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![]() ○0185 『竜馬がゆく』 司馬遼太郎 △0184 『定年ゴジラ』 重松清 △0183 『シーズ・ザ・デイ』 鈴木光司 ×0182 『黄金の島』 真保裕一 △0181 『入社3年目までに差がつく77の法則』 中谷彰宏 ○0185 『竜馬がゆく』 >司馬遼太郎/文春文庫/1997.09.11〜11.06 思い出の本というものがある。本そのものの記憶も鮮明だが、その本を読んだシチュエーションの方を克明に覚えているものがある。本書『竜馬が行く』はその典型的な作品。私が、初めて海外出張に出かけた際に読んだ本なのである。しかも、海外旅行すら行ったことがなく、始めて尽くしの旅。帰りの便の乗継が悪く、ひとりポツンとロビーで6時間近く飛行機を待っていたときのことを、昨日の様に思い出す。 文庫本で全8巻。司馬先生には申し訳ないが、旅の荷物を軽くしようと、最初から読み終わったものは捨ててくるつもりで古本屋で購入。状態が良くなかったので、全部で1,000円ちょっとだったと思う。で、本書だが、私の明治維新のイメージを払拭する名作。もともと歴史ものといえば戦国時代の方が好きで、明治維新のころの作品は暗殺などが多く暗いイメージがあり、ほとんど読んだことがなかったのである。そんな悪いイメージを取り除き、明治維新に対する興味を書きたててくれた作品である。 竜馬に対するイメージも随分と変わった。明治維新を成功させた英雄の一人だというのは知っていたが、「武」の人というよりは「智」の人で、「日本」よりも「世界」を観ていた人。竜馬の人物評については、賛否両論あるようだが、私は嫌いではない。ちなみに維新期で好きなのは勝海舟と高杉晋作。竜馬の世界観を形成した勝海舟は凄い人だと思う。(といいつつ、子母澤寛の『勝海舟』は途中で挫折してしまった) 竜馬というと、薩長同盟を成立させたり、船中八策を作成したりといった歴史的な偉業が有名だが、個人的には日本発?の株式会社「亀山社中」に注目したい。早くから「世界」に目を向け、海外の文化を取り入れようとした先進的な考え方には頭が下がる。また、頭で考えるだけではなく、実際に行動に移してしまうところが竜馬たるゆえんであろう。 さて、毎日が非常に短く感じる今日この頃だが、技術革新の世界では、日進月歩の様子を「ドッグ・イヤー」と表現している。特に、インターネットの世界では通常の7倍のスピードで時間が流れており、丁度、犬の1年は人間の7年分に相当することから、この表現が用いられるようになったそうである。 同じようなことが人間自信にも起こっているのではないだろうか。例えば明治維新の時代。竜馬たち30代の若者達が国を覆すような革新をやってのけたのだが、乱世の時代の為、早くに命を落とすものも多かった。つまり、40年しか生きられない人は、その人生を全うする為に、80歳まで生きる人の、倍のスピードで成長するのではないかということ。当社の部長が韓国に駐在していたときに言われたそうなのだが、当人は50歳、韓国人の部下が45歳くらいの時の話。儒教の国・韓国で、当人が目上にもかかわらず、部下が随分と失礼な態度だったのでそれをとがめたところ、「日本人は80歳まで生きる、あなたはその半分と少しを生きた。韓国人は70歳くらいまでしか生きられない。人生の割合でいくと、私とあなたは同い年だ」と主張されたそうである。屁理屈と言えばそれまでだが、妙に納得してしまった。 戦後の粗食に耐えた先人達が、80歳という長い人生を謳歌しているが、化学調味料や保存料にどっぷりと遣った我々の寿命はどんどん短くなるのではないだろうか。現代社会の異常なスピードは、人間の寿命が縮まりつつある警鐘かもしれない。などと考えているうちに、また時間が過ぎ去っていく今日この頃。 ところで、司馬先生は「龍馬」ではなく「竜馬」と書いているが、何か理由があるのだろうか? 字画が少ないから、なんて理由ではないのだろうなぁ。最後に、ちょっとアカデミックに「船中八策」を抜粋。
△0184 『定年ゴジラ』 >重松清/講談社文庫/2002.02.14 重松清はファンが多いので、ヘタに△など付けられないのだが、あえて△。ほのぼのとした中に、日本が抱える高齢者問題を風刺する面があったりして、なかなか重い作品なのだが、暗くならないのが重松節のいいところ。バブル期に次々に立てられたニュータウンに対する批判も混ざっているのだろうか。軽く読めたのだが、読み終わった後に、うーんと唸らせる作品。そこまで褒めるなら○を付けろよといわれるかもしれないが、なぜ△か? 解説しよう。実感が湧かないのである。私自身が30代ということで、定年後の生活が想像できない。また、父親は数年前に定年となっているが、もともと趣味が多い人で、むしろ定年後の方が充実しているようである。先日訪れた海外では、定年後に年4回の海外旅行を楽しむ御老人に出会ったし、不況の昨今、経済の担い手は定年した団塊の世代だとまで言われている。本書が書かれたのは1998年なのだが、たったの4〜5年で時代が変わったのかもしれない。少し色あせた感じが拭えず、面白さが減少してしまっていた。 とは言うものの、家族や趣味の大切さを教えられた作品。仕事一辺倒では寂しすぎる。地方駐在が多かった為、各地の方言を身に付けてしまった野村さんに哀愁を感じる。一方、ラスト近くでは主人公の山崎さんがインターネットを始めたりして、少し時代の移り変わりを予感させるものもある。さて、私自身、定年後は何をしているだろうか? 苗村屋読書日記 祝・2000冊突破、なんて喜んでればいいけど・・・
△0183 『シーズ・ザ・デイ』 >鈴木光司/新潮社/2002.05.06 『黄金の島』の航海のシーンを読んでいて思い出した作品。鈴木光司というと、『リング』のイメージが強すぎてホラー作家、あるいはSF作家と思い込みがちである。しかし、初期の名作『光射す海』や『楽園』などから分かるように、海や湖をテーマにした冒険小説が最も得意な分野だと思う。そして、鈴木光司自身が一番書きたかった作品が、この『シーズ・ザ・デイ』のような作品ではなかろうか。作家というと机に向かって深夜まで執筆を続ける不健康な存在を思い浮かべるが、鈴木光司は違う。毎朝、定刻に起きて、仕事をこなし、夜もキチンと就寝する。昼間にはジムで汗を流したり、子供の世話や家事までこなしてしまう。随分前に読んだ記事で紹介されていた様子なので、今も継続中かどうかは分からないが、鈴木光司はそんな健康的冒険的子育て大好き作家である。 その鈴木が海と父親と娘をテーマにしたのが本書。そういう意味で、本人が一番書きたかったテーマではないかと憶測するのである。父親不在と言われる現在に殴り込みを掛けるかのように、父親像を描き出している。とはいうものの、描かれるのは決して強い父親像ではない。むしろ、弱点だらけの父親が、なんとか娘にいい格好をしようと、もがき苦しむ作品である。 主人公・船越達哉は、中絶費用を支払って別れた筈の妻・月子が娘を産んでいたことをある日突然知る。さらには、その娘・陽子が妊娠しているのだ。船越は一夜にして娘どころか孫まで持ってしまうことになる。しかし、陽子の子供は先天性の心臓病で亡くなってしまう。その傷を癒す為、船越はヨットでの旅を企画する。船の旅というのは逃げ場がなく、人間同士が激しくぶつかりあう場であり、そんな海の上で、娘と真正面からぶつかり合っていく。さらに物語は、月子とのクルージングの思い出と交差しながらクライマックスを迎える。 ラスト近くの驚愕?の事実は、なんとなく予想できたものだし、偶然に頼りすぎていてあまり好きではない。「父親像」を描きたいがために、ちょっと無理をしたのではないかと勘ぐってしまう。他の作品のようにSF色が全くなくて、人間関係だけで構築された物語にしては、少し人間描写が淡白な感じがした。『リング』3部作からの転換を目指そうという意気込みも感じるが、もう一頑張りして欲しい。
×0182 『黄金の島』 >真保裕一/講談社/2003.11.19 元遠洋漁業の乗組員・坂口修司がヤクザに身を落とし、そのヤクザからも命を狙われてベトナムへ逃亡する物語。そのベトナムで、シクロという自転車タクシーで金を稼ぎ、いつか日本へ行きたいと願う少年達と出会う。少年達に日本語を教えながら、望郷の思いを胸に抱き、いつしか少年達とともに日本を目指すようになる。 日本には恋人の奈津がいるのだが、実はこの奈津、修司の親分である砂田の女。修司の人望への嫉妬もあり、砂田から命を狙われる羽目になったのだが、修司と砂田の間で揺れ動く、奈津の心情描写がいまひとつ。砂田におびえつつ修司を心の底から愛するか、修司と砂田を両天秤に掛けてしたたかに利用するか、どちらかに徹底した方が良かったように思う。結局どっちつかずで、悲惨な結末を迎えてしまう。 中途半端といえば、修司の人物設定。最初は人殺しが出来ずに臆病者とさえ言われていた修司なのだが、後半ではあっけなくベトナム人を殺してしまう。「人が殺せない真面目なヤクザ」という設定がなかなか面白く、修司の魅力を醸し出していたのが、台無しである。最後までポリシーを貫いた、ベトナムの少年カイやトゥエイの方がよっぽど魅力的である。もしかしたら、「日本人にはハングリー精神がなく、意思が弱い」という描写をしたかったのだろうか? だとしたら成功かもしれないが、あまりにも情けなさすぎると感じた。 ラスト近くもいまいち。目次で、ある程度展開が読めてしまう。7章は『望郷』、8章『激浪』、9章『上陸』。作者はディック・フランシスが大好きで、2文字の熟語のタイトルが好きだそうだが、ネタバレではどうしようもない。中盤のだらけた描写を削って、海の部分をもっと増やした方が面白いと思うのだが、どうだろうか。そもそも、全体的に長すぎる。以前も書いたが、『逃亡』や『涙』など、追跡ものは、長くなる傾向があり面白くない。 アジアを舞台にした作品では『取引』の方がよっぽど良かった。また、作者は異なるが、ベトナムを舞台にした作品では、『アジアの隼』や『午前三時のルースター』の方が良い。初期の作品がよかっただけに、真保裕一に対してはどうしても辛口になってしまう。ファンとしてはもっともっと取材を重ねて、リアルな作品を書いて欲しいと思うのである。
△0181 『入社3年目までに勝負がつく77の法則』 >中谷彰宏/PHP/1995.12.30 あまり好きな人物ではないのだが、入社当初に読んで、結構、役立った本である。弘兼憲史の『覚悟の法則』とともに、早いうちに読んでおいてよかったと思った。この本のおかげで、仕事に対して変な期待を持たずにすんだし、新人の仕事とはこんなものだと割り切ることも出来た。最近は、派手な仕事をしたがる人が多いのではないだろうか? 特に新人のうちに、どれだけ下積みの苦労をしたかによって、その後の仕事に対する取り組みは大きく変わると思うのだが。
苗村屋読書日記 [37]
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