り、乗艇すらできなくなってしまう。時間厳守、安易に休まないという当然のことを、身をもって知ることができた。

 (3)これは我々の大学固有のものかもしれないが、コーチがいなかった為、自分たちで考える時間を非常に多く持てた点。乗艇前に練習の目的を話し合い、練習後、時には1時間、2時間と反省会を開く。技術の話、精神面の話など、互いの意見をぶつけ合う。今現在、会社で多少なりとも自分の意見を言えるのは、このとき培われたものによるところが大きいと思う。

 (4)ひとつの大学(またはチーム)の中に、複数のクルーがあるという点。対校とよばれるいわゆる一軍だけでなく、セカンド(二軍)、サード(三軍)といったクルーも試合に参戦することができる。他のスポーツが一軍のみしか試合に出られないことを考えると、非常にチャンスが多いスポーツ。機会平等の大切さを学んだ気がする。

 (5)これは私自身が主将という立場だったから言えることだが、部員一人ひとりのモティベーションをどう保つかという点で、非常に悩んだことはよい経験であった。以前にも書いたことがあるが、アマチュア・スポーツには対価としてのカネがついてこない。あるのは勝利、達成感、やりがいなど無形のものばかりである。この無形の価値ですら、一人ひとり感じ方が異なるのだが、誰に何を言えばモティベーションがアップするかを考え抜いたことは、しんどいが、よい経験であった。

 スラムダンクから、随分と話が逸れてしまったが、ひとつのことを徹底的にやるという経験は価値のあるものだと改めて感じた次第。今はその対象が、仕事に向かっているが、一度しかない人生。後悔のないよう、徹底的な努力を継続していきたいものである。

>2007.02.21.WED


○0549 『外資系トップの仕事力−経営プロフェッショナルはいかに自分を磨いたか』 >ISSコンサルティング/ダイヤモンド社

 こういった、経営者へのインタビュー集は好きなタイプの本である。複数の経営者の、さまざまな意見や考えに触れることができるから。また、1冊全てが1人の経営者の話だと、紙面を稼ぐためとは言わないまでも、どうしても間延びした部分が出てしまう。このようなタイプでは、一人ひとりの経営者が、自分の一番言いたいことを語っているので、エッセンスが詰まった良書になりやすいような気がするのである。

 何社かの外資系企業の日本法人トップが登場するが、各社長に共通しているのは、外国の大学で学んでいるということ。特にハーバード大学のMBAホルダーが多く見られたのが印象的であった。ここだけ見ると、MBAは役に立つといえるのだろうか。

■魚谷雅彦 日本コカ・コーラ(株)代表取締役会長

  • 自分の将来に不安を感じた際の先輩の言葉:前向きな気持ちがある人間ほど悩むもの。問題意識を持つことはいいことだ。しかしながら、若いうちはとにかく1年間ガムシャラに仕事をしてみたらどうか。
■柴田励司 マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング(株)代表取締役社長
  • 大使館に出向した際、官庁型の縦割り組織の弊害を感じた。みんなはいいことを言うのだが、組織になるとおかしくなる。日本はヤバイと思い、経済やマネジメントを勉強しないとと思うようになった。今まで経営は金勘定だと思っていたのだが、全く違う。組織としてのビジョンを追求するものであり、その結果としてお金がついてくる。それが経営。
  • 小学校3年生の時の担任の先生の言葉:会議では必ず発言しなさい。できれば一番最初に。しないのなら、その場にいる意味はない。→質問しようと思えば人の話も注意して聞かないといけない。しかし、2番目、3番目に発言した人の顔は忘れても、最初に発言した人の顔はみんな覚えているもの。
  • リーダーの資質があるかないかは、リーダーのポジションにいることをカンフォタブルだと思えるかどうか。常にまわりに気を配り、周囲の人が喜ぶようなことをする。
  • 若いうちから自分の判断や好き嫌いで仕事を値踏みしていると、自分が伸びる目を摘み取ってしまうことになりかねない。将来、組織を率いるような人間になりたいのなら、自分の器を広げるためにも知識と経験の引き出しを沢山用意しておく必要がある。
■新宅正明 日本オラクル(株)代表取締役社長最高経営責任者
  • 30歳の時、後に日本オラクルの初代社長となる佐野力氏の薫陶を受ける。その時教わったのが、リーダーは部下各人のパーソナル・プロフィールを徹底して熟読せよ、というもの。正確、家庭環境、長所、短所、モチベーションの源泉など、全てを把握せよ。そうでなければマネジメントなどできない。
  • リスクといえば、家族を食わせていけるかどうか。これ以外のリスクって、ほかにないでしょう。
  • 取締役は重責だが、決めるのは社長。取締役は意見を言う、いろいろなアイデアも出す。でも最後は社長が決める。
  • 決めるべきことは変わっていく。社長に求められるのは踏襲ではない。仕組みとして過去を踏襲したら失敗する。むしろ過去の仕組みをどれだけ切れるかが大事。新しい課題に対して、きちっとプリンシプルを持って、質のいい判断をする。判断が間違ったらすぐ戻る。それが大事。
  • 若い人に言っておきたいのは、次に何が起こるかを想像して仕事をすること。これができる部下は信頼できる。今はこれをやっている。次はこういうことが起こるから、こんな準備をしている。僕が知りたいのは次がどうなるか。間違っていてもいい、それを考えていてくれているだけで安心。
  • 真剣勝負のコミュニケーションが重要。ケンカをしない仲良し集団はダメ。本当に相手のことを思うなら、仲間だと思うなら、厳しくした方がいいときだってある。仲良し集団の中で、低い方の基準に合わせていたら、会社にとっても個人にとっても成長が無い。
■関口康 ヤンセンファーマ(株)代表取締役社長
  • 言いたいことを箇条書きにすること。大項目、中項目、小項目と分けて行なう。意外とこれができない。訓練が必要。しかし、訓練ができてくると、頭の中に話そうと思うことが箇条書き的な構造でできてくる。この話は幹の話、枝の話、葉っぱの話だと整理できて、どういう順序で話したら、結論が一番よく伝わるかが分かってくる。
  • 大事なことは、まずモティベーション。報酬、インセンティブ、ポスト、良くやったら褒めるなど、徹底してやる。さらに大事なのはコミュニケーション。必ず1年に1回は全営業現場を回って懇親会をやる。社員一人ひとりの声が経営に反映されるということを皆に認識して欲しいから。
■平野正雄 マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパン ディレクター
  • 当事者意識を持たなければ、絶対にいい仕事はできない。自分はこれをやるというコミットをする。当事者意識がないと迫力が出ない。コミットがないとエクスキューズを探し始める。プロは「そこそこ」の仕事ではダメ。一流の仕事をする為には、ある程度自分を追い込まないと。
  • 大切なのは考えることと実行のバランス。密度の高い時間を過ごすためには、これらのバランスが必要となる。
■藤井清孝 ルイ・ヴィトン・ジャパン・カンパニー プレジデント&CEO
  • ハーバードに入学して、凄い奴がいて当たり前という環境に慣れることができた。できることに加えて得意分野まである。そんな連中の中に身を置くと、全面的に競争してもあまり意味がないことに気付く。競うだけでなく、お互い学びあう。健全な競争心は持ったまま、変な競争心は持たない。
  • 社長になる人には二種類ある。自分の持つ技術やアイデアを世に問いたいという人と、とにかく社長になりたいという人。後者は生き残れない。前者のような社長の、強い情熱から迫力が生まれる。熱意があるから会社は続く。情熱は成功の第一条件。
  • 欧米と日本では優秀さの質が違う。例えば判断力。日本人は慎重に、全部考えてから結論を出す。しかし、向こうの連中は、条件をカットしてしまう。そもそも一番大事な条件や情報を選択する力がある。だから結論が出るし、しかも速い。ドライさ、選択と集中、間違いを恐れないという点は、学ばなければならないと思った。
■藤森義明 日本ゼネラル・エレクトリック(株)代表取締役会長 GEコンシューマー・ファイナンス・アジアCEO
  • ウェルチへのプレゼンで学んだことは、深いところまで知っていれば、ウェルチにだって負けないということ。普通はポジションが上に行けば行くほど、プロジェクトの中味について理解が浅くなる。しかし、GEの人は、上に行けば行くほど深いところを知っている。現場を全て把握するのは非常に大変だけど、できないことはない。できれば判断は速いし、全部知ることもできる。以後ずっと、それを心がけた。
  • 日本的な考え方ではチームは与えられるもの。しかしアメリカの感覚ではチームは作るもの。リーダーがメンバーを選び、チームを作る。リーダーはチーム作りから始める。皆を鼓舞し、決断し、方向性を決めるのがリーダーの役目。皆はそれを待っているので、取捨選択してどんどん結論を出し、自分で責任を持つと伝えていく必要がある。
  • 自分の欠点を認識すること。自分の欠点をどれだけ素直に受け入れられるか、どれだけ努力できるかで変わる。
■安田雄典 BNPパリバ 在日代表
  • 内村鑑三の『代表的日本人』に出てくる、西郷隆盛、上杉鷹山、中江藤樹など、昔の立派な日本人は本当に謙虚だった。日本人が尊敬されるのは、実は日本人らしいとき。外国語を流暢に話すのは二の次、三の次。大事なことは言いたいことがあるかどうか。それが相手に伝わればよい。
  • 人生の終わりというのは挫折と失敗で迎えるべきだ。なぜなら成功は束縛であり、失敗は解放でもあるから。
■山中信義 日本エマソン(株)代表取締役社長
  • 個人にもSWOT分析は適用できる。自分が過去に経験してきた仕事上のプロフェッショナルな経験をベースに、自分の強み、弱み、活躍できそうな職業、避けた方がいい職業を認識する。これとは別に、経験や過去の仕事・経歴とは全く別に、自分という人間が一人裸で立ったとき、自分が本当に好きなものは何か、自分が直感的に得意だと思っているものは何か。この2つを組み合わせれば、目指すもべきものは何かが、だいたい分かってくる。
  • 人間の能力の差なんて、実は大したことはない。何が重要かといえば、目的を定め、徹底的に情熱を傾け、最善の努力をすることができるかどうか。全力を出し切れるかどうか。だからこそ自分の力を100%以上発揮することが求められる環境が大切になる。
  • 新しい組織や会社に入ると、だいたい最初の3ヶ月が勝負。最初の1ヶ月は、これまでの環境との差をインパクトとして受け止めて馴染む。次の2ヶ月目は何をやらないといけないのかを把握する。そして3ヶ月目で具体的に何をしようかと動き始める。この3ヶ月間がおそらく最も新鮮なアイデアが沢山出る時期。
  • 日本人は答えがひとつしかないと思っている。ひとつしかないと思うから、間違えてはいけないと、発言が慎重になる。これは日本の教育の一番悪いところ。答えは無数にあるのだから、思ったことはどんどん発言すればいい。答えをいくつも認めるところが、アメリカの強さだと思う。
■若脇英治 BPジャパン(株)代表取締役社長
  • 結果の出し方は「6・12・6の法則」職場を移ると、最初の6ヶ月はまず覚える。次の12ヶ月でそれをマスターして、変える必要があるところは変える。さして最後の6ヶ月でドーンと結果をだす。これでちょうど2年。2年で新しい仕事に移れる。最初から変えると言っても、なかなか変えられない。
  • 若い人に伝えておきたいのは、とにかく勉強すること。何にでも興味を持って。くだらない仕事と思っても、必死にそれをやると、何か動きが出てくる。迷ったらやれ。リスクを恐れていたらスキルは作れない。失敗したらまずいのではないか、そんなことを思ったら面白いキャリアは作れない。
>2007.02.20.TUE


△0548 『制服捜査』 >佐々木譲/新潮社

 読み始めた瞬間に既視感を覚えた。どこかで読んだことがあるような気がする。少し読み進めて疑問が氷解。新潮社の『決断 警察小説競作』で出てきた短編が、本書の一作目を飾っていたのである。当時も一番印象的と書いていたが、北海道という地のある寒村を題材にしており、興味深い作品集であった。

 短編集といいながらも、私の好きな連作で、主人公は一貫して川久保篤巡査部長。一作目の『逸脱』に始まり、『遺恨』『割れガラス』『感知器』『仮装祭』と5つの作品を収めている。そのひとつひとつが地方独特の事件を扱っており、都会的で派手なミステリーが多い中、渋い味わいを醸し出している。佐々木氏ご自身が北海道出身であり、現在も北海道で執筆中とのこと。作家というのは必ずしも都会に居を構える必要が無いという好例であろう。

 本書で一番印象的だったのは『割れガラス』 前科を持つ大工と引きこもりがちな少年を描いた秀作。外見や経歴で人を見がちな田舎の人々、そんな中で黙々とログハウスを組み立てる大工の大城、家庭の事情で引きこもってしまった少年を見事に描き分けている。また、主人公・川久保の情に厚い一面も垣間見えて心温まる作品であった。それだけに、ラストは物悲しさが漂うと共に、現実というものの厳しさ、難しさを直視させられた気分であった。

 本書のもう一つの特徴は、刑事ではなくタイトルの通り、制服警官つまり駐在の立場からみた小説ということであろう。実際の捜査を担当するのではなく、聞き込みによって牽制をかけたり、防犯協会や消防団との付き合いから協力を求めたりと、非常に地道な活動が多い。そもそも全国の警察官の大半がいわゆる「駐在さん」であることを鑑みると、このような小説が登場するのは遅すぎた気がしないでもない。

 駐在の最大の仕事は犯罪者を作らないこと、というのは矛盾を孕んだ名言である。一方で、町に溶け込む前に人事異動で駐在員をころころと変えようとしている北海道警察に対する、大きな怒りと批判をも感じる。渋い語り口の中に、大きな意思を持った名作といえよう。

>2007.02.18.SUN


×0547 『外資系コンサルの真実−マッキンゼーとボスコン』 >北村慶/東洋経済新報社

 多くのものを詰め込もうとし過ぎて、逆に内容が薄くなってしまったように感じた本。まずは、コンサルとは何ぞやという紹介、次にコンサルで使用されているロジカルシンキングやフレームワークといったMBA的な知識の紹介、そしてコンサルの限界という構成である。コンサルそのものの解説については、ある程度ビジネス経験があったり、ビジネス書を読んでいる人にとっては既に知っている知識であり、さほど新鮮なものではなかった。また、MBA的知識についても、非常に基本的な部分だけをさらっと書いており、これであれば他のMBA入門書を読むほうがよいであろう。唯一、興味深かったのはコンサルの限界についての部分であった。

 とはいうものの、せっかくなのでマッキンゼーとボスコンについての説明で印象に残った部分のみを抜粋しておきたい。まずマッキンゼーだが、マービン・バウアー氏というマッキンゼーを成長させる原動力となった人物について。彼はシカゴ大学の経営学教授から同社に加わったのだが、「ファクト・ベース(Fact-base)事実に立脚する」と「分析的アプローチ(Analytical approach)という2つの概念を基本に据え、科学的かつ論理的な問題解決の方法論を経営コンサルティングの世界に持ち込んだそうである。また、マッキンゼーには本社がなく、世界中で均質なサービスを提供しているという点も特徴的。アイデアを出し、自分の暗黙地をオープンにした人間を褒め、報いるシステムが構築されているからこその強みだと思うが、こういった点は一般企業も見習うべき点であろう。一方でNo.1であるがゆえのプライドと自身から顧客と対立することも辞さないという頑固さも持っている。

 一方で、ボストン・コンサルティングは、少し前まではマッキンゼーとその他多数というその他の中の1つに過ぎなかったのが、日本の経営にマッチするようなコンサルティングを始めたことにより急激に成長したとのこと。その他多数のコンサルがマッキンゼーのマネをして追随しようとしていることろへ、独自性を出して成功した好例であろう。特に面白かったのがボスコンで使用される用語集。日本人向けに分かりやすいよう、漢字仮名混じりの用語が使用されていて面白い。一部を抜粋。

  • 探針機能:仮説を構築し、実証すること。
  • ものさし機能:議論のポイントに関する定量化と客観的分析をすること。
  • 和魂洋才機能:世界の先進企業の取り組みを、顧客の組織風土・企業文化に適合する形で紹介すること。
  • 結晶化機能:提言をブラッシュアップし、鮮明化すること。
  • 尻押し機能:クライアントの迷いを払拭するため、もう一押しすること。
  • 弾よけ機能:社内にある変化への心理的抵抗や正論への感情的批判の矢面に立つこと。
  • 刺激・触媒機能:異質の視点から切り込み、侃々諤々の議論を誘発すること。
  • ツボ割り機能:社内の部門ごとのタコツボを壊し、部門間の議論を生み出すこと。
 さて、限界がありながらも、コンサルを使い続ける企業側の理由が面白かった。特に社内調整の為に、外部からの声があるほうが動きやすいというものは、どこかで聞いたような話で興味深い。なるほどと思いつつ読み進めてみると「しかしながら、経営というものは、そのような反対意見を押し切れるだけのリーダーシップが必要」との意見。こちらの方が、当然至極の意見である。

 そんな中でコンサルティング・ファームを利用するに当たって、経営者に必要とされるのは次の3点とのこと。(1)社内のさまざまな問題について、どれは自力で解決し、どれは外部コンサルに依頼するかをどのような基準で決めるかを明確にしておく。(2)外部コンサルに依頼する際に、どのような基準で依頼先を選定するのかを明確にしておく。(3)複数の異なるプロジェクトを、異なる外部コンサルに依頼した場合、相互の整合性をどのように確保するか。つまりは「コンサルを選定し、マネージする機能が自社内にあり、自力で完遂できるかということである。

 もうひとつ面白かったのが、守秘義務と「ベスト・プラクティス」の微妙な関係というもの。コンサルの強みとは世界中で同業者かあるいはそれに準じる企業のコンサルを行ない、そこから業界の知識やライバル会社の儲けの秘密を仕入れているから、とのこと。このため、一流のコンサルティング・ファームは一業種一社のみという社内ルールを持っている。しかし、企業のビジネスが多角化しており、結果として特定の商品や分野でライバル関係にある企業のコンサルを行なってしまうことがあるとのこと。つまりは「一般化」したり「抽象化」したりして、他社で使用したプログラムを「使いまわす」ことが可能ということである。更には、そのようなアイデアを著書として出版してしまうこともあるというから、面白い。

>2007.02.17.SAT


△0546 『松坂世代』 >矢崎良一/河出文庫

 背表紙あらすじ:一九九八年夏の甲子園。日本中を熱くした、奇跡のような若者たちがいた!ライバルたちはあの夏、松坂大輔と出会ったときから何かを求めて歩きはじめた。木佐貫洋、和田毅、新垣渚、上重聡、小山良男、久保康友、杉内俊哉、そして松坂自身も、あの夏の甲子園の三日間を共有し闘いはなおも続く。喜びと苦しみに満ちたそれぞれの今を追う。

 ノン・フィクションはあまり読まないのだが、スポーツ系は読んでいて面白く感じる。かつて自分もスポーツに熱中していた時期があったからだろうし、またビジネスの世界においてもスポーツから学ぶ点が多いと感じている為であろう。本書は「松坂世代」と呼ばれる野球選手たちの努力や悩み・葛藤を描いた作品である。松坂大輔というスーパースターと、同世代に生まれてしまったが為の幸・不幸の両面を描いていてなかなか興味深い。

 スポーツというのは持って生まれた体格や体力、運動神経などに左右される部分が大きい世界だと思う。努力によって補う点も多く、一流と呼ばれる人々は誰しもが努力や工夫をしていることは重々承知しているが、それでもやはり体格が優れている方が有利であることは否めない。そう考えるとビジネスの世界というのは非常に平等のような気がする。発想と努力でなんとでもなる世界ではなかろうか。

 特に興味を持った人物が二人。鳥海健次郎と小山良男である。鳥海は横浜高校では三塁ベースコーチャーとして活躍し、その後関東学院大にマネージャーとしてスカウトされる。さらには日産自動車からもマネージャーとしての入社を打診される。スポーツにおける勝利というのは、選手だけでなく、その裏方として働いている人たちの努力に負うところが大きい。そんな陽の当たりにくい仕事にスポットライトを当てた筆者の視点は素晴らしいと思う。

 小山良男は横浜高校で松坂とバッテリーを組んだキャッチャーである。自分自身、類稀なる才能を持ちながら「あの松坂のキャッチャー」という目でしか見てもらえず、複雑な思いを抱いている。横浜高校、そして進学した亜細亜大学でも主将を任されるほどだから素晴らしいリーダーシップを持っていたのだろう。そんな小山が大学最後の公式戦でコーチから「仲間を信じなさい」と叱られてしまう。叱ったコーチも素晴らしいが、すぐに自分の間違いに気づいた小山も凄い。こういった経験はスポーツを通してしか経験出来ないものかもしれない。

 この他にも興味深いエピソードが散りばめられており、なかなかの良書。ただ、ひとつだけ気になるのが、各章のサブタイトルに人名が書かれているのだが、「木佐貫洋その他」などと記載してあるところ。筆者にとっては「その他」なのかもしれないが、それぞれ一生懸命の人生があるのだから「その他」というのはいただけないと思った。

 

P.S.220,000 hits over! >2007.02.12.MON

苗村屋読書日記 [110]

     



































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