△0030 『ダレカガナカニイル・・・』 井上夢人
△0029 『柔らかな頬』 桐野夏生
○0028 『家族狩り』 天童荒太
△0027 『人材論』 樋口廣太郎
○0026 『希望の国のエクソダス』 村上龍


△0030 『ダレカガナカニイル…』 >井上夢人/新潮文庫/2001.09.12

 背表紙あらすじ:僕、西岡悟郎は28歳独身。警備保障会社に勤める、まったく普通の人間だった。あの日までは。あの8月2日の夜、一体僕に何が起こったのだろうか―僕の新しい職場は山梨の小さな村、新興宗橋の道場の警備だった。ところが道場が火事になった教祖が死に、職を失って東京に戻ると僕に異変が起こった。僕の頭の中に誰かがいるのだ―井上夢人のデビュー作、多重人格ミステリー。

 随分前に読んだので細かい部分は忘れてしまったが、意外なラストに驚かされた作品。もう少し短かくコンパクトに纏めた方がいいかなと思ったが、楽しく読ませてもらった。宗教法人に目をつけている当たりも面白いのではないだろうか。もともと岡嶋二人にはまっていた時期があり、独立した井上さんの作品もコンスタントに読んでいる。早くからパソコンなどをミステリーに取り入れ、面白いトリックを作る人だと思っていた。そのうち、再読して感想を載せようと思っているのが、『99%の誘拐』『クラインの壷』『そして扉が閉ざされた』『チョコレート・ゲーム』の4冊である。他にも面白い作品はたくさんあるが、駄作と名作のギャップが激しいので注意したい。なぜ、そんなことになったかの顚末記も出版されているので、はまった方には一読をお薦めする。

>2003.04.02.WED


△0029 『柔らかな頬』 >桐野夏生/講談社/2002.05.08

 自らキリ番ゲットである。といっても、まだ100アクセスなのだが、100の大台を迎えたのは非常に嬉しい。HP立ち上げからちょうど2ヶ月である。とは言うものの自分自身のアクセスが30回くらいはあるから、実質は延べ70人くらいの方に見ていただいたことになる。ありがとうございます。ところが、掲示板の方にはなかなか書き込んでいただけない模様。私の努力が足りないせいだろうが、何かコツがあるのだろうか? 自分が読んで面白かった本や、読んで見たい本などを紹介していただけたら幸いです。

 さて、今日は一日雨模様。せっかくの桜が散ってしまうほどではないが、何となく憂鬱である。更には、面倒くさがりのため、傘を持つのがキライである。気温も下がってしまい、何となく気分が晴れない日であった。

 何とか早く100冊を達成したいので、新刊を読みつつ、過去に読んだ本を思い出しながら、この日記を書いているのだが、あまり意識して読んでいなかったため、内容を忘れているものが多い。せめて印象に残ったものだけでもと思い、ピックアップしてみたら、150冊くらいあった。今まで1500冊くらい読んできているので、1割は記憶に残る作品に出会っていることになる。確立として高いかの低いのかよく分からないが、本屋で目に止まったものを適当に買っている割には、よいヒット率ではないだろうか。とはいうものの、印象に残ってはいるが再読しないと感想が書けないようなものも多い。そんな中で比較的記憶に残っているのが、この作品である。(若干ネタバレかもしれないので、未読の方は注意してください)☆要するにいなくなった子供を母親が探し回る話なのだが、母親の妄想と現実が入り混じり、不思議な世界を作り出している。こんな結末なんだなと思っていると、実は妄想だったという、いわゆる夢ネタに似た所があるが、子供を失くした母親が妄想を抱くのはさほど不自然ではないので、違和感なく読み進むことが出来た。結局、子供がいなくなった理由は分からないまま終わるのだが、この計算された中途半端な感じも面白かった。『OUT』が非常に面白かっただけに、物足りなさもあったが、母親の心情を深く描いたいい作品であった。最近のミステリーは人間が描けないと駄目なようである。

>2003.04.02.WED


○0028 『家族狩り』 >天童荒太/新潮社/2002.08.20

 読書日記を書くようになって、自分の中で変化がおきている。些細なことだが、ちょっと吃驚している。まずは、歩いる途中にも色々と意識するようになったこと。何か日記に書くネタはないかと、キョロキョロするようになった。いつもならぼぉっと歩いて通り過ぎてしまう道も、様変わりして見えるから不思議だ。次に、読書をするときに自分の意見を持ちながら読み進めるようになったことだ。今までも気になった部分にはマーカーを引くなどしてきたが、その時何を感じたのかを思い出すのは難しい。時にはいいアイデアが浮かんだりするのだが、すぐに消えてしまう。日記を書くようになって、意識して意見を持つようになるとともに、感じたこと・考えたことをメモするようになった。これは、新聞記事についても同じで、面白いと思った記事については、手帳に書き留めるようになった。

 さて、『家族狩り』だが、これは『永遠の仔』よりも後に読んでいる。『永遠〜』が素晴らしかっただけに、見劣りしないか心配だったが、これも優れた作品であった。猟奇的なシーンに目が行きがちだが、親と仔の間に潜む、苦しみや哀しみが見事に表現されている。また、刑事馬見原の無骨な生き方には、最初嫌悪感すら覚えたが、やがて共感を呼び、ラストシーンでは思わず天に祈ってしまった。犯人については比較的早い段階で分かってしまうので、ミステリーとしては物足りないかもしれないが、ヒューマンドラマとして高く評価できる作品だ。高村薫が所謂ミステリーはもう書かないと言っているそうだが、そうなると、天童荒太に活躍してもらわないとならない。ヒューマンドラマだけだと、なかなか読み進めるのがつらいので、このくらいミステリー色があると手頃である。社会派ミステリーの書き手として、これからもいい作品を出し続けて欲しい。しかし、私の好きな作家は、なぜこうも寡作なのだろう。

 >『家族狩り』『幻世の祈り』『遭難者の夢』『贈られた手』『巡礼者たち』『まだ遠い光』

>2003.04.01.TUE


△0027 『人材論』 >樋口廣太郎/講談社/2000.03.26

 昨日夜更かししたにもかかわらず、比較的さわやかな目覚め。朝は駅まで桜の下を歩く。7部咲き程度で、これからしばらく朝が楽しみである。電車の中では日経新聞を読んでいるが、気になった記事が2つあった。ひとつは「慣性消費」という言葉。不景気にもかかわらず、一度上げた生活水準を下げることが出来ず、しばらく消費者の購買量が落ちないというものだ。この慣性消費にも陰りが出始め、野菜のバラ売りを始めるところも出てきたと言う。こういう記事を読むと、日本が本当に危機的状況にあるのがよく分かる。日経平均も下がる一方だし、回復の兆しが見えない。もう一つはソニーの副社長に久夛良木健氏が就任したという記事。『非連続の時代』でいずれ社長になるのではと書いたが、だんだん現実味を帯びてきた。この人の発想については驚かされることが多く、いずれ読書日記に書いてみようと思っている。

 さて、今日は4/1、我が社では新しい期が始まる。新入社員も入社するので、人材について書いた本を紐解いてみた。過去にメモしたものから抜粋する。

  • 納期や待ち合わせの時間を守るのは当たり前のこと。会議に5分間遅刻しただけでも、それによって失った信頼を取り戻すのは容易ではない。たとえ5分でも相手の貴重な時間を奪ったことに変わりはない。
  • 捨てるべきものは躊躇せずに捨て去り、残すべきものはよく吟味した上で残す。そうやって問題点を整理できるリーダーが、時代の節目には不可欠。

  • 常にオリジナル意識を持っている人と、そうでない人との違いは、仕事をエンジョイする気持ちがあるかどうか。積極的に仕事を楽しもうと思っている人は、何とかして自分らしさを出そうとする。人と違うことをやろうとすれば、苦労が伴うのは当たり前。その苦労を乗り越えるからこそ、仕事が楽しく感じられる。
  • 部下を持つ立場になったら、自分がオリジナル意識を持つだけでなく、他人のオリジナリティも積極的に受け入れる姿勢が大切。自分のオリジナリティに自信があればあるほど、他人のオリジナリティに対して冷たくなってしまいがち。上司になったら、積極的に新しい提案を持ってくる部下ほど高く評価するべき。

  • 部下は上司の言葉や態度によって、「心」を動かされたときに、はじめて「動く」。誉めるなら本気で誉める。叱るなら本気で叱る。感謝するなら本気で感謝し、詫びるなら本気で詫びる。これが人間同士の信頼関係を築く上での基本。
  • 手柄が自分のものになろうが、上司・部下のものになろうが、そんなことは関係ない。仕事の価値は実現したもの自体にある。自分をアピールするだけのために口にする意見など何の価値もない。真剣にその実現をねがっているのなら、むしろわざと上司・部下に手柄を譲っても、意見を通すのが本当。
  • 精神的に一番苦しいのは、配属された部署そのものが意に沿わないところだったケース。しかし、そこで気持ちを腐らせて、投げやりな態度をとると、その人はそこで終わってしまう。仕事で手を抜くということは、自分をアピールすることを放棄したのと同じ。チャンスがほしければ、どんな仕事であれ全力で取り組むことで、自分をアピールし続けなければならない。それをせずに、次のチャンスを待とうなどと呑気な気分でだらだら仕事をしていると、永遠に次のチャンスは訪れない。
 新人というよりむしろ管理職向けの言葉が多いが、いろいろと参考になる。特に最後の言葉には考えさせられた。どんな仕事であれ全力で取り組むこと。「全力」というのがなかなか難しい。

>2003.04.01.TUE


○0026 『希望の国のエクソダス』 >村上龍/平凡社/2002.05.11

 背表紙あらすじ:2002年秋、80万人の中学生が学校を捨てた。 経済の大停滞が続くなか彼らはネットビジネスを開始、情報戦略を駆使して日本の政界、経済界に衝撃を与える一大勢力に成長していく。 その後、全世界の注目する中で、彼らのエクソダス(脱出)が始まった―。 壮大な規模で現代日本の絶望と希望を描く傑作長編。

 村上龍の作品を読むのは久しぶり。高校生の頃に読んだ『コインロッカー・ベイビーズ』にはまってしまい、その後、何冊かを手にしてみたが、ピンと来るものがなかった。そのうち、ほとんど読まなくなっていたのだが、再び読んでみようと思ったきっかけは、村上龍が主催する、Japan Mail Media。そこで、金融業界の専門家と対話しているのを見て、ちょっと読んでみようと思ったわけである。わけの分からないエロ小説を書いていたと思っていたのが、いつの間にかビジネス小説を書くようになっていてビックリである。

 さて、本編は中学生が日本経済を救うという荒唐無稽なお話なのだが、今の低迷している日本を見ると、ありえない話ではないと思わせる作品である。結構まじめに、インターネットのことや金融業界を調べていて、力の入った作品に仕上がっている。冒頭で、今ではすっかり有名になったタリバンが出てくるのも、村上龍が世界情勢を良く見ていた証左ではないだろうか。通貨を作ったり、国家を作ったりと、大胆な展開が進んでいくが、名作『沈黙の艦隊』も日本からの独立を謳っていたではないか。中学生を主人公にした点、しかも不登校という日本が抱える大きな問題に注目した点も評価できると思う。今後は、JMMで培った人脈を元に、濃厚なビジネス小説を書いてもらいたいと思う。

>2003.03.31.MON

苗村屋読書日記 [06]

     



































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