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△0025 『センセイの鞄』 川上弘美
○0024 『クラッシュ』 楡周平
△0023 『仕事ができる人できない人』 堀場雅夫
△0022 『井深大語録』 井深大研究会編
△0021 『稲盛和夫の実学』 稲盛和夫


△0025 『センセイの鞄』 >川上弘美/平凡社/2002.09.28

 ビールを飲みながら書いているのだが、何となく眠れないのでもう1冊。半年前に読んだ『センセイの鞄』を紹介しよう。独特の雰囲気で今までに味わったことのない作品であった。ふわっとした不思議な日本語で、和み系の文体。センセイとの付かず離れずの距離感。ラストは予想通りだったが、清涼な読後感を残してくれる作品であった。

 すらすらと軽く読めてしまった作品なのだが、今思い返してみると果たしてテーマは何だったのか? 「年上の男性に対して抱く淡い恋心」と言ってしまえばそれまでなのだが、この筆者はもう少し深いところまで考えているように思う。さらっと読めすぎて損をしている気がするが、この位軽い方が売れるのかもしれない。

>2003.3.31.MON


○0024 『クラッシュ』 >楡周平/宝島社文庫/2003.3.31

 背表紙あらすじ:インターネットに"凌辱"され、ネット社会への"復讐"を誓った天才女性プログラマー、キャサリン。高度3万フィートの上空で、突如操縦不能に陥った2機のハイテク機。犯行声明HPには全世界から7000万人がアクセス。だが、そこには恐るべき罠が…。世界を音もなく破壊し尽くす凶悪なウイルス"エボラ"が動き出すのはいつか? いまや現実となったサイバー・テロの恐怖を描いた大長編傑作エンターテインメント。

 朝の電車で『クラッシュ』読了。偶然だが、日本企業が年度末の直前を向かえるシーンが出てきた。小説の中では大変なパニックとなっているのだが、どこも同じようなことをやっているのだなと、変に感心してしまった。本編はなかなかの出来栄え。航空機とコンピュータ・ウイルスという一見かけ離れた存在を結びつけた着眼点が素晴らしく、見事なパニック小説に仕上げている。まず、前半で航空機の恐ろしさを思い知らされた。最近は、新幹線と変わらない運賃の為、気軽に利用しているが、コンピュータでガチガチに制御された航空機と言うのは、非常に怖いものだと感じた。日本の空港は過密状態だと言うのはよく聞く話だが、本当にいつおちてもおかしくない状態ではなかろうか? かといって、航空機に乗らないかというと、何だかんだ言って乗ってしまうのが危機意識の少ない日本人的なところなのだが・・・。

 後半部分は、女性の主人公が航空機を外からハイジャックするという前代未聞の犯罪を起点に、世界中にウイルスをばら撒いていく。一時期、ワームなどのウイルスが跋扈し、私も自宅のパソコンにウイルス・バスターが手放せなくなった。ついこの間も、ホームページ作成用の素材を探していると、緊急ロックが掛かり、PCがフリーズしてしまった。幸いデータは失われなかったが、仕事の資料などが一瞬で吹き飛んでしまうかと思うと、冷や汗をかいてしまった。最近は記憶媒体も進歩しているので、定期的にCD-RWにバックアップを取っているが、毎日というわけではなく、そもそも一番大事なデータは直近に作成したものであるはずなので、いつも危険と隣り合わせである。とにかく、小説の中の出来事だと笑っていられない状況が描かれており、もし、今現在、こんな悪質なウイルスが登場したら、ただでさえ脆弱な日本経済を、木っ端微塵に吹き飛ばしてしまうだろう。

 着眼点の面白さから、ついつい褒めすぎてしまったが、不満な点もある。今回も主人公の雅彦がほとんど活躍しないのだ。いや、前作クーデター以下の登場率かもしれない。そもそも、雅彦が登場する意味があるのか? むしろ登場しない方が、コンパクトにまとまった作品になったかもしれない。

 最後に、非常に面白く感じた表現があるので、紹介しておく。筆者がコンピュータ(インターネット)を「火」や原子力発電所に見立てているところだ。曰く、コンピュータは原子力のように、使い方によっては有益にも、害にもなりうる。原子力は言うまでもなく、電力として有益に利用される反面、核兵器と言う恐ろしい顔を持っている。しかし、原発とコンピュータで大きく異なる点は、存在が身近か否かである。原発に近寄れる人は限られているが、インターネットは子供から老人まで誰もが利用できる。この為、貴重な情報を即時に入手できるというメリットを持ちながら、誹謗中傷や悪質なポルノなども簡単に、世界中に流せてしまうというデメリットも持っている。そういった意味で、インターネットは原子力よりもむしろ、「火」に近い存在だというのである。確かに、「火」は100円ライターひとつで、誰もが簡単に利用できてしまう。また、人間は火がなければ生きていけないが、火災というリスクも併せ持っているのである。筆者のこういった比喩には納得させられることが多く、読んでよかったと思うのである。

>2003.3.31.MON


△0023 『仕事ができる人できない人』 >堀場雅夫/知的生き方文庫/1999.02.18

 この週末だけで12冊更新した。何と1ダース。さすがに息切れしそうだ。外はそろそろさくらが咲き始める頃。しかし、今年は遂に花粉症発症のようで、鼻がむずむずする。というわけで家でおとなしくホームページ作りに勤しむ。ビジネス中心になってしまったが、「このミステリーがすごい!」「週刊文春のミステリー・ベスト10」をデータベース化したので、そちらも御覧ください。

 さて、京セラに続いて、堀場製作所の会長の著書。文庫本で読んだのだが、その後単行本化されている。内容を充実させたとのことだが、文庫本から単行本になるのは珍しいのではないか。商魂逞しいというか、商売上手というか。しかも、単行本の方が売れ行きは良かったのではないだろうか。内容については、良くも悪くもワンマン社長のいいところが出ていると思う。仕事をする上で意識すべき事柄も多く、勉強になった一冊。

  • いい仕事をしようと思うなら、沈黙は絶対に駄目。どんなテーマでも積極的に発言し、自分をアピールすべき。的を得ていようが、ピント外れだろうが、かまうことはない。1つのことが駄目だったら、すぐ次の手を打つ、という機転の早さ、発想の豊かさは大きな武器。
  • 会社としては、社員に自己主張を求め、提案を期待する。これからは「出る杭」にならなければ、存在価値を失う。わがままな社員は必ず出世する。自分のわがままを通すためには、それに見合うだけの力量が要求されるから。ただし、否定するときは、その根拠と代案を明確にしなければならない。
  • 完全主義者は仕事を任せることができないため、一人で仕事を抱え込んでしまい、皮肉にも完全とは程遠い結果に終わってしまう。人に任せるには度胸がいる。ここでいう度胸とは、仕事を任せた同僚や部下を無条件に信じるという度胸であり、信じた以上は、任せた人間が失敗しても、自ら責任をとるといった意味の度胸である。

  • ミスをしたときには、大小に関わらず、原因を徹底的に解析しておく必要がある。「なぜ」をキーワードに「なぜ、なぜ、なぜ」と遡っていけば、ミスを犯した源流にたどり着く。源流を見極めれば、二度と同じミスを犯すことはない。逆発想も大事。どうすれば仕事に失敗するかを考えれば、失敗しない。
  • ゼネラリストになるには、まず、一芸に秀でることが大前提。ある分野でスペシャリストになり、そこで得た方法論をほかの分野にも活かしてそこでもスペシャリストになる。そうしてはじめて、「広く深い」本来の意味でのゼネラリストになることができる。社員として伸びようと思うなら、自分の担当分野において専門化であるべきだ。少なくとも社長より精通していて当然。また、苦手な仕事を命じられたときは、ゼネラリストになるチャンスだと割り切り、積極的に買って出ること。まったく未知の仕事であっても、それを処理する手順・ノウハウは意外にも、これまで自分がしてきた仕事と同じである場合が多い。

  • 「新聞に書かれてあったことについてどう思うか」と人から尋ねられたとき、自分の言葉でこたえられるようにしておく。その為には、漫然と記事を読むのではなく、自分の頭で考えながら読まなければならない。一つ一つの情報を頭の中で咀嚼していく。このような訓練を積んでいれば、必ず人と違った視点でものを見つめが養われ、自分だけのオリジナルな意見を持つことができる。新聞・雑誌・テレビ・専門誌などのオープンデータに目を通すこと。その際、漫然と読むのではなく、日ごろの勉強で培った問題意識というフィルターを通して丹念に読み込むのだ。
  • 指示されたことにプラスαの付加価値をつけて成果をあげる。このプラスαに上司は期待し、プラスαの大きな社員が仕事ができる人なのである。
  • 叱ることは上司の責任である。職責として叱らねばならない。感情ではなく、冷静な計算に基づき、部下を育てるために叱る。だから叱責はパフォーマンスでなければならず、それができない人は、人の上に立つ資格がないということになる。叱るというのは難しく、エネルギーを要するもの。しかも、気持ちのいいものではない。だから上司としての力量が問われるのである。

  • 偶然に成功することはあっても、偶然失敗することはない。失敗するには失敗するだけの原因がある。だから、なぜ失敗したか、その過程を解決すれば、成功するためのノウハウが数多く得られるはずである。失敗を自分の財産にできる人は仕事のできる人である。
  • 仕事の「速さ」を第一とするニーズと、「質」を第一とするニーズの2つがある。時と場合によってニーズは変わるので、今どちらが求められているかを見極めなければならない。
  • 仕事ができる人というのは、常に全体を見て仕事をしている。周囲の人間と自分の能力差をはかりつつ、どっちが会社にとってより貢献しているかを評価する。負けていれば翌日抜き返すよう努力する。この日々の積み重ねがやがてバネとなって大きく伸びていくのである。現時点での自分の能力を冷静に評価し、その評価よりちょっと高い望み−すなわちプライドを持つことが自分を伸ばすコツである。
  • 両極端の価値観を併せ持っている人ほど、バランス感覚に優れていると言える。何もしないで真ん中にじっとしているのは、バランス感覚がとれているとはいわない。それどころか、いつも真ん中にいる人は、実は非常に不安定な状態にいるため、どっちに転ぶかわからないといった危うさがある。自分の仕事とトレンドのすり合わせが必要。世の中の流れをとらえ、それに乗って流されるべきか、反対に流されないよう注意すべきかを判断しなければならない。

 的を得た意見が多く、いっぱいメモしてしまった。総合すれば、色々なビジネス書や経営書に通ずる部分が多いが、この人独特の言い方で、ストレートに心に響く。中でも一番強調しているのは、「自分の意見を持つ」ということではないだろうか。このホームページも自分の意見を磨くために書き始めたのだが、まだまだこれからである。

>2003.3.30.SUN


△0022 『井深大語録』 >井深大研究会編/小学館文庫/1999.02.18

 ソニーのファウンダー、井深大の語録である。この本を読む少し前に『ソニーの法則』と言う本を読み、興味を持ったため読んでみた。最近では出井伸之の『非連続の時代』を読んだが、思えばこの頃からソニーに注目し始めていた。日本企業としては非常にユニークな形態をとっており、いわゆる総合電気メーカーとは一線を画している。よく松下と比べられるが、ソニーの方がいわゆるコンテンツ・ビジネス(映画・音楽)、ネットワーク・ビジネス(プロバイダー・衛星放送)を持っている点で優れているのではないだろうか。最近では金融業界(保険・銀行)にも手を出し始めている。

 さて、御存知の方も多いだろうが、ソニーという企業は「東京通信工業」として戦後の復興期に発足した。人がやらないことをやる精神で、テープレコーダー、トランジスタラジオ、ウォークマン、コンパクトディスクなど次々にヒット作を生み出し、急成長してきた。その後の拡大は周知の事実であり、最近ではプレイ・ステーションの躍進がめざましい。このような自由闊達な企業文化を築いたのが井深大氏であり、語録ではその精神を垣間見ることが出来る。

  • 枠の中からどうやって飛び出すかが重要。技術に感性を結びつけると大きな飛躍ができる。
  • 人まねをしない。新しいことを手がけよう。それは大変なことだが、一つ乗り越えると新しい境地が必ず開かれるから。
  • モルモットとはすなわち先駆者だと解釈した。モルモットの後をついてこい。ソニーは先の次のものを開拓するぞ、という意欲に燃えた。(モルモットだと揶揄されたことを受けて)
  • トップに立つ人は泥をかぶる覚悟で仕事に立ち向かえ。それでだめだったら潔くシャッポを脱いで謝る。
  • 発想を持った人を見抜き、動かすこと。契約書や仕様書どおりでは満足できぬ人をひきつけ、引っ張っていくこと。それがリーダーの仕事だ。

  • プロジェクトを組むときに大切なことは2つ。「キーマン」を見つけること。そして、その人がやる気になるよう「説得」すること。それができれば目的は半ば達成したようなものだ。
  • 企業も城と同じようなもの。下の石垣がしっかりしていなくてはならない。強い石垣はいろいろな形の石をうまく噛み合わせることによってできる。
  • まず最初に仕事あり。そして、その仕事を誰にさせたらいいかということで決まる。
  • 中小企業の社長になったつもりで考えろ。彼らは自分が全責任を持って仕事をするから、創意工夫がある。
  • 人間には2種類ある。本人のもっている能力が非常に高い人と、本人の能力自体はたいした事がなくても、人をまとめて大きな仕事ができる人と。
  • いつも何か勉強らしいことをしていないと、もったいないという、悔悟がある。
  • 死んでいくときに持っていけるものを心の中に蓄えなさい。それは本を読むことです。

 最後の言葉は示唆に富んでいる。最近は読書離れが進んでいると言う。一方でマネーゲームが繰り広げられ、バブル期以降、個人も目の色を変えてカネを追っている。普遍のテーマだが大都会で一見便利な生活を送るのと、自然に囲まれ、多少不便であっても人間らしい生活を送るのと、どちらが正解だろうか? 今のところ仕事の遣り甲斐を優先して前者を選択しているが、仕事一辺倒でもダメだと思う。一応、本はたくさん読んでいるので、少しでも心を豊かにしていこう。

>2003.3.30.SUN


△0021 『稲盛和夫の実学』 >稲盛和夫一/日本経済新聞社/1999.01.10

 謂わずと知れた京セラの名誉会長である。京都は生まれ故郷に近いのだが、ベンチャーが育ちやすい風土があるのだろうか? 京セラを初め、堀場製作所、任天堂、村田製作所、ロームなど優良企業を輩出している。特に京セラは家の近くに工場があることもあって、なんとなく馴染み深い存在。しかし、その経営哲学には素晴らしいものがある。稲盛氏は恐らく会計的な勉強をされたことはないのだろうが、経営の本質として会計の大切さを語っておられる。ポイントは以下の通り。

  • 売上を最大に、経費を最小に:売上を増やしていきながら、経費を増やすのではなく、経費は同じか、できれば減少させるべき。生半可なことでは達成できないから、智恵と創意工夫が必要となる。利益とはその結果生まれるものである。
  • キャッシュフロー経営について:「儲かったお金はどこにあるのか」決算書を見るたびに、常に胸に呼び起こさなければならない。
  • 一対一対応の原則:経営活動においては、必ずモノとカネが動く。そのときにモノまたはカネと伝票は必ず一対一対応を保たなければならない。

  • 顧客を満足させることと、経理処理を正確に行うことは全く別であるが、両方とも徹底しなければならない。
  • 予算制度は不要:人や支店を増やす経費に関する予算は、計画どおりにどんどん進んでいくが、肝心の売上が計画どおりに増えないから。
  • 経理などの事務職は間違えば「すいません、直します」で済んでしまう。ミスを犯しても消しゴムで直せると思っていては完璧な仕事はできない。少しくらいの間違いはと思うかもしれないが、投資計画や採算管理などの基礎となる資料に誤りがあれば経営判断を間違ってしまう。だから事務部門でも真剣に経営しようとすれば、ミスは全く許されるべきではない。
  • ダブルチェックの原則:人の心はふとした弾みで過ちを犯してしまうといった弱い面を持っている。よしんば出来心が起こったとしても、それができないような仕組みになっていれば、一人の人間を罪に追いこまなくて済む。

 私も数字を扱う部署に居るため、耳が痛い内容が盛りだくさんである。特に最近はエンロンの問題で、会計士も厳しくなってきている。いやいや論点を間違えてはいけない。会計士が厳しいから、正しい決算を上げるのではなく、自らの会社の未来のために、正しい決算を上げるべきなのである。

>2003.3.30.SUN

苗村屋読書日記 [05]

     



































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