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![]() ◎0550 『SLAM DUNK−スラムダンク』 井上雄彦 ○0549 『外資系トップの仕事力』 ISSコンサルティング △0548 『制服捜査』 佐々木譲 ×0547 『外資系コンサルの真実』 北村慶 △0546 『松坂世代』 矢崎良一 ◎0550 『SLAM DUNK−スラムダンク』 >井上雄彦/集英社 区切りのよい番号の時には、好きな作品の感想を書くのが自分の中の決まりごとになってきている。500冊目は『永遠の仔』だった。好きな作品ということで、やはり既読の中から選んでしまうのだが、再読するに値し、更に好きな作品と言うと数が限られてくる。パッと頭に浮かぶのは『ホワイトアウト』『夏の災厄』『神々の山嶺』『復活の日』など。そんな中、ふと思い出し、再読したのが『スラムダンク』である。 読書日記としながら、コミックスの書評を書くかどうかは非常に迷ったのだが、浦沢直樹の『Monster』を読んだ時点でその迷いはふっきったつもりである。そういえば『Monster』も350冊目というキリ番であった。 さて、感想を述べる前に、印象的だった3つのシーンを紹介したい。まずはとあるきっかけで不良仲間と付き合うようになってしまった三井が安西先生に「安西先生、バスケがしたいです」と涙を流すシーン。今回の再読が5〜6回目となるが、何度読んでも泣けてしまう。次に海南戦での主人公・桜木花道の活躍。キャプテンの赤木が足首を捻挫してしまうのだが、赤木の海南戦にかける思いを知る桜木の心意気が頼もしい。また、ここでやるかというフェイクも桜木の成長を思わせて忘れられないシーンとなっている。最後はやはり山王戦。特に宿敵?流川との最後のコンビネーションは最高。お互いにパスを出し合うという展開が涙を誘った。 私が本書を好きな理由は恐らく、全編を通じて主人公・桜木の「成長」が描かれているから。4ヶ月という短期間で成長する様に、連載当時は高校生だった私が感激したのは紛れもない事実である。もしかしたら、30歳を超えた今なお、成長したいと願い続けているのは、感受性の強いこの頃に、本書と出会ったおかげかもしれない。 それにしても、なぜ中途半端な形で終わってしまったのだろうか。これから対戦するであろう、他県の強豪たちを紹介しておきながら、突然終わってしまった。第一部完とのことだが、あれから10年以上。もう次作は期待できないであろう。 まず疑ってしまうのは、少年ジャンプの編集との確執。人気投票で下位のものは有無を言わさず打ち切りにする世界に嫌気がさしたのではと勘繰ってしまう。人気の面からして、『スラムダンク』が打ち切りとは考え難いが、ストイックな筆者だからこそ、こういった世界に魅力を感じなくなったのかもしれない。もうひとつ思い当たるのは、桜木をこれ以上、急成長させることに限界を感じたのではないかというもの。最高峰といわれる山王工業を倒し、筆者自身が燃え尽きてしまったのではなかろうか。 さて、ここでスポーツについての所感を。私はスポーツとビジネスのメンタリティについてよく考えるのだが、試合に出たい、いいプレイをしたいという欲求は、ビジネスでいい仕事がしたいという気持ちにつながると思う。 私自身、大学時代ボート競技に熱中したのだが、これが非常にいい経験になったと感じている。その理由をいくつか考えてみたい。(1)まず、スタープレーヤーが存在しないということ。ボートの花形といわれるのはエイトという8人乗り(コックスを入れると9人)だが、誰か一人が突出した力を持つよりも、選手全員が均等に力を発揮しないと船は進まない。それどころか、一人だけの力が異様に強いと、左右の力が対象とならず船は曲がってしまう。全員が同じ動きをすることを求められる究極のチームワークのスポーツであるという点で、チームプレイの大切さを学んだ。 (2)次に、一人でも選手が休んでしまうと練習すら成立しないという点。他のチームがどうかは知らないが、われわれの大学では、ひとつの試合に向けてのチームは固定的であったため、一人が怪我や病気(たまには遅刻)などで欠けてしまうと、代わりに乗るものがいない限り、乗艇すらできなくなってしまう。時間厳守、安易に休まないという当然のことを、身をもって知ることができた。 (3)これは我々の大学固有のものかもしれないが、コーチがいなかった為、自分たちで考える時間を非常に多く持てた点。乗艇前に練習の目的を話し合い、練習後、時には1時間、2時間と反省会を開く。技術の話、精神面の話など、互いの意見をぶつけ合う。今現在、会社で多少なりとも自分の意見を言えるのは、このとき培われたものによるところが大きいと思う。 (4)ひとつの大学(またはチーム)の中に、複数のクルーがあるという点。対校とよばれるいわゆる一軍だけでなく、セカンド(二軍)、サード(三軍)といったクルーも試合に参戦することができる。他のスポーツが一軍のみしか試合に出られないことを考えると、非常にチャンスが多いスポーツ。機会平等の大切さを学んだ気がする。 (5)これは私自身が主将という立場だったから言えることだが、部員一人ひとりのモティベーションをどう保つかという点で、非常に悩んだことはよい経験であった。以前にも書いたことがあるが、アマチュア・スポーツには対価としてのカネがついてこない。あるのは勝利、達成感、やりがいなど無形のものばかりである。この無形の価値ですら、一人ひとり感じ方が異なるのだが、誰に何を言えばモティベーションがアップするかを考え抜いたことは、しんどいが、よい経験であった。 スラムダンクから、随分と話が逸れてしまったが、ひとつのことを徹底的にやるという経験は価値のあるものだと改めて感じた次第。今はその対象が、仕事に向かっているが、一度しかない人生。後悔のないよう、徹底的な努力を継続していきたいものである。
○0549 『外資系トップの仕事力−経営プロフェッショナルはいかに自分を磨いたか』 >ISSコンサルティング/ダイヤモンド社 こういった、経営者へのインタビュー集は好きなタイプの本である。複数の経営者の、さまざまな意見や考えに触れることができるから。また、1冊全てが1人の経営者の話だと、紙面を稼ぐためとは言わないまでも、どうしても間延びした部分が出てしまう。このようなタイプでは、一人ひとりの経営者が、自分の一番言いたいことを語っているので、エッセンスが詰まった良書になりやすいような気がするのである。 何社かの外資系企業の日本法人トップが登場するが、各社長に共通しているのは、外国の大学で学んでいるということ。特にハーバード大学のMBAホルダーが多く見られたのが印象的であった。ここだけ見ると、MBAは役に立つといえるのだろうか。 ■魚谷雅彦 日本コカ・コーラ(株)代表取締役会長
△0548 『制服捜査』 >佐々木譲/新潮社 読み始めた瞬間に既視感を覚えた。どこかで読んだことがあるような気がする。少し読み進めて疑問が氷解。新潮社の『決断 警察小説競作』で出てきた短編が、本書の一作目を飾っていたのである。当時も一番印象的と書いていたが、北海道という地のある寒村を題材にしており、興味深い作品集であった。 短編集といいながらも、私の好きな連作で、主人公は一貫して川久保篤巡査部長。一作目の『逸脱』に始まり、『遺恨』『割れガラス』『感知器』『仮装祭』と5つの作品を収めている。そのひとつひとつが地方独特の事件を扱っており、都会的で派手なミステリーが多い中、渋い味わいを醸し出している。佐々木氏ご自身が北海道出身であり、現在も北海道で執筆中とのこと。作家というのは必ずしも都会に居を構える必要が無いという好例であろう。 本書で一番印象的だったのは『割れガラス』 前科を持つ大工と引きこもりがちな少年を描いた秀作。外見や経歴で人を見がちな田舎の人々、そんな中で黙々とログハウスを組み立てる大工の大城、家庭の事情で引きこもってしまった少年を見事に描き分けている。また、主人公・川久保の情に厚い一面も垣間見えて心温まる作品であった。それだけに、ラストは物悲しさが漂うと共に、現実というものの厳しさ、難しさを直視させられた気分であった。 本書のもう一つの特徴は、刑事ではなくタイトルの通り、制服警官つまり駐在の立場からみた小説ということであろう。実際の捜査を担当するのではなく、聞き込みによって牽制をかけたり、防犯協会や消防団との付き合いから協力を求めたりと、非常に地道な活動が多い。そもそも全国の警察官の大半がいわゆる「駐在さん」であることを鑑みると、このような小説が登場するのは遅すぎた気がしないでもない。 駐在の最大の仕事は犯罪者を作らないこと、というのは矛盾を孕んだ名言である。一方で、町に溶け込む前に人事異動で駐在員をころころと変えようとしている北海道警察に対する、大きな怒りと批判をも感じる。渋い語り口の中に、大きな意思を持った名作といえよう。
×0547 『外資系コンサルの真実−マッキンゼーとボスコン』 >北村慶/東洋経済新報社 多くのものを詰め込もうとし過ぎて、逆に内容が薄くなってしまったように感じた本。まずは、コンサルとは何ぞやという紹介、次にコンサルで使用されているロジカルシンキングやフレームワークといったMBA的な知識の紹介、そしてコンサルの限界という構成である。コンサルそのものの解説については、ある程度ビジネス経験があったり、ビジネス書を読んでいる人にとっては既に知っている知識であり、さほど新鮮なものではなかった。また、MBA的知識についても、非常に基本的な部分だけをさらっと書いており、これであれば他のMBA入門書を読むほうがよいであろう。唯一、興味深かったのはコンサルの限界についての部分であった。 とはいうものの、せっかくなのでマッキンゼーとボスコンについての説明で印象に残った部分のみを抜粋しておきたい。まずマッキンゼーだが、マービン・バウアー氏というマッキンゼーを成長させる原動力となった人物について。彼はシカゴ大学の経営学教授から同社に加わったのだが、「ファクト・ベース(Fact-base)事実に立脚する」と「分析的アプローチ(Analytical approach)という2つの概念を基本に据え、科学的かつ論理的な問題解決の方法論を経営コンサルティングの世界に持ち込んだそうである。また、マッキンゼーには本社がなく、世界中で均質なサービスを提供しているという点も特徴的。アイデアを出し、自分の暗黙地をオープンにした人間を褒め、報いるシステムが構築されているからこその強みだと思うが、こういった点は一般企業も見習うべき点であろう。一方でNo.1であるがゆえのプライドと自身から顧客と対立することも辞さないという頑固さも持っている。 一方で、ボストン・コンサルティングは、少し前まではマッキンゼーとその他多数というその他の中の1つに過ぎなかったのが、日本の経営にマッチするようなコンサルティングを始めたことにより急激に成長したとのこと。その他多数のコンサルがマッキンゼーのマネをして追随しようとしていることろへ、独自性を出して成功した好例であろう。特に面白かったのがボスコンで使用される用語集。日本人向けに分かりやすいよう、漢字仮名混じりの用語が使用されていて面白い。一部を抜粋。
そんな中でコンサルティング・ファームを利用するに当たって、経営者に必要とされるのは次の3点とのこと。(1)社内のさまざまな問題について、どれは自力で解決し、どれは外部コンサルに依頼するかをどのような基準で決めるかを明確にしておく。(2)外部コンサルに依頼する際に、どのような基準で依頼先を選定するのかを明確にしておく。(3)複数の異なるプロジェクトを、異なる外部コンサルに依頼した場合、相互の整合性をどのように確保するか。つまりは「コンサルを選定し、マネージする機能が自社内にあり、自力で完遂できるかということである。 もうひとつ面白かったのが、守秘義務と「ベスト・プラクティス」の微妙な関係というもの。コンサルの強みとは世界中で同業者かあるいはそれに準じる企業のコンサルを行ない、そこから業界の知識やライバル会社の儲けの秘密を仕入れているから、とのこと。このため、一流のコンサルティング・ファームは一業種一社のみという社内ルールを持っている。しかし、企業のビジネスが多角化しており、結果として特定の商品や分野でライバル関係にある企業のコンサルを行なってしまうことがあるとのこと。つまりは「一般化」したり「抽象化」したりして、他社で使用したプログラムを「使いまわす」ことが可能ということである。更には、そのようなアイデアを著書として出版してしまうこともあるというから、面白い。
△0546 『松坂世代』 >矢崎良一/河出文庫 背表紙あらすじ:一九九八年夏の甲子園。日本中を熱くした、奇跡のような若者たちがいた!ライバルたちはあの夏、松坂大輔と出会ったときから何かを求めて歩きはじめた。木佐貫洋、和田毅、新垣渚、上重聡、小山良男、久保康友、杉内俊哉、そして松坂自身も、あの夏の甲子園の三日間を共有し闘いはなおも続く。喜びと苦しみに満ちたそれぞれの今を追う。 ノン・フィクションはあまり読まないのだが、スポーツ系は読んでいて面白く感じる。かつて自分もスポーツに熱中していた時期があったからだろうし、またビジネスの世界においてもスポーツから学ぶ点が多いと感じている為であろう。本書は「松坂世代」と呼ばれる野球選手たちの努力や悩み・葛藤を描いた作品である。松坂大輔というスーパースターと、同世代に生まれてしまったが為の幸・不幸の両面を描いていてなかなか興味深い。 スポーツというのは持って生まれた体格や体力、運動神経などに左右される部分が大きい世界だと思う。努力によって補う点も多く、一流と呼ばれる人々は誰しもが努力や工夫をしていることは重々承知しているが、それでもやはり体格が優れている方が有利であることは否めない。そう考えるとビジネスの世界というのは非常に平等のような気がする。発想と努力でなんとでもなる世界ではなかろうか。 特に興味を持った人物が二人。鳥海健次郎と小山良男である。鳥海は横浜高校では三塁ベースコーチャーとして活躍し、その後関東学院大にマネージャーとしてスカウトされる。さらには日産自動車からもマネージャーとしての入社を打診される。スポーツにおける勝利というのは、選手だけでなく、その裏方として働いている人たちの努力に負うところが大きい。そんな陽の当たりにくい仕事にスポットライトを当てた筆者の視点は素晴らしいと思う。 小山良男は横浜高校で松坂とバッテリーを組んだキャッチャーである。自分自身、類稀なる才能を持ちながら「あの松坂のキャッチャー」という目でしか見てもらえず、複雑な思いを抱いている。横浜高校、そして進学した亜細亜大学でも主将を任されるほどだから素晴らしいリーダーシップを持っていたのだろう。そんな小山が大学最後の公式戦でコーチから「仲間を信じなさい」と叱られてしまう。叱ったコーチも素晴らしいが、すぐに自分の間違いに気づいた小山も凄い。こういった経験はスポーツを通してしか経験出来ないものかもしれない。 この他にも興味深いエピソードが散りばめられており、なかなかの良書。ただ、ひとつだけ気になるのが、各章のサブタイトルに人名が書かれているのだが、「木佐貫洋その他」などと記載してあるところ。筆者にとっては「その他」なのかもしれないが、それぞれ一生懸命の人生があるのだから「その他」というのはいただけないと思った。
苗村屋読書日記 [110]
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