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○0105 『黄泉がえり』 梶尾真治
△0104 『なぜか仕事がうまくいく人の習慣』 ケリーグリーソン
×0103 『ブルーもしくはブルー』 山本文緒
△0102 『ななつのこ』 加納朋子
△0101 『フライ・ダディ・フライ』 金城一紀


○0105 『黄泉がえり』 >梶尾真治/新潮文庫/2003.06.19

 もう随分経つが、先日久しぶりに邦画を映画館で見た。先入観もあるのかもしれないが、邦画に対してはあまり良い印象をもっておらず、ビデオでの鑑賞で充分だと思っている。そんな中、映画館へ足を運び、無駄足だと思わせなかったのが、『黄泉がえり』である。クサナギ君の好演もあったが、なかなかしっかりした脚本で、ラストでは思わずジーンとしてしまった。シックス・センスを思わせる、巧妙なストーリー展開にもドキドキさせられた。しかし、難点が一つ。多くの人が感じたと思うが、劇中に出てくるRUIというバンドの挿入歌がやたらと長い。スポンサーの絡みなのだろうが、せっかくのいいテンポを台無しにしてしまっている。そこまでして売り込みたいかと、商売根性に虫唾が走ってしまった。映画との相乗効果で大ヒットという記事を目にしたことがあるが、あの歌のせいだけで私の評価は×である。(ワードの変換で「奏上硬化」というのが出てきた。演奏で映画が硬化している) といいつつも、全体的には面白かったので、是非原作を読んでみたいと思っていた。なかなか機会がなくずるずると来てしまったが、この度、やっと読了。映画との比較も行いながら、コメントしてみたい。

 まず、原作は映画よりもずっとSF色が強い。黄泉がえり現象がなぜ起こったかを結構書きこんでいる。一方、映画の方は、現象の理由については軽く触れただけで、ラブストーリー一辺倒である。妙に説明臭くせず、黄泉がえりを通しての男女の物語を丁寧に綴ったのは正解だったと思う。かといって、原作が悪いわけではなく、映画でぼかされていた部分がスッキリ理解できた点がGOOD。また、登場人物に至っては、ほとんど原作を無視している。よく、原作者がOKしたなぁと思うほどの変わりようである。映画の主人公とヒロインは完全にオリジナルだし、脇を固める登場人物も、オリジナルを継承しつつ、大きく変わっている。結局、黄泉がえりという現象を軸とした、まったく別の物語だと考えた方がいい。原作しか読んでいない人、映画しか見ていない人、どちらもそれぞれ楽しめるので両方制覇することをお奨めしたい。

 原作を読んで感じたのは、小松左京の『日本沈没』や『首都喪失』といったSFパニック小説との共通点である。予期しない出来事が起こった際に、人間がどのような行動を取るかを書きこんでいる。例えば、黄泉がえりによって人口が急増し失業率が増えてしまったり、病気で苦しんでいる人が黄泉がえりによって健康体で蘇生するのを見越して自殺したりと現実に起こりそうな問題に触れている。また、黄泉がえった人の戸籍をどうするのか、といった実務的な面に触れている。ラストで起こる大地震への備えとして、県政が防災訓練という形を取ってパニックを回避しつつも住民の安全を考えようとする姿勢には、感動してしまった。今の日本にそんな柔軟な思考ができる政治家がいるだろうかと不安にもなったのだが。

 最後に、映画ではラブストーリーを軸にして、人を愛することの大切さや素晴らしさを描いているが、原作はもう少し深いところをついている。ずばり、生命の尊さと人間の優しさである。この二つに感化され、感動し、「彼」は人類に素敵なプレゼントを残してくれた。詳しく知りたい方はぜひ原作を読んでください。

>2003.06.19.THU


△0104 『なぜか仕事がうまくいく人の習慣』 >ケリーグリーソン/PHP/2001.04.11

 一時期、「仕事のやり方」に凝ったことがある。他の会社ではどうだか知らないが、当社の新人は、1ヶ月の集合研修の後、いわゆるOJTで実務を学んでいく。特に私が配属された部署では、パソコンの使い方に始まり、会計システムへの入力方法や伝票の見方が中心で、「仕事のやり方」については教わらなかった。中には、"そんなものは教わるのではなく盗むものだ"、という人もいるが、特に最近入社してくるマニュアル世代の新入社員には、「仕事のやり方」を教えてあげる必要があるのではないかと思う。例えば報告の重要性など、なぜそれが組織にとって必要かをきちんと説いてあげるべきである。最近の新人はろくに報告も出来ないという前に、そのやり方をしっかりと教えるべきだと思う。

 そんな中で、いかに仕事を効率良く行うかを考え、自分から見て優秀だなあと思う先輩に、それとなく聞いてみたり、いろいろな本を読んでみたりしていくうちに、何となく自分なりの仕事の進め方というのが見えてきた。本書は普段自分が意識していることを、文章にしてくれたもの。目新しさはなかったが、こういうふうに言いたかったんだと、自分の中でもやもやと形成されつつあった仕事のやり方を上手く纏めてくれている。以下、共感できる箇所を抜粋してみた。赤字の部分は特に心がけていること。

  • 物事というのは、やるべきか、やめるべきかのどちらかなのだ。もちろん締めきりは考えに入れなければならないが、やるに値することはやる、そうでなければ、やらないことだ。
  • 問題が小さいうちに取り組む習慣を身につければ、それが大きくなって、解決に時間のかかる危険なものになる前に片付けることができる。その結果、重要な仕事に集中する時間をもっと増やせるのだ。
  • 仕事の邪魔になる原因となる業務を真っ先に処理する。
  • 一番楽しくない残務を選んで、真っ先に片付ける→仕事から受けるストレスと不安を追い払うことができる。
  • 一週間に一度はやるべき仕事を残らず点検すること。やるべき仕事とは、予定している業務、備忘録、メモ、TO-DO-LIST、保留トレー、保留ファイル、未処理のeメール、締め切りを書きこんだ予定表、各プロジェクト、部下に任せている仕事など全てのこと。

  • プロジェクト遂行計画が必要な業務:(1)複雑な業務、(2)難しそうな業務、(3)複数の人員が必要な業務、(4)前例がない業務、(5)締めきりが複数ある業務
  • 戦略はゴールを目指す上で不可欠であり、結局はあなたのビジネス、もしくはあなた自信にとって重要なものとなる。はっきりした長期の展望がなくては、一日、一週間、一年、あるいは一生で何をやったとしても、たいして成果が上がらないか、さほど価値のあるものにならないだろう。ゴールはしっかり定義するべきで、文章にするのが望ましい。
  • 仕事を他人に任せるのがうまい人: (1)ある職務にだれが適任か、よくわかっている。(2)すみやかに仕事を委ね、遂行までの十分な時間を与える。(3)目標をはっきり説明する。(4)業務遂行に必要な情報を全て渡す。(5)行動に移る前に、スタッフに業務ないようをきちんと理解させる。(6)締め切りを設定する。(7)企画書の作成を奨励する。(8)定期的に進捗状況を監視する。(9)部下が説明と助言を求めやすい。(10)自分が責任を負うが、職務を実行した人間に功績を与える。(11)新たな責任を持たせることで、スタッフの成長を促す。
  • 毎日の仕事のサイクルに整備を組み込む:書類の整備、机・仕事道具の整備など →怠ればすぐに無秩序になってしまう。

>2003.06.18.WED


×0103 『ブルーもしくはブルー』 >山本文緒/角川文庫/2002.01.26

 この度NHKでドラマ化されるということで、取り上げてみた。1年以上前に読んだ作品で、内容はあまりよく覚えていないので、いまさら感想を書くというのも失礼かもしれないが、何となく気になったので…。物語は、ある日主人公の蒼子が自分そっくりの女性に出会うところから始まる。普通だったら、全くの他人なのだが瓜二つというパターンか、昔生き別れた双子の一方というパターン。ところがいきなりドッペルゲンガーという設定に驚かされた。ドッペルゲンガーというのはいわば分身で、結婚というキッカケを境に、蒼子Aと蒼子Bとに分裂してしまったのである。A、Bそれぞれが、結婚生活に飽き飽きしているところで二人は出会う。当然のように入れ替わるのだが。結局、他人の芝生は青いという話か。タイトルのブルーも芝生の「青さ」から来ているのかもしれない。他人のいいところばかり見ていないで、今時分が手にしている幸せをしっかりと噛み締めようというメッセージが聞こえてきそうである。発想や設定はそれなりに面白いのだが、さらっと読めてしまい、印象は薄かった。もう少し、ホラー仕立てにしたほうが面白かったかもしれない。他の作品には素晴らしいものがあるので、ちょっと厳しいかもしれないが、比較論であえて×。ファンの方、ごめんなさい。

>2003.06.17.TUE


△0102 『ななつのこ』 >加納朋子/創元推理文庫/2003.06.16

 週刊文春のベスト10に選ばれていたのを古本屋で見つけて手に取ったもの。そうでなければ、読むことがなかったであろう。メルヘン調でありながら、実験的な側面も持つ面白い作品であった。ある小説について、作者へ手紙(ファンレター)を書き、同時に身の回りで起こった事件にも触れている。その事件の真相をファンレターへの返事という形で綴っている。身の回りで起こる些細な事件という意味では、北村薫の『空飛ぶ馬』に似ていると思っていたら、解説にも同じようなことが書いてあった。人間のいい面だけでなく、嫌な面にもきちんと目を向けた内容であり、好感が持てたが、もうひとつパンチに欠ける気がする。ラストは確かに意外であったが、そこまでひねらなくてもいいのではとも思ってしまった。単純に作者と読者のやり取りを書いただけでも充分面白かったように思う。逆に、あっと言わせてやろうという作者の意図が感じられて、私としてはいい印象を持たなかった。どちらかというと子供向けなのだろうか? それにしては大人の世界を描きすぎている気もするし、なかなか評価の難しい作品であった。

>2003.06.16.MON


△0101 『フライ・ダディ・フライ』 >金城一紀/集英社文庫/2003.06.13

 先日読み終えた金城作品の『GO』が面白かったので、続いて読んでみた。『GO』ほどの新鮮さは無く、ちょっと期待はずれ。娘を守るために立ち上がったお父さんがカッコイイが、最後は出来過ぎの感あり。☆娘に暴力を振るった高校生・石原と対決するのだが、勝ってしまうのである。ストーリー展開から行くと、勝たなければ意味が無いのかもしれないが、私としては負けても充分かっこよかったと思う。

 思うに、金城は優しい人が好きなのだろう。一見不良風の人物も皆あったかい心を持っている。いや、むしろそういう人間の方が、本当の優しさを知っているとでもいいたいように、筆を進めていく。お父さんの鈴木一の敵討ちに加勢する高校生たち。特に在日韓国人の朴がいい味を出している。彼が語る言葉も奥深い。「基礎ってなんだと思う? いらないものを削ぎ落としていって、必要なものだけを残すことだ」というのは彼オリジナルの言葉。また、ニーチェからの引用で「高いところへは他人によって運ばれてはならない。ひとの背中や頭にのってはいけない」というのも含蓄がある。

 また、敵討ちのためにトレーニングを続ける鈴木だが、いつも乗っていたバスに乗らず、自宅近くの6つ目の停留所までバスと競走するのである。決戦間近の日、初めてバスに勝つのだが、その時、後ろからやってきたバスが止まり、乗客皆が鈴木に向かって拍手をする。運転手にいたっては目を潤ませていたりもする。これを読んで、日本人もなかなか捨てたもんじゃないなぁと感心してしまった。皆、誰かに優しくされたいし、優しくしたいのである。シャイだからそれが表現出来ないでいるのかもしれない。

 やや不満も残るが、あったかい作品であり、何よりもすっきりとする。ストレス解消にはよいかも。

 P.S.今日は13日の金曜日。なんてことはないのだが、なんとなく嫌な感じがする日である。

>2003.06.13.FRI

苗村屋読書日記 [21]

     



































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