△0010 『猛禽の宴』 楡周平
×0009 『クーデター』 楡周平
×0008 『修羅の終わり』 貫井徳郎
△0007 『Cの福音』 楡周平
○0006 『テロリストのパラソル』 藤原伊織


△0010 『猛禽の宴−続・Cの福音』 >楡周平/宝島社文庫/2003.03.25

 背表紙あらすじ:金がほしいわけではない。己れの能力・可能性の証明として、その対価を求めるのだ―闇の世界にしなやかに生きるヒーロー朝倉恭介のクールな魅力で、たちまちベストセラーとなった楡周平のデビュー作「Cの福音」の続編。ニューヨークを舞台に、マフィア間の抗争、リンチ、陰謀、裏切りの渦の中で、コカインルートの危機に恭介の血が沸き立つ。読者を待つのはフロリダの空を焦がす大夜襲。

 最近、朝起きるのがつらい。連日の長い打ち合わせ&深夜残業で、体力的にも精神的にも結構キているのかもしれない。電車の中の読書がいい気分転換になっている。

 そんな中、テンポのよいストーリーの朝倉恭介シリーズは手頃だ。こんな時に高村薫だとプライベートまで深刻になってしまう。『猛禽の宴』は『Cの福音』感じていたクライマックスが盛り上がりに欠けるという不満を払拭してくれる作品だった。強いて言うならば、ラストシーンに恭介のピンチが全くなかったところか。コジモの意外な反撃があるとさらに面白かった。ナンシーが恭介を助けるシーンも、偶然ではなく必然性があり満足。ただし、コジモ:ナンシー:ミカエルの関係は出来すぎの感有り。気になるほどではないが...

 ところで、『クーデター』では北朝鮮がからみ、『猛禽の宴』では湾岸戦争の後遺症を描いている。巷では米国のイラク侵攻や少し前の拉致問題などがあり、今でも十分通じるテーマだ。作者の目の付け所もいいが、それだけ根が深いテーマなのだろう。イラク侵攻など、遠い世界のことのようでなかなか現実味を感じないのだが、もっと世の中の動きをよく見ないといけないと、反省させられる小説でもあった。

>2003.3.27.THU


×0009 『クーデター−Coup』 >楡周平/宝島社文庫/1999.09.10・2003.03.22

 背表紙あらすじ:謎の重武装軍団が日本海沿岸の原発を狙う。機動隊は殱滅され、住民は一斉に避難。折しも日本海では米原潜の頭上でロシア船が爆発炎上。航行不能となった原潜を挾み「北」と米日韓はまさに一触即発。その時東京で、米国大使館と警視庁に同時爆破テロ。さらに衆参両院に仕掛けられる青酸爆弾…。誰が、一体何のために!? 安逸を貪る「虚飾の花・日本」を襲う未曾有の危機。各メディア騒然の問題作。

 3連休の間に読んだのが『クーデター』。3年以上前に読んだものの再読だが、主人公の彼女があっけなく殺されるシーンはよく覚えていた。今回も同じシーンで救いのなさを覚えつつも、日本人の危機意識のなさを顕著に表した作品だと感じた。特に、ラスト近くで首都圏に発生したテロ行為に、誰もが戸惑いつつも何をしていいか分からず仕事を続けている様は、現実にありそうなだけに非常に怖く感じた。

 『Cの福音』でも感じたことだが、ラストのあっけなさが残念。特に、ロケットランチャーの誤発射で同士討ちというのは、なんともお粗末で、主人公に活躍の場がまったくなかったように感じる。朝倉恭介シリーズの完結編では、恭介と雅彦が対決するそうだが、今のところは恭介に部があるように思う。

 ところで、原発関係といえば、高嶋哲夫の『スピカ』を思い出した。詳細は覚えていないが、こちらは原発に焦点をあてているものの、自衛隊の混乱の仕方などは共通点を感じる。その他、高村薫の『神の火』や東野圭吾の『天空の蜂』も原発がらみ。一時に比べて、批判は少なくなったように思うが、最近多発する不祥事にまた注目を集めるテーマかもしれない。

>2003.3.26.WED


×0008 『修羅の終わり』 >貫井徳郎/講談社文庫/2003.03.19

 背表紙あらすじ:「あなたは前世で私の恋人だったの」。謎の少女・小織の一言を手がかりに、失った記憶を探し始める。自分は一体何者だ? 姉はなぜ死んだ? レイプを繰り返す警官・鷲尾、秘密結社"夜叉の爪"を追う公安刑事・久我、記憶喪失の〈僕〉が、錯綜しながら驚愕のクライマックスへと登りつめる、若き俊英の傑作本格ミステリー。

 方針変更。以前、面白いと思った本しか載せないと宣言してしまったが、そうすると中々更新が進まない。約2ヶ月前に始めたホームページの作成にも随分慣れてきて、今後は出来るだけたくさんの情報を載せていきたいと思っている。

 というわけで、『修羅の終わり』だが、『慟哭』が素晴らしかったので、期待しながら読んだにもかかわらず、あまり面白くなかった。そもそも、結末のトリックが分かりにくく、『慟哭』で思いっきり騙されたので、メモまで取りながら注意深く読んでいたのだが、しっくりこない読後感であった。最後に、解説を読んでトリックの意味を理解することが出来たのだが、あっという驚きもなく、800ページ近くもお付き合いさせられた読者としてはちょっと怒りたくなってしまう内容。

 『慟哭』は2002.10.05に読了しており、非常に面白く感じた作品。それだけに今回の作品はがっかりしてしまった。しかし、今回の解説で、『慟哭』『修羅の終わり』とも所謂、叙述トリックだと知った。叙述トリックといえば、一時期折原一を何冊か読み、面白いながらも自分の感覚とは少し会わないと思っていたジャンル。『慟哭』も今にして思えば叙述トリックなのだが、そんなことを忘れさせるほど素晴らしい描写だった。映像に出来ない作品だなぁと思いつつ、今度は細部に注意しながらもう一度読んでみたいと思ったものだ。貫井徳郎の作品はもう一冊読んでみて、お気に入りにの作者とするかどうかを見究めようと思う。

>2003.3.25.TUE


△0007 『Cの福音』 >楡周平/宝島社文庫/1996.07.30・2003.03.15

 背表紙あらすじ:航空機事故で両親を失い、異郷アメリカで天涯孤独となった朝倉恭介は、おのれの全知力と肉体を賭けて「悪」の世界に生きることを決心する。NYマフィアのボスの後ろ盾を得て恭介が作り上げたのは、日本の関税法の盲点をつき、コンピュータ・ネットワークを駆使したコカイン密輸の完璧なシステムだった。驚くべき完全犯罪…しかし…。国際派ハードボイルド作家楡周平の記念碑的デビュー作品。

 再読である。というか、本屋に朝倉恭介シリーズ全6冊が平積みしてあるのを見て、一気に衝動買いしてしまった。前回読んだときは入社1年目で、仕事で覚えた貿易用語などが出てきて面白く感じたのを覚えている。今回もコカインの密輸のトリックが貿易実務の隙間を突いたもので、面白く読み進めることが出来た。この作者はこんな事を考えながら仕事をしていたのだろうかと、恐れ入ってしまった。

 さて、本編であるが、恭介の境遇に悪役ながらも引き込まれてしまう。この人物造詣の深さや、密輸のトリック、コカインの販売網など非常によく練られた作品である。また、当時、やっと広まりつつあったインターネットを使用するなど、現在のインフラからすると取るに足りないが、先見の明あり、と言った感じである。しかし、敵役が恭介を倉庫で襲撃するシーンはマシンガンであっけなく片が付いてしまい、もう少し盛り上げてもよかったのではと思ってしまう。まあ、デビュー作でこれだけ書けたらいいほうだと思うが…

 次回作の『クーデター』まではすでに読んでおり、3作目からははじめて読むものである。しばらく楽しみが続きそう。仕事が忙しいときほど、エンターテインメントな作品が欲しくなるのである。

>2003.03.23.SUN


○0006 『テロリストのパラソル』 >藤原伊織/文春文庫/1997.07.30・2003.03.16

 背表紙あらすじ:アル中バーテンダーの島村は、過去を隠し二十年以上もひっそり暮らしてきたが、新宿中央公園の爆弾テロに遭遇してから生活が急転する。ヤクザの浅井、爆発で死んだ昔の恋人の娘・塔子らが次々と店を訪れた。知らぬ間に巻き込まれ犯人を捜すことになった男が見た真実とは…。史上初の第41回江戸川乱歩賞・第114回直木賞受賞作。

 さすがは乱歩直木賞ダブル受賞である。構成、人物の相関関係など、よく練り上げられた作品だった。再読だが、適度にストーリーを忘れていて一気に読了した。主人公の島村もいいが、個人的にはヤクザの浅井が好きだ。元警官で、島村のことを男として認めており、何かと世話を焼いてしまう。理想が高いがゆえに、ドロップアウトしてしまった男が上手く描写されている。

 ただし、これらの人物構成は冷静に見ると凝りすぎている感もある。ここから先はネタバレなので、未読の方はご注意を。☆まず、桑野が殺してしまった警官の妻の再婚相手が浅井であり、そのとき助けた少年が手島というヤクザの息子というのは出来すぎている気がする。また、浅井はボクサーとして島村のことを知っていたり、望月が浅井の義理の弟だったり。このあたりの結びつきはもう少しゆるくても物語は成立したと思うし、私の嫌いな「偶然」が勝ちすぎている。また、ラストの桑野の独白は強烈だったが、親友に裏切られるという構図は、原田宗典の『スメル男』を思い出した。☆  『てのひらの闇』でも感じたが、この作者は、人物構成や人物の性格などを熟考してから書き始めるのではないだろうか。緻密だし、決して分かりにくくはないのだが、やはり複雑である。

 とはいうものの、名作であることに変わりはない。自分のホームページを読み返すと、他の作品についても批判ばかり書いているが、そもそも、このホームページに感想を載せているものは、自分でいいと思った作品だけであり、記録の必要なしと判断している作品も多いのである。

>2003.03.16.SUN

苗村屋読書日記 [02]

     



































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