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![]() ○0280 『ラッシュライフ』 伊坂幸太郎 △0279 『四日間の奇蹟』 浅倉卓弥 △0278 『新米国公認会計士試験 監査および証明』 藤田則子 △0277 『夏のロケット』 川端裕人 △0276 『新米国公認会計士試験 企業会計』 杉浦理介 ○0280 『ラッシュライフ』 >伊坂幸太郎/新潮社/2004.05.03 「ラッシュ」という単語には、4つの意味がある。というよりも、「ラッシュ」と日本語で発音する英単語には4通りのスペルがあるといった方が正しいだろうか。表紙に書かれたその4つを抜粋してみる。
さて、物語の方はかなり複雑な構成となっている。人物を登場順に、整理してみたい。ちなみに、グレイアウトの部分は、ネタバレにつながるため、未読の方は御注意を。
というわけで、ネタバレになるが、少し話を整理してみたい。☆まず、スケッチブックに「力」と書いた、河原崎の話が冒頭に来る。河原崎は塚本が死体をバラバラにするのに立ち会わされる。次に「夜」と書いた黒澤の物語。ちなみに黒澤はマンションで河原崎と遭遇している。黒澤は佐々岡に出会い、妻との離婚を勧めている。そして「心」と書いた京子の物語。佐々岡からの突然の電話に驚きつつ、河原崎が運ぶ死体に翻弄される。最後に「無色透明」と書いた豊田の物語。郵便局強盗のシーンが黒澤の物語とリンクしている。☆ こうして整理してみると少しすっきりしたが、改めて筆者の頭のよさを思い知ったように思う。スケッチブックのほかにも、野良犬や香港の宝くじなどの小道具も時間軸の構成に一役かっている。とにかく、あまり時間をかけて読む作品ではない。冒頭のシーンなどを忘れないうちに一気に読むべし。そう言った意味では、うまく映画化すると面白い作品になるかもしれないが、何週にも分けて放送するテレビドラマには不向きであろう。 書き忘れたが、本書でも『オーデュボンの祈り』の「カカシ」が登場する。他の物語にまで話が広がり、さながらエッシャーの騙し絵のように展開していく。読み手の力量を試されているような物語でもある。
△0279 『四日間の奇蹟』 >浅倉卓弥/宝島社/2004.05.02 「このミステリーがすごい!」といえば、宝島社主催の年間ミステリーのベストを決めるものだが、これが発展して作品を募集するに至ったものが、「このミステリーがすごい!大賞」である。本書はその第1回目の大賞受賞作品。 いきなりのネタバレで申し訳ないが、☆巻末に選考委員が指摘していた通り、本書は東野圭吾の『秘密』と共通の現象をネタにしている。三分の一ほど読み進めたあたりで、何だ二番煎じかと思い、少し興醒めしたのだが、そこから先も勢いが失せることなく、一気に読ませる作品であった。特にラスト近くでの「貴方の番よ」というセリフには、それまで丁寧に描かれてきた主人公の切実な願いが叶う、まさに「奇蹟」といっていい名場面であった。☆ さて、物語の方は、ある事件に巻き込まれ、薬指を失ってしまったピアニスト・如月敬輔と、その事件がきっかけで一緒に住むことになった、障害を持つ少女・千織を中心に展開していく。千織は、言葉がうまく話せず、肉体的な発育も遅れがちな少女だが、一方で音楽に対して天才的な記憶力を持ち、ピアノが弾けなくなった敬輔に代わって、次々に曲をマスターしていく。曲の名前や作曲者名は覚えられず、演奏会では始めてみなければ何を弾き始めるか分からないという危うさはあるものの、その演奏は人々に感動を与えていく。ある日、山奥のある施設にて演奏会が催され、敬輔と千織が招待されるのだが・・・。 自分の生きがいであったピアノを奪われてしまった敬輔の鬱屈した気持ち。その敬輔を慕い、敬輔の代りになんとかピアノを弾きこなしたいと一生懸命な千織。そして施設の職員で、自分の過去を忘れようと、施設での生活に全てを投じる真理子。その他様々な登場人物たちが、それぞれ悩みを抱えながらも生きている姿が瑞々しく描かれている。とくに、失った薬指を隠そうと手袋を外さない敬輔に対して、この手袋をずっとつけていることが、千織をどれだけ傷つけているか分からないのかと迫る真理子のセリフには、作者の優しさを感じた。 一方で、せっかくタイトルに「奇蹟」という言葉がつきながら、☆真理子が死んでしまったのが残念。あと、事件をきっかけに千織が障害を克服するというのも、みえみえのラスト。☆ 欲を言い出すとキリがないが、もうひとひねり欲しかったと思う。評価も○か△か難しいところだが、次回作に期待してあえて△とした。
△0278 『新米国公認会計士試験[重点解説シリーズ]監査および証明』 >藤田則子/清文社/2004.05.01 USCPAというと、米国の公認会計士であるが、日本とは随分状況が異なる。まず、人数が桁違いに多い。日本の試験に比べると取りやすい資格であり、米国では会計士事務所で見習いの仕事をしながら受験する人が多いようである。また、試験に合格後は、そのまま会計士事務所でパートナーを目指す人と、転職して企業のコントローラー(経理財務責任者)やCFOを目指す人がいるとのこと。よって、大手企業の経理課長、経理部長になると皆CPAの資格をもっているそうである。 また、米国には「税理士」という職業はなく、USCPAがこれを兼ねている。つまり、税務申告などもCPAが行なうのである。この為、税務申告に関する知識も必要となり、米国の事情を知らない日本人にとっては、なかなか頭の痛い受験科目になっている。 さて、前置きが長くなったが、本書は「監査」のテキストである。前述の通り、CPAは会計士、税理士、企業経理マンなどの様々な顔を持つのだが、その中で本業ともいえるのが「監査」である。私自身、日本の会計士の監査を何度か受査したことがあるのだが、このテキストを読むと、あの時会計士が言っていたことにはこういう意味があったのかと、興味深く読み進めることができた。とはいうものの、専門的で細かな要素も多く、読破するのに2週間ほどかかってしまった。ちなみに、今回の評価も読み物として△としたが、テキストとしては○なので申し添えておきたい。 思うに、受験科目である「監査」を理解する為には、まず監査を行なううえでの大きな「流れ」を把握し、その後で、勘定科目ごとの監査手法を学んだ方がよいのであろう。私の場合、売掛金や買掛金といった特定の費目の監査しか受けたことがなかったため、「流れ」を掴むのに苦労した。その分、一度「流れ」を掴んでしまうと、枝葉の部分は比較的容易に理解することができた。 では、その「流れ」だが、箇条書きにすると、
[Audit Risk] = [Inherent Risk] x [Control Risk] x [Detection Risk] という式である。まず、Inherent Riskとは、勘定科目が持つ固有のリスクである。例えば現金や有価証券などは従業員による横領などのリスクを抱えており、持ち出すことの出来ない大型の固定資産に比べるとInherent Riskが高いといえる。次にControl Riskとは、内部の管理がどの程度できているかによって変化するもので、例えば、支払いの承認と出納業務とを同一人物が行なうと、不正な出金が可能となり、このリスクは飛躍的に高まる。つまり「分権」をきっちりと行なっているか、相互監視により不正が起こりにくくなっているかを問うているのである。 最後のDetection Riskは、監査人が容認できるリスクのことである。前述のInherent RiskやControl Riskが低ければ、このDetection Riskが多少高くても、妥当な監査を行なうことが出来るというもの。つまり、内部管理がきちんとしている企業であれば、10件当たり1件のサンプル抽出で残高の正当性を確認できるかもしれないが、内部管理がずさんな企業に対しては、全件照合しないと、残高の正当性が確認出来ないということである。実際に全ての勘定科目について一件一件確認していくのは不可能であるので、これらのリスクの見極めが重要となるのである。 ポイントは、式が足し算ではなく掛け算になっているところ。Inherent RiskとControl Riskが、企業の状態に依存しているのに対して、Detection Riskは監査人が決定できるものであり、企業の状態に応じて、Detection Riskを上げたり下げたりできるのである。 本書ではこのあたりの論理が非常に明快で、分かりやすく解説されており、後々の具体的手法の部分を理解する手助けにもなった。会社に勤めて実務を経験している人であれば、むしろ後半の方がとっつきやすいかもしれない。「流れ」を掴むことと、これらの「リスク」の関係を理解することが、最初の一歩であろう。
△0277 『夏のロケット』 >川端裕人/文春文庫/2004.04.30 背表紙あらすじ:火星に憧れる高校生だったぼくは、現在は新聞社の科学部担当記者。過激派のミサイル爆発事件の取材で同期の女性記者を手伝ううち、高校時代の天文部ロケット班の仲間の影に気づく。非合法ロケットの打ち上げと事件は関係があるのか。ライトミステリーの筋立てで宇宙に憑かれた大人の夢と冒険を描いた青春小説。解説・小谷真理 荒唐無稽なのだが、妙に現実味があり、なかなか楽しめた作品。高校生の頃からの夢に向かって邁進する主人公達に共感するとともに、自分自身が失いかけているものがあるのではないかと、呼びかけてくれた作品でもある。何となく忙しく過ごしている日常の中、ふと立ち止まって足元を見つめなおす機会を与えてくれた秀作。 内容のほうも、ミステリー仕立てで一気に読ませる。また、ロケットに関する薀蓄も豊富に盛り込まれており、面白かった。行きつけの本屋の平台で大々的に特集されていて目に留まったのだが、隠れた名作かもしれない。しかし、メンバーの選出がご都合主義なのが玉に傷。各人のプロフィールが載っていたので抜粋してみよう。
無理のある設定が気にならない人や、SFとして読む人にとっては痛快な物語であろう。しかし、随所にリアリティを散りばめているだけに、最初の設定に無理があるのは惜しいと思う。筆者の小説は他にも面白いものがありそうなので、そちらの方に期待したい。
△0276 『新米国公認会計士試験[重点解説シリーズ]企業会計』 >杉浦理介/清文社/2004.04.28 まず最初に断っておくが、本書の△という評価は読み物としての評価である。テキストとしては非常に秀逸であるが、読んでいてあまり面白いものではないので△とした。ちなみに、以前紹介した『英文会計テキストブック 中級編』は、日米の会計の違いが実務的に分かりやすく書かれていたので、読み物としても面白かったので○としている。 さて、日本の会計の世界では、数年前からいわゆる「会計ビッグバン」が始まり、米国会計基準や国際会計基準に近い考え方が導入されるようになった。その主なものを挙げると
単純に「右へ倣え」ではいけないのだが、「知らない」のはもっと良くない。私自身、少し勉強しないといけないと思い、国際会計基準に関する本なども読んでみたのだが、これがなかなかピンと来なかった。実際に、経理の現場で仕事をしていたわけではないので、自分の会社への影響などが掴めなかった事も一因だとは思うが、読んだ解説書が悪かったのだろう。そんな中、今回USCPAをめざすに当たり本書を手にとって、米国会計基準とはこのようなものだったのかと理解することができた。つまり、会計ビッグバンの概要がおぼろげながらも分かったのである。 本書の良いところは、これらの概要を実務的に、仕訳の例などから解説している点である。小難しい学術書ではなく、実務テキストとして書かれているため、非常に理解しやすい。600ページ近くあり、読み進めるのに苦労するかもしれないが、日本の会計に共通する部分も多いので、会計ビッグバンに関連するところだけ拾い読みするのもいいかもしれない。USCPAを目指す目指さないに関わらず、日本の経理担当者が一読しておいて損はないと思う。
最後に改訂前の本書の冒頭に書かれていた言葉を抜粋して終わりたい。(残念ながら改訂版には掲載されていない)
苗村屋読書日記 [56]
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