[PR]看護師の好条件な求人情報満載:「夜勤は嫌!」など希望の転職が実現♪


     
◎0205 『重力ピエロ』 伊坂幸太郎
△0204 『経営の実際』 飯田亮
△0203 『鎖』 乃南アサ
◎0202 『凍える牙』 乃南アサ
×0201 『非情銀行』 江上剛


◎0205 『重力ピエロ』 >伊坂幸太郎/新潮社/2004.01.04

 『オーデュボンの祈り』が思いのほかよかったこと、このミス文春ベスト10でも取り上げられていたこと、各書評サイトでも絶賛されていたことなどから手にとって見た。うーん、久しぶりの傑作。文体もいい、プロットもいい、人物描写もよくて、ラストもいい。文句なしである。「小説!まだまだいけるじゃん!」という帯にも、納得の内容。この本の作者は、私とほとんど同い年。同世代の作家の才能に嫉妬すら感じるほど。

 さて、物語は2人の兄弟とその父親を中心に展開する。兄の名は「泉水」。遺伝子関連の会社に勤めている。途中参加が大嫌いだが、最初から自分が参加していると頑固で熱心。そして、途中でやめるのも嫌いな性格である。弟の名は「春」。グラフィティアート、要するに町に描かれているスプレーの落書きを消す仕事をしている。魅力的な容姿の持ち主だが、女性には興味がない。というのも、彼自身が母親が強姦によって生まれた子供だから。この母の出産を決意したのは父親である。一見普通の人なのだが、陽気でかつ威厳のあるなかなかの人物。ちなみに、兄弟の名前は両方とも、英語に直すと「SPRING」である。これは作者の茶目っ気であろう。

 物語では遺伝子が1つのキーワードとなっている。☆グラフィティアートと連続放火の関連性に気付いた泉水は、グラフィティアートの頭文字が遺伝子を表わしているという事実にたどり着く。実は、泉水が気付く直前に、私も頭文字の意味に気付き、物語の核心に近づいたかと喜んでいたのだが、このネタはすぐにばらされてしまった。早い段階で分かるということは、重要ではあるが核心ではないということ。しかし、後々の大きな伏線となっていたのである。

 仲のいい兄弟の微妙な関係。もちろん弟の出生がトラウマとなっているのだが、この微妙な距離感が旨く表現されている。そして、事件が起こるまでの伏線。『オーデュボン』でも感じたことだが、この作者は伏線の張り方が絶妙である。全く関係のないエピソードだと思わせておいて、最後に収斂する。ネタバレかもしれないが、☆「頭文字」☆も、最後まで重要なキーワードになっている。

 ただ1点、気になったのは『オーデュボン』のカカシを寓話的に挿入した部分。作品同士がリンクしていくというのは嫌いではないが、少し無理があるように感じた。もう少し、自然に挿入できると、一層面白く感じたと思う。

 魅力的な題名の由来は、「ピエロが空中ブランコから飛ぶ時、みんな重力のことを忘れているんだ」という春の言葉から来ている。本当に深刻なことは陽気に伝えるべきだということ。最後にもう1つ春のセリフを。「まっすぐ行こうと思えば思うほど、道を逸れるものだからね。生きていくのと一緒だよ。まっすぐに生きていこうと思えば、どこかで折れてしまう。かと言って、曲がれ曲がれ、と思ってると本当に曲がる」 この印象的なセリフの前後にも、重要な伏線が隠されているのだから、たいしたもんである。

>2004.01.04.SUN


△0204 『経営の実際』 >飯田亮/中経出版/2004.01.03

 経営に関する書籍には大きく2つの分野がある。1つは現役又は引退した経営者が、その実体験に基づいて経営の持論を展開するもの。もう1つは経済学者などが学術的な作面から経営を論じるものである。本書は言うまでもなく前者であり、著者はセコムの創業者、飯田亮氏である。

 両者には当然のことながら長所と短所がある。経営者が書いた経営論の長所は、何と言っても実体験に基づく重みがあること。ほとんどの経営書が「成功」に基づいて書かれているので、反論の余地がない。つべこべ言う前にやってみろといわれれば、頭が上がらないだろう。その貴重な経験に基づく言葉の中には、経営に対する信念、世の中に流されない独自の手法、数々の壁を乗り越えてきた自信が伺える。一方、短所はというと、その「成功」は既に実現されてしまったものであり、二匹目の泥鰌を狙っても仕方がないというもの。経営者の発想や考え方を参考にするのはよいが、猿真似ではビジネスは成功しないだろう。また、これは著者によるが単なる自慢話に終わってしまうことがたまにある。この辺りの見極めや本の活用の仕方は読み手にかかっていると言っていいだろう。

 学者が書く経営書の長所は、やり方次第では新しいビジネスの発想に繋がるというところだろう。現状を分析し、今後必要とされるであろう方向を示唆してくれる本から得るものは多いだろう。しかし、このような優れた本は少ないような気がする。短所として挙げられる、「机上の空論」に陥る可能性を孕んでいるからである。経営というのは、理論だけで語れるものではなく、経験や勘も必要なときがある。結局は、経営者と学者の両方の意見に耳を傾け、長所のみを取り入れるのがよいのだと思う。

 経営書論が長くなってしまったが、本題の本書『経営の実際』 セコムという新しい業態を生み出した飯田氏には感服するが、本書の経営書的価値としては△。8章立てになっているのだが、各章で重複する内容が多かったのが、その理由である。1つ1つの経営論は素晴らしいのだが、何度も出てくるとうんざりしてしまう。恐らく第一線の経営者というのはムダを嫌い、簡潔な報告を望んでいるはずである。ビジネス書も同じで、分厚くなければ体裁が悪いといった概念は捨てて、シンプルな構成にすればいいのにと思う本が沢山ある。まぁこれは出版社側の問題かもしれないが。

 各章の目次が、筆者の経営スタイルをよく表わしているので抜粋してみたい。

  1. 経営とは、創業の基本理念を貫き通すことである。
  2. 経営とは、お客様の立場でシステムづくりを進めることである。
  3. 経営とは、世の中が何を求めているか、その本質を捉えることである。
  4. 経営とは、チャレンジとスピードである。
  5. 経営とは、常に革新するカルチャーをつくることである。
  6. 経営とは、目的を実現するプロフェッショナルな集団づくりである。
  7. 経営とは、結果責任を具体的に伴うものである。
  8. 経営とは、「社会の深い信頼」を得るブランドを築くことである。
 特に第5章は、立場が上になればなるほど、変化を嫌う人が多いなかで、経営者自ら変化を求めている点が素晴らしいと思う。実際に、企業の買収や売却を通じて、新しい文化をセコムという企業にどんどん取り入れようとする姿勢は見習う点が多いだろう。また、「買収」という手法は、「スピードを買う」ものだと言い切っている点も興味深いものがある。そんな中、セコム自信も官僚的になってきているのではないかと危惧している。真面目なのもいいが、ビジネスを実践していく上では「荒々しさ」も必要であり、そのエネルギーから出ないと生まれない新しいものがあるとのこと。

 その他、氏の経営論を要約してみたい。

  • 未知のビジネスデザインというのは誰かに相談できるものではなく、集中力と執着心をもって自分で考え抜くしかない。
  • ニュービジネスは、規制と衝突する宿命を負っていると覚悟すべき。但し、ビジネスを発想する際には、規制はないものとして白紙から考えること。そのほうが消費者や利用者が喜ぶ完成度の高いビジネスモデルが描ける。
  • どんな分野でも供給側と需要側が対立することはない。社会の求める商品やサービスを提供できるところだけが生き残れる。
  • 言葉を駆使し、自分の考えを伝え、人を動かすということが、現在の役員に求められる重要な資質。自分の意見をはっきり言えない人は、役員を返上すべきである。
  • アカウンタビリティー=説明責任だけでなく、「結果責任」を伴う言葉である。
  • これからの時代に待望されるべき経営者とは、事業を構想する力があり、決断を躊躇しない、心根のはればれとした、「凛とした人物」
>2004.01.03.SAT


△0203 『鎖』 >乃南アサ/新潮文庫/2003.12.26

 『凍える牙』の続編であり、音道刑事が活躍する作品。しかも今回は、音道が監禁されてしまうということで、期待して読み始めた。本社が文庫本で発売されていたのが、『凍える牙』を再読するきっかけにもなったのだが、結果は△。音道刑事というキャラクターに依存しすぎて、前作のような物語の美しさは感じられなかった。

 前作に引き続き、本作も女性差別に対する抵抗を描いているが、世の中が変わりつつあることを反映してか、音道に対する評価が随分と向上している。前作でも登場した滝沢など、監禁された音道を助ける為に、必死である。音道の仕事に対する姿勢が認められたからだろうが、前作で音道が見せた、男性社会に一人で立ち向かうという構図が失われてしまったのも、作品の魅力を落としてしまっている感じがした。前半部分で音道に対して嫌がらせを繰り返す、星野などは問題外なのだが、音道監禁への重要な伏線になっているので、まぁよしとしよう。

 また。事件そのものが、派手な割には犯人達が幼稚である。行き当たりばったりの行動で、ミステリーという感じがしない。また、犯人の一人である加恵子が、悲惨な過去を持っていたという設定は、途中から取って付けたような印象を拭えなかった。最初から、もう少し伏線を張っておいてもよかったのではなかろうか。この為、音道が同情の気持ちを抱いていく部分も、なんとなく作り物のような感じがしてしまった。

 警察がガチガチの官僚主義である部分などはよく掛けていたと思うが、前作が傑作だった為に、どうしても比較論で評価は下がってしまう。文庫本2冊組みというのも長すぎし、期待して読むと、肩透かしを食らってしまう作品である。

>2003.12.26.FRI


◎0202 『凍える牙』 >乃南アサ/新潮文庫/2000.02.08・2003.12.24

 タイトルがいい。『凍える牙』 冬の寒さを表わすとともに、ウルフドッグの切なさや寂しさを旨く表現した絶妙のタイトル。直木賞受賞は伊達ではなく、クリスマスに読むにふさわしい秀作だった。3年前に一度読んでおり、今回は再読だったが、文句なしに楽しめた作品。特に、ラストシーンで湾岸線を疾走するシーンは、何度か実際に車を走らせた経験があったためか、情景を思い浮かべながら、前回以上に楽しむことが出来た。

 主人公の音道貴子とウルフドッグの疾風には共通点がある。ウルフドッグとは、狼と犬を掛け合わせたもので、狼の血が流れているがために、野生の血を色濃く継いでいるそうである。その性格を描写した部分に、「ポリシーを持ち、飼い主以外に心を開かず、飼い主の言いなりにもならない。その反面、本来が群れで行動するので、常に誰かがそばにいて、愛情を注がなければならない」というものがあったが、これは音道にも通ずる部分だと感じた。ポリシーを持ちつつ、そばに誰かいないとダメな弱さをもつ。この強さと弱さのアンバランスが、音道の魅力を深いものにしていると思う。そんな疾風に共感したのだろうか。音道が「疾風を死なせたくありません」と語る部分では、思わず涙ぐんでしまった。

 本書は女性差別に対する抵抗でもある。滝田というベテラン刑事に引っ張りまわされながらも、少しずつ成長していく音道。その中には、男性社会の中で「負けるもんか」と歯を食いしばる音道の姿が見え隠れする。最近、作者・主人公・読者の3つともが女性という作品が増えているという。確かに、高村薫、宮部みゆき、桐野夏生など、女性作家の勢いはすごい。私自身は、今でこそ女性だからと意識することは少ないのだが、大学の頃までは、女性作家の小説や、女性ボーカルの歌にはなんとなく抵抗があった。妻の影響もあるかもしれないが、社会人になってからは、女性作家の方を、むしろ好んで読むようになった。結局、男女の差ではなく作品の質をしっかりと見極めなければいけないということだろう。これは仕事でも同じである。

 前半のミステリーの部分と、ラスト近くの映画を思わせるような展開との両方が楽しめる。前半は、自動発火装置で人を焼き殺すという前代未聞の殺人事件と、その犯人探しの謎解きを中心に展開する。捜査の段階も緻密に描かれており、警察小説としても秀逸である。しかし、極めつけはラストであろう。冒頭で述べた湾岸線疾走シーンは「美しい」という表現がぴったりくる。小説を読んで美しいと思うことは、そうそうないような気がする。さらには、疾風の意志の強さを感じる最後の部分では、またもや涙を誘われてしまった。人間以上に人間らしいウルフドッグの切ない物語。お薦めの作品である。

>2003.12.24.WED


×0201 『非情銀行』 >江上剛/新潮社/2003.12.23

 銀行を舞台にした小説というのは、不良債権問題、合併問題、それに係わる人事問題に集約されるのではないだろうか? もちろん、不良債権問題の裏側には、総会屋をはじめとする裏社会との繋がりも隠れている。そう考えると、不良債権に関しては、高杉良の『金融腐食列島』で語り尽くされているし、合併や人事に関する話では山田智彦の『銀行・男たちのサバイバル』シリーズが秀逸である。これらの小説を超えるものを書くのはなかなか難しいのではないかと思う。

 本書『非情銀行』、合併問題を中心に、裏社会との繋がりや人事問題、リストラなどをテーマにしている。しかし、ミドルが奮起するという構図は、『金融腐食列島』そのものであり、二番煎じ的な印象を拭えなかった。いろいろなテーマを盛り込んでいて、それなりに楽しめるのだが、他の銀行小説を読んでしまうと、テーマが絞りこめていないように感じてしまった。

 筆者は大手銀行の幹部社員とのことで、本書がデビュー作。新人であることを割り引いて考えると力作なのかもしれない。しかし、なぜかリアリティを感じない。主人公が格好良すぎるからか、ヒール役の常務がいかにもな感じだからか。実際の人間はこれほど極端ではないのではないかと、少ししらけてしまった。一方で、これほどまでに銀行の内部が腐敗しているのであれば、恐ろしいことだと思った。

 現実の世界の方では、不良債権処理がなかなか進んでいないようだが、それでもメガバンクでは、一息ついたという感じだろうか。先日お会いした大手銀行の方も、底が見えたとおっしゃっていた。しかし、これからは地銀が大変だろう。景気が回復基調にあるといいつつも、東京を中心にした見方であり、地方の景気はまだまだ。足利銀行の破綻が報じられて間もないが、同じような破綻が起こらないか不安を感じる。

>2003.12.23.TUE

苗村屋読書日記 [41]

     



































[PR]正社員転職はマイナビ転職:全国の厳選求人と転職活動を支える情報