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![]() △0150 『「松本」の「遺書」』 松本人志 △0149 『帰りなん、いざ』 志水辰夫 △0148 『黒い家』 貴志祐介 △0147 『ストックホルムの密使』 佐々木譲 △0146 『勝つ経営』 城山三郎 △0150 『「松本」の「遺書」』 >松本人志/朝日文庫/2003.08.22・1997.11.13・(1995.02.24) 先日、帰りの電車の中で向かいのサラリーマンが読んでいた夕刊に、松本人志と常盤貴子の結婚スクープが載っていた。その後、特に報道されていないところを見るとガセネタだったようだが、何かと話題の多い人である。実を言うと、その記事をきっかけに、再読したのが本書。再読までするつもりはなく、パラパラと眺めるだけのつもりが、エッセイ風の日記調のもので、身辺雑記の参考になるかと思いついつい最後まで読んでしまった。ちなみに、本書は『遺書』と『松本』という2冊の単行本を文庫化に際して纏めたもの。『遺書』については既に読んでいたので、実に3回目の再読。私としては珍しい。 本人も書いているのだが、個人としての松本人志と「ダウンタウンの松本」は区別して欲しいとのこと。お笑いのことではなく、今回のような女性がらみのことで騒がれるのは不本意だそうだ。私としてもダウンタウンの松本はすごいと思うが、個人としての松本に対してはノー・コメント。ちょっとやりすぎじゃないかと思うこともある。 というわけで、芸人・松本について触れたい。彼の名前を知ったのは中学生のころ。関西地方に住んでいたため、『4時ですよーだ』というローカル番組を見る機会があった。といっても、タイトル通り、4時から始まるので、実際に見たのは1度か2度。それでも覚えているのは、周りの女子達が、やけに騒いでいたため。机に彫刻刀で「松本人志」と彫り付けている子までいた。その後、しばらく忘れていたのだが、『ガキの使いやあらへんで』で再会。その後、漫才のビデオや、コント・ライブ『寸止め海峡』のビデオなどを何本か見た。最初に大笑いしたネタは、『クイズ100人に聞きました』のパロディで、「ウォークマンをしている若者100人に聞きました。・・・最近どう?」というもの。中学・高校と筒井康隆の作品などを読んでいたためか、このようなシュールで理不尽な笑いがツボにはまってしまった。その後は、コントよりもトークを中心に笑わせてもらったのだが、今までにない斬新な笑いは新鮮であった。 関西在住だったせいか、「笑い」は常に身近にあった。吉本新喜劇の『あっちこっち丁稚』や『花の駐在さん』はなんとなくいつも見ていたし、高校から大学にかけては笑福亭鶴瓶と上岡龍太郎のトーク番組『パペポTV』というのを録画してまで見ていた。それらのネタを自分流にアレンジして、友人を笑わせては自分も笑っていた。 なんだか身辺雑記じみてきたので、本書の感想へ。まず、「笑い」に対する真摯な姿勢には脱帽。自ら「お笑いに魂を売った」と公言するだけはある。しかも、目指しているところが常に頂点で、そのモチベーションには頭が下がる。また、視聴率至上主義に異議を唱え、笑いの中心である若者を笑わせる番組、質の高い番組を常に目指しているところもすごいと思う。1時間の番組を作成するのに、丸2日をかけているという。 シュールなコントが生まれてくる脳ミソから出てくる発想も面白い。特に感心したのは、「たまにデッカイ丸太を積んだトレーラーを見かける。あれが、もしただのドライブだったとしたら・・・」という部分。確かに常人に出来る発想ではない。また、物事の本質・目的をしっかり捉えていると感じた部分も何点かあった。例えば、踏み切りには遮断機や警報機まであるのに何故一旦停止が必要なのか? 高速道路の降り口でシートベルトの検問をやって意味があるのか? などなど。 これだけ「笑い」に関して徹底的に書いたエッセイというのは読んだことがない。週刊朝日に2年間連載されたそうだが、よくも「笑い」だけをテーマにこれだけ続いたものである。なお、「笑い」について書いている本だが、実際に笑ったのは一箇所だけ。「女にモテモテ、金にも不自由しない。子供のころ家族で外食に出かけても、親に気を使い、チキンライスしか頼めなかったオレが、いまではレストランでメニューを見ていても、料理名だけで金額にはいっさい目がいかなくなった。雑誌などの占いを見ていても、金運の欄に「今月ピンチ」などと書いてあると、「フッフッフッ、バカな」という感じである(ちょっといやなヤツかもしれない)」 最後に、真面目な部分を抜粋して締めたい。「オレがこの二年間で皆さんに言いたかったことは何か? 何もオレが最高だ、オレが一番だ、オレが天才だということじゃない。オレが言いたかったこと、それは、自分に自信をもつことは悪いことじやないんだということである。趣味や遊びならともかく、それでメシを食い、親や家族を養っていく本業である仕事に自信をもち、その世界で自分がいちばん高いところにいるという気持ちはあって当然だし、なけりやいかんと言いたいのだ」 本書で松本は40歳くらいで引退すると書いていた。現在39歳。まだまだ脂が乗っているように思うので、もう少し、お笑い界に留まっていて欲しいように思う。
△0149 『帰りなん、いざ』 >志水辰夫/講談社文庫/2003.08.19 先に読んだ、『行きずりの街』が私の中ではいまいちだったので、恐る恐る読み始めたのだが、なかなか凝った設定で、面白く読み進むことが出来た。根底では、バブル期に土地の高騰を狙ってある山村を買い占めようとした業者が、バブル崩壊に伴い大きな損失を抱えてしまい、なんとか土地を返却しようとやっきになっている姿を描いている。その、悪徳不動産業者と、村を守ろうとする住民の間に挟まれて、立ち往生する主人公・稲葉。氏家という地方の名士の娘にほれてしまったり、悪徳業者にいいように使われたりと、格好いいところのない主人公だが、日本を舞台にしたハードボイルドは、これくらいのほうが真実味がある。あまりスーパーマン的な主人公では、興醒めしてしまう。 しかし、初出が1990年でバブル崩壊寸前ということもあり、当時は時代を反映したいいテーマだったのだろうが、やはり、古ぼけた感は否めない。田舎回帰というテーマも見え隠れするが、結局はヒロインに、田舎は嫌だ、都会の洗練された暮らしがしたいと、本音を暴露させてしまい、台無しにしてしまっている気がした。また、主人公と村民の頭脳戦的な部分の描写が多い割りに、悪徳不動産業者との確執があっさりと書かれていたため、中途半端というか、あっけない気がしてしまった。ミステリーというよりは、ハードボイルド。私には少し苦手な分野なのかもしれない。 最後に、ちょっと長いが、氏家の発言を抜粋。「この奥に以前釜沢という集落があって、戦後の引揚者が二十戸ばかり入植していたことがある。しかし土地は痩せている、水利の便は悪い、標高も高すぎる、いろいろの悪条件が重なって離農が相次ぎ、最後にはとうとう二戸になってしまった。残っていたのは八十近いばあさんがひとりだ。こうなると町としては放っておくわけにいかなくなる。町営住宅を用意するから山を下りなさいということになって、むりやり下ろさせた。農業をやめて生活保護で生きろというわけだ。こうしてばあさんは町で暮らしはじめたんだが、ちょくちょくいなくなってしまう。どうもひそかに山へ帰っているらしいというので調べてみるとやはりそうだ。猫の額ほどの畑を耕しに帰っては二、三目そちらに泊まってきている。それじゃあ困るよおばあちゃん。生活保護受けるんだったら元の家に住んじゃいけない。建物はともかく、台所や水回りを壊してここでは生活できないということにしてくれと。行政というものはそういう形を要求するわけだよ。緒局ばあさんと町の職員がその家に行き、竈や流しを壊してその証拠写真を撮ってきて一件落着となった。しかしそれからもばあさんのちょくちょくいなくなることに変わりはなかった。そればかりじゃない。とうとう行方不明になってしまった。もしやというので釜沢へようすを見にやらせると、自分の家で死んでいたんだ。自殺でなくて自然死だったが、台所の板の間で手枕して横になったままこと切れていた。ばあさんの死に顔を見たときは大変なショツクだった。じつに安らかで大らかな死に顔だったんだ。自分の家だから安心して死わたということだよ。そういう安らぎを行政はけっして与えてやれなかった。町営住宅にいたときのぱあさんはいっでも寂しそうでくすんだ顔をしておったもの。みんなしてばあさんの平和を邪魔していたんだ」
△0148 『黒い家』 >貴志祐介/角川ホラー文庫/1999.12.28 結構怖がりで、あまりホラーは好きではないのだが、なんとなく勢いで読んでしまった作品。心霊ホラーでない分、実際にありそうな話で、余計に怖かった。筆者は生命保険会社に勤めていたことがあるそうで、その時の経験を十二分に生かした作品に仕上がっている。本書の主人公・若槻慎二も、生命保険会社に勤務し、死亡保険金の請求書類のチェックや、保険金の査定を仕事としている。ある日、顧客・菰田の家に呼び出され、なんと子供の首吊り死体の第一発見者になってしまう。菰田とその妻から執拗に保険金請求されるが、彼らの不審な態度を疑う若槻は、独自調査に乗り出していく。 特にラストシーンでは、主人公がどんどん追い詰められていく様が、迫真の描写で描かれており、面白かった。ただ、自分の子供を犠牲にしたり、自分の指や腕を犠牲にして保険金を請求するという手口に、かなりショックを受けてしまった。現実にそんなことがあるのかなと、疑いつつも、元生保マンが書いているのだから、限りなく事実に近いのだろう。確かに、保険金目当ての殺人というのは多いが、自分の指を犠牲にしている人がいるというのは衝撃的だった。 そういえば、本作は映画化もされている。映画の方は見ていないのだが、敵役として好演した大竹しのぶが、明石家さんまに「はまり役」と言われて激怒したそうである。 本作品は、林夫妻の毒物カレー事件を予言した作品としても有名だそうだ。うーん、確かに現実に事件は起こっている。日本という国も、少しずつ狂気に蝕まれていっているような気がする。
△0147 『ストックホルムの密使』 >佐々木譲/新潮文庫/2000.08.09 第二次大戦秘話三部作の完結編。大戦末期、ドイツも降伏し、戦争の行く末が確実視される頃、ストックホルムに駐在する海軍武官・大和田は、瀕死の日本にとどめを刺す、連合国側の極秘情報を入手した。日本が滅亡する前にと、その情報を軍上層部へ伝えるべく二人の密使を送る。情報を託された男達は、北欧ストックホルムから広大なソ連を抜け、満州、広島、東京へ、敵中突破2万キロの旅を続ける。 文庫本2冊組みの大作だが、私にとっては今ひとつだった。前作の『ベルリン飛行指令』や『エトロフ発緊急電』の方が、はるかに面白かった。『ベルリン』は飛行機での敵中突破に、『エトロフ』はスパイに焦点を当てていたが、今回の『ストックホルム』はこれらの2つの要素を融合したような作品。融合が上手くいけばよかったのだが、醤油味にソースをかけてしまった様な、中途半端さが残ってしまった。 さて、本書のテーマは戦時下における「祖国とは何か」 おれには祖国などないといいきる森四郎と、ドイツとソ連に分割されて消滅した祖国の復活に命をかけるポーランド人コワルスキ。それぞれが、祖国に対して複雑な思いを抱きつつ、旅を続けていく。この頃の「祖国日本」に対する想いは異常だったかもしれないが、現在の「祖国日本」に対する無関心さも異常である。適度な愛国心は必要だと思うのだが、最近、日本人が祖国を意識したのは、ワールドカップくらいではないだろうか? もう少し、日本という国に感心を持たなければいけないと感じた作品である。
△0146 『勝つ経営』 >城山三郎/文春文庫/2001.06.28 城山三郎と経営者との対談集。何人かと対談しているのだが、全て出井伸之との対談より抜粋。出井氏との対談は良かったが、他の経営者との対談がいまいちだったので、本としての評価は△
苗村屋読書日記 [30]
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