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![]() ○0225 『白い巨塔』 山崎豊子 △0224 『油断大敵』 飯塚訓 △0223 『絶対泣かない』 山本文緒 ○0222 『不発弾』 乃南アサ △0221 『ショカツ』 佐竹一彦 ○0225 『白い巨塔』 >山崎豊子/新潮文庫/1996.09.03・2004.01.23 最近、木曜日は飲まずに帰宅する友人が多い。理由は『白い巨塔』を見るからというもの。御存知の通り、フジテレビ開局45周年ということで、唐沢寿明を主役に据えてリバイバル放送されているのである。『白い巨塔』が映像になるのは何と5度目だそうで、その内3回が映画、2回が今回の放送を含むテレビドラマ化である。裏番組の『マンハッタン・ラブストーリー』を見ていたため、私自身は全く視聴していないのだが、なかなか面白いとのこと。つられて、小説のほうを読み返してしまった。 小説の方も、テレビとタイアップして売れているようである。どこの本屋へ行っても、5冊組みのセットが平積みしてある。値段を見ると3,000円ちょっと。上下巻と続編の3冊組みだったものを、今回のドラマ化で5冊に分けて販売している。読書離れが進む中、テレビの原作だと売れるのかもしれないが、私が持っている3冊組みは合計1,500円。1988年に印刷された本なのだが、15年で値段が倍というのは高いように感じる。 前置きが長くなってしまったが、肝心の物語の方は、国立難波大学付属病院を舞台に展開する、「医療」をテーマにしたものである。「医療」とは言うものの、前半(上巻)は教授のポスト争いを描いた、病院内部の人事・政治を描いたもの。後半(下巻)は「誤診」をテーマにしたものである。主役の財前五郎は食道噴門癌を得意とする腕のいい外科医。貧しい環境から這い上がってきた彼は、なんとか教授の椅子に座ろうと、医学部長・鵜飼の人脈や、産婦人科医院を経営している義父の財力で、様々な画策を行う。その対極で、医者としての使命を全うしようとするのが、もう1人の主役というべき、内科助教授の里見脩二である。 権謀術数が飛び交う前半は、どきどきしながら読み進めた。ある程度、ストーリーは記憶にあるものの、決選投票にもつれ込む辺りは覚えておらず、どうだったかなと、ついついページをめくる手が早くなる。カネやポストをちらつかせての選挙運動は、卑劣だと思いつつ、なんとなく財前を応援してしまった。里見の頑なさには感心しながらも、実際一緒に仕事をするとなると融通が利かなくて大変だろうな、などとも考えてしまった。 ところが後半になって、誤診問題がクローズアップされてくると、里見の肩を持ちたくなってくる。一患者の為に自分の地位まで投げ打って、「医者」の重みに対峙する里見の姿には感動すら覚える。最近は、病院の誤診問題や医療ミスなどが、増加傾向にあるが、そういった現状に警鐘を鳴らす意味でも、今回本作品をテレビドラマ化したのは当たりだったと思う。 後半部分は一級の法廷小説でもある。どちらへ転ぶか分からないシーソーゲームのような裁判、医療用語を織り交ぜての丁々発止のやりとりなど、手に汗握るシーン満載である。医療現場だけでなく、法廷関係者にも綿密な取材を重ねた結果であろう。 さて、今回のドラマ化にあたり、山崎豊子がインタビューに答えていたのをテレビで見たのだが、「今、この小説が再びドラマ化されるということは、医療の現場が全く変わっていないということで、大変嘆かわしい」というようなことを話していた。本書が書かれたのは昭和40年。なんと40年前である。そんな小説が現代に通用すること自体、奇蹟のようであり、必然のようでもある。恐らく、日本という国自体の体質がほとんど変わっていないということなのだろう。 ラストは☆里見が辞表を出すところで終わっている。☆これでは、収まりがつかない読者が大勢いたようで、『続・白い巨塔』へと続いたそうである。続編には今日から改めて、じっくりと取り組むつもりである。
△0224 『油断大敵…刑事(デカ)部屋事件簿 』 >飯塚訓/文春文庫/2004.01.22 スポーツ新聞で、役所広司主役で映画化されると知って、文庫本を買ってみたもの。原題は、 『捕まえるヤツ 逃げるヤツ』というものらしいが、文庫化にあたり改題されたとのこと。実際は、映画化にあたっての改題だろうか。原題の方が分かりやすいのだが、本書は泥棒と刑事を扱った物語である。著者は元群馬県警の刑事。実際にあったエピソードを交えながら、泥棒と刑事とを面白おかしく語っている。 中には本当にこんなことあるのかなと思わせるようなものも出てくるが、それぞれのエピソードが魅力的で、面白い。刑事に仲人を頼む泥棒だの、刑事に昇進祝いを贈る泥棒だの。あるときは泥棒が刑事を育てたりもする。居直り強盗なんかが出てくるととたんに話は重くなるのだろうが、ここに出てくる泥棒たちはそれぞれがプロ意識?を持った職人である。そんな彼らは、刑事の情にほだされて、ついつい余罪までしゃべったりしてしまうから、人間の真理というのは不思議なものである。 一方、実話を元にして書いているせいだろうか、小説というよりもノンフィクションのような文体がちらほら出てきて、少し興醒めする部分もあった。ノンフィクションならノンフィクション、小説なら小説と、どちらかに徹底した方が良かったと思う。 さて、本書の著者は群馬県警に勤務していたことがあり、日航機墜落事故の際、御巣鷹山で身元確認班長を務めた人物である。その著書に『墜落遺体』というものがあり、これはいつか読んで見たいと思いつつ、なかなか手を出せない作品。また、『クライマーズ・ハイ』にも出ていた「大久保清事件」や「浅間山荘事件」にも関与していたそうで、様々な経験を積んだ著者ならではの「情」を感じさせる作家である。 話は変わるが、「泥棒」といえば横浜で家の門の片側だけが盗難に遭うという事件が発生している。門の片側だけ盗んでも、くず鉄の価値しかなく数千円にしかならないそうなのだが、犯人の意図は何なのだろうか? ミステリー好きの私など、何かのサインではないかとついつい考えてしまう。例えば、『煙か土か食い物』のように、らせん状に事件が起こっているだとか、『重力ピエロ』のように、放火に関係あるだとか・・・
△0223 『絶対泣かない』 >山本文緒/角川文庫/2002.02.11 山本文緒が15種類の職業に就く女性を描いた作品。どの作品にも頑張っている女性の姿が描かれており、その努力の結果にほろりとさせられる。一番のお気に入りは『ものすごく見栄っぱり』という体育教師が主人公の作品。本気で生徒にぶつかっていく姿に感動し、また自分の現状に反省もした。本気で叱ってくれる先輩を疎んじていないか? 気を遣いすぎて、言うべきときに言うべきことが言えていないのではないか? しかし、200ページ強の文庫本に15の短編というのは、1話1話が短すぎる。せっかくの良い企画なのに、軽くなってしまっている感がある。恐らく色々な職種の人に会って取材を重ねたのだろう。もう少し書き込んで、味のある連作短編集に仕上げて欲しかったと思う。 職業を紹介した本といえば、村上龍の『13歳のハローワーク』という本が売れているそうである。そもそも子供向けに、世の中には色々な職業があることを知ってもらうために書いた本だそうだが、フリーターなどの青年層にも売れているらしい。それだけ、何をすればよいか分からない若者が多いということだろう。かく言う私も、『13歳のハローワーク』には興味あり。買ってみようかな。
○0222 『不発弾』 >乃南アサ/講談社文庫/2002.04.05・2004.01.00 「珠玉の短編集」という言葉がある。「珠玉」という言葉を辞書でひもとくと「美しいもの、すぐれたもの、尊いもののたとえ。特に芸術作品にいうことが多い」とある。あまり長編で使われるのを聞いたことがないのだが、元々が真珠と宝石を意味するものなので、小さいものを褒めるときに使う言葉なのかもしれない。しかし、短編集というのは、収録されている作品に当たりはずれがあったりして、なかなか全ての作品が面白いということはまれ。帯などに「珠玉の短編集」という言葉が踊っているのをよく見かけるが、何が珠玉だと思わせる作品も多い。そんな中、本書は6作品全てがなかなか良い出来栄えであった。「珠玉」という言葉を冠しても恥ずかしくないような作品集。 この度、再読したので1編ずつ紹介していきたい。 『かくし味』・・・常連だけで成り立っている老舗の飲み屋・みの吉。いつ行っても満席でなかなか座ることが出来ない。古い鍋で煮込んでいる名物の煮込みが旨いらしい。そんな噂を聞きつけて青年が店を訪れる。案の定、満席なのだが何度も通ううちに、やっと店に入ることが出来た。一度通いだすと、次からは常連として迎え入れてくれる温かい店。しかし、その常連が1人、2人と死んでしまう・・・。非常にインパクトのある作品で、タイトルを見ただけで話の内容をすぐに思い出すことが出来た。ラストが衝撃的だが、悪意のないホラーといったところか。ひとり身の青年の心細さを受け入れてくれる店の雰囲気と、謎の死を遂げる常連達のコントラストが奇妙な恐怖感を煽っていく。 『夜明け前の道』・・・深夜のタクシーに乗り込んできた外国人の男。なんと腹をナイフで刺されたイラン人だった。普通の病院にはいけないので、仲間のいる埼玉の熊谷まで走ってくれという・・・。シチュエーションからすると、外国人同士の闘争か、などと悪い方へ想像が働き、タクシー・ドライバーもトラブルに巻き込まれていくのでは、と思っていたところ意外な結末。☆仲間の1人がタクシー代だといって、500円玉から1円玉まで様々な硬貨をかき集めて運転手に払うのである。「アリガト、ゴザイマシタ。オ金、コレシカ、アリマセン。ゴメ、ナサイ」と。古きよき時代を偲ばせる心温まる話であった。☆ 『夕立』・・・電車の中で目をつけた男を痴漢に仕立て上げ、金を巻き上げる恐ろしい女子高生達の話。実際、このような事件が頻発していると聞いたことがあり、妻にも満員電車では両手を挙げて立つように注意されたこともある。しかし、初出を見ると1997年の作品。時代を先取りしたテーマだといえよう。罪の意識のない女子高生をリアルに描いており、ラストも衝撃的。 『福の神』・・・主人公は飲み屋を経営する女将。常連客の中に池内という、いけ好かない奴がいるのだが、立場上顔に出せない。ある日その客と毎回同じ日に現れる客がいることに気付く。名刺を貰ってみると、名を松木といい池内のライバル会社の社員。しかし、なぜ、あんな仕事もできなさそうな男を付回すのか? ☆結局、池内の部下の引抜きが目的だったのだが、ラストではこの他にも意外な事実が解き明かされる。女将は離婚後、子供のもとを離れて一人で店を切り盛りしてきたのだが、なんと松木は娘の夫だというのである。ちょっと都合が良すぎる感もあるが、女将の涙に免じて及第点の作品としておこう。☆ 『不発弾』・・・表題作なのだが、短編集の中では一番つまらなかった。仕事と家庭の両方で悩みを抱える男が、不発弾のように不満を溜め込んでいく話である。こういった物語に出会うと、なぜかマンションのダイニングキッチンを連想してしまう。重松清の小説にも似たような場面がよく出てくるが、私が思い描くのは決まって安いマンションのダイニングキッチン。苦しいローンをかかえてやっと手に入れたマンションが、不安定な家族を象徴しているように感じるのだろうか? 『幽霊』・・・「テレビ局には幽霊がいる」という出だしで始まる短編。幽霊とは、足の引っ張り合いに破れて冷や飯を食わされ続けてきた男・津久井のこと。組織での権力争いというのはどこへ行っても尽きないものである。ラストは津久井が意地を見せて終わる。しかし、こういった物語にしては、枚数が足りないような気がした。もっと人間関係を書き込めばさらに面白くなったであろう作品。
△0221 『ショカツ』 >佐竹一彦/角川文庫/2002.09.18 この作者は、私にとって全く未知の存在だった。何かの雑誌に『ショカツ』という小説がなかなか面白いと書いてあったのが何となく頭にあり、古本屋でたまたま見つけたものを手に取ったもの。しかし、妻によるとテレビドラマ化もされていて、なかなか面白いらしいよとのこと。元警視庁警部補という肩書きにも、期待が膨らむ。 物語は、刑事としての第一歩を踏み出したばかりで、実務研修という名目で所轄に配属された「僕」が、そこで出会った1人のベテラン刑事・赤松作造とともに捜査した1ヶ月を描いたものである。「僕」の研修中に、5歳の女の子がボウガンで狙撃されるという事件が発生する。赤松主任とその事件を追っているうちに、さらに大きな事件に突き当たる・・・。 私が警察の中に所轄と本庁という隔たりや、キャリアとノンキャリアという階層があると知ったのは、テレビドラマ『踊る大捜査線』でのこと。それまでもミステリーは読んでいたので、恐らく話の中には出てきていたのだろうが、それほど意識することはなかった。同じ警察だから、階級がどうであれ事件を解決すればいいのだろうと思っていたのである。そんな折りに、キャリア率いる本店(=本庁)と、ノンキャリア中心の所轄との確執を描いたドラマを見て、警察にもこんな内部闘争があるのかと、知った次第。確執の中、「事件に貴賎はない」と主張するノンキャリアの青島刑事と、「偉くならないと正しいことはできない」と出世を目指すキャリアの室井との間に生まれた信頼関係に魅了されたのである。 さて、本書の方はその所轄のベテラン刑事が活躍する話である。本庁の連中とは異なる、独特の捜査方法で、ゆっくりと、しかし確実に犯罪の核心に迫っていく。途中で、ある放火犯の取り調べを行うシーンがあったのだが、「取り調べにテクニックなどはない。あるのは、取調官の人柄、生き方、心・・・」というフレーズが心に残った。しかし、赤松主任は頭も切れるのである。頭脳と人柄とを併せ持たないと、なかなかいい仕事は出来ないということだろう。 最後に、過去の捜査書類を読んでいた「僕」に赤松主任が贈った言葉を抜粋。「捜査書類に書かれている内容は、法律の罪名に当てはめて、並べ替えられた記録に過ぎない。そこに書かれている内容は、紛れもない事実には違いないが、決して真実ではない。ここのところをきちんと押さえないと、全体を見誤るぞ。手術は成功したが、患者は死にました・・・てなことを、平気で口走る医者みたいになっちまう。わかったか?」
苗村屋読書日記 [45]
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