[PR][無料]足し算引き算で分かる:電卓で気になるあの人も恋人の相性も診断
![]() △0305 『新宿鮫』 大沢在昌 △0304 『金融腐食列島』 高杉良 △0303 『三谷幸喜のありふれた生活3…大河な日日』 三谷幸喜 ○0302 『クリティカル進化(シンカー)論』 道田泰司 △0301 『始祖鳥記』 飯島和一 △0305 『新宿鮫』 >大沢在昌/光文社文庫/2004.08.06 背表紙あらすじ:ただ独りで音もなく犯罪者に食いつく…。「新宿鮫」と怖れられる新宿署刑事・鮫島。歌舞伎町を中心に、警官が連続して射殺された。犯人逮捕に躍起になる署員たちをよそに、鮫島は銃密造の天才・木津を執拗に追う。待ちうける巧妙な罠! 絶体絶命の鮫島…。登場人物の圧倒的な個性と最後まで息をつかせぬ緊迫感! 超人気シリーズの輝ける第1作、ついに登場! 初読の時には、スピード感に圧倒されて◎に近い感想であったが、シリーズを何冊か読んだ今となっては、少し粗さを感じてしまった。特に、偶然の要素が強いのが気になる。群衆の中での真犯人と鮫島との最初の出会いや、恋人のライブに偶然現れる犯人、愉快犯のエドに偶然出くわす鮫島など、御都合主義的な側面は否めない。それでもなお、最後まで読ませる筆力はさすがというべきか。 警察官僚の世界に「キャリア」と「ノンキャリア」という2つの階層があるというのを強く意識した本書。それまでは、漫然と刑事と警官の違いというくらいにしか認識していなかったので、「キャリア」という存在に吃驚したのを覚えている。ろくに現場のことも知らず、学歴だけで組織を上り詰めていく、まさに日本の悪しき風習といえる制度。このような制度が今も罷り通っているところに、不安を感じる反面、それでも世界一と言われる日本の警察に対して、いや、日本の警察を支えるノンキャリアの人々に対して敬意を払いたい。 さて、本書の主人公である鮫島は、「キャリア」でありながら、落ちこぼれてしまった刑事である。死んだ友人が掴んでいた警察幹部の極秘情報を手にし、誰もが口を出せない存在として孤立してしまった一匹狼。襟足を伸ばしているのは、昔同僚に模擬刀で斬られた傷跡を隠す為…。このような現実にはありえそうもない設定なのだが、これが物語の面白さに繋がっており、まさにシリーズ化するために生まれてきたような設定といえるであろう。また、鮫島という強烈な個性を取り巻く脇役たちの描写も鋭く、人間ドラマの一面も呈している。 第8作まで出ている本シリーズだが、既読は6作目の『氷舞』まで。『屍蘭』『無間人形』など、それぞれのサブタイトルも洒落ている。ゆっくりと楽しみたい連作小説である。
△0304 『金融腐食列島』 >高杉良/角川文庫/1999.12.14・2004.08.04 背表紙あらすじ:【上巻】大手都銀・協立銀行の竹中治夫は、突然、本社総務部への異動を命じられる。通称”渉外班”…総会屋対策を担当するポストである。上層部からの特命を帯びた竹中は、心ならずも不正融資に手を貸してしまう。組織と個人の狭間で葛藤しながらも、人事権を掌握しているワンマン会長のスキャンダル隠しに加担せざるをえなかった竹中は、会長側近のやり手秘書役と駆け引きし、元大物総会屋や企業舎弟じみた人物との交渉に奔走する。今日の銀行が直面する問題に鋭いメスをいれ、日本中を揺るがせた衝撃の話題作。 【下巻】緊張の定時株主総会を終えて渉外班の任を解かれた竹中治夫の次なる仕事は、営業本部プロジェクト推進部で大口の不良債権処理を進めることだった。その回収に乗り出して右翼や暴力団からターゲットにされた竹中は、家族まで巻き添えにされ、辛い闘いを強いられる。闇の社会に侵食されて腐敗した銀行にあって、竹中は活路を見出すことができるのか。先行きの不透明な日本経済の現状のなかで、ミドルの生き方を問いかける。日本の大銀行の恐るべき内実を明らかにし話題を呼んだ迫真のドラマ。 UFJ銀行が東京三菱と合併をいうニュースが先日流れたばかり。三井住友からも統合の申し入れがあったりと、「ドラマは小説より奇なり」を体現するような出来事が次々に起こっている。そんな中で、ふと思い出して再読したのが本書である。 舞台は平成5年(1993年)から9年(97年)あたりの銀行。会長が権力を握り、派閥人事や不正融資などがまかり通る時代の銀行である。緻密な取材に基づいた作品であり、巻末に「フィクション」と謳ってはいるが、限りなく実話に近い小説であろう。いや、小説だからこそ書き得た真実かもしれない。今から10年前、バブル崩壊の直後に、これほどまでの横暴が行なわれていたとは、未だに信じがたい。 本書は時代を先取りして、前半(上巻)を不正融資問題、後半(下巻)を不良債権回収問題に充てている。この時代の経営者たちの放漫経営のツケが、未だにくすぶり続けていることは、最近のUFJをめぐる問題からも明らかであろう。金利や手数料という名目で吸い上げられたカネが、更には血税までもが闇に流れていくさまを想像すると、度し難い怒りがこみ上げてくる。 全体を通して「銀行」という魔窟に対する警鐘を鳴らし続けた点は大きく評価したい。しかし、少しだけ不満も残る。元とはいえ大物総会屋を主人公に近しい存在にしたこと。最後に、この元大物総会屋とも決別するようなシーンがあれば、もっとすがすがしい読後感になったかもしれない。 そういえば、本書を手にしたきっかけは映画版の『金融腐食列島』である。役所広司や椎名吉平が、銀行のミドルとして活躍するシーンに感激し、思わず衝動買いしたもの。表紙には役所広司の顔など、映画のワン・シーンが印刷されている文庫本なのだが、読んでいてどうもしっくりこない。実は、映画化されたのは次のシリーズの『呪縛』の方であり、本書とは異なるストーリーだったのである。これにはまんまと騙されてしまった。 さて、最近は、さすがに総会屋では食べていけなくなったようで、数も減ってきているとのこと。一方で外国人株主が「物言う株主」として台頭してきており、中にはM&Aを仕掛けてくるような投資家もいるから企業はなかなか手を抜けない。まぁ、企業が健全化する方向へ向かうのは非常にいいことなのだが、株価を意識しすぎて短期的な施策に走ってしまうと、これまたエンロンの様な問題が勃発しかねない。痛し痒しの部分もあるが、欧米に右へ習えではなく、日本企業の良い部分はしっかりと残しつつ、欧米企業の長所を取り入れていくべきである。古来、日本は物真似からの改良が得意な民族なのだから。
△0303 『三谷幸喜のありふれた生活3…大河な日日』 >三谷幸喜/朝日新聞社/2004.08.01 「ありふれた生活」シリーズの第3弾である。正直「笑い」という点では第2弾の方が面白かったように思う。本書は脚本家としての悩みなどに触れていて、面白いというよりも興味深い内容であった。特に、大河ドラマを書いている際の苦労など、ドラマとシンクロしていて実に興味深かった。 さすがに大河ドラマの脚本ともなると、時代考証の為に、当時の言葉に詳しい人たちが、脚本のチェックをするそうである。例えば、沖田総司が「僕」という言葉を使うのはおかしいとか、「人間」という意味が今とは異なっていたとか。確かに日本は時代によって変わってきているので、今回のように若い役者に躍動感を持たせつつ芝居をさせようと、現代の言葉を取り入れているような場合には、苦労が多いのだろう。一方で気になるのが坂本竜馬のセリフ。江口洋介扮する竜馬のセリフは、私には名古屋弁に聞こえて仕方が無いのだが、あれが生粋の土佐言葉なのだろうか。一応、言葉の指導なども入っているようだが、あれだけはいつまでたっても耳につく。 さて、大河ドラマ『新選組!』の方は芹沢鴨が死に、池田屋事件が勃発し、と急展開である。芹沢鴨(佐藤浩一)、新見錦(相島一之)といった存在感のある登場人物が死んだ後、どうなるものかと思っていたが、今のところは何とか頑張っているといったところ。「いい人」として描かれてきた近藤勇(香取慎吾)がどう変わるかが見ものだったが、「御公儀の為」という大義名分の元で、なんとか破綻せずに鬼の局長を演じている。 局長以上に存在感のある芝居をしているのが、土方歳三(山本耕史)。どちらかというとベビーフェイスなので最初はどうなることかと心配だったが、最近では顔つきまで似てきており、うまく憎まれ役に徹している。個人的に好きなのは、山南敬介(堺雅人)。ニヒルな笑いと慇懃無礼な言葉遣いのアンバランスがなかなか。一番カツラが似合っているのも山南だと思う。この他にも永倉新八(山口智充)、原田左之助(山本太郎)、といった個性的な面々が脇を固めており、これからも楽しみである。 大河ドラマの感想の方が長くなってしまったが、本書の中でもう一つ気になる部分が。「ねむるねむるねむる」と題された章で、三谷幸喜が約一週間眠り続けたという話。最近、急に忙しくなり、毎日4〜5時間の睡眠が続いていた私は、昨日の土曜日に丸一日眠り続けてしまった。以前であれば、一日を無駄にしてしまったと激しい後悔に襲われていたところだが、本書を読んだ後は、人間休息も大切と、割り切れるようになった。睡眠時間が短くてすむ人と、長く取らなければ眠くて仕方の無い人では、同じ年月を生きても密度が違うような気もするのだが、果たして寝て暮らすのが幸せか、一刻を惜しんで生き急ぐのが幸せか…?
○0302 『クリティカル進化(シンカー)論・・・「OL進化論」で学ぶ思考の技法』 >道田泰司・宮本博章・秋月りす/北大路書房/2004.07.25 読書日記を始めてよかったことの一つに、交友関係が広がったことが挙げられる。本書はネットを通じて知り合った「先生」から頂いた本。最初は趣味の延長で始めた読書日記だが、このような広がりを持ち始めて、今更ながらネットの奥深さを思い知った。使い方さえ間違えなければ、ネットというのは非常に有用である。ちなみに、著者の道田先生は駄洒落好きのようで、「クリシンで、(く)立身出世!!」というサイン入りコメントを頂いた。 「クリティカル・シンカー」とは「Critical Thinker」のことで、物事をクリティカル、つまりちょっと批判的に考えてみようというもの。「批判的」というと語弊があるので、「論理的に」とか「少し距離を置いて客観的に」という風に読み替えてもいいであろう。本書では「クリティカル・シンキング」または「クリティカル・シンカー」を略して「クリシン」と読んでいるが、これは「クリティカル進化論」の略でもあり、ここにも駄洒落好きの先生の姿が垣間見える。 さて、本書であるが、秋月りすさんの『OL進化論』から4コマ漫画を抜粋し、そこにクリティカル・シンキングの視点を織り込むという構成になっている。最初に本書を手に取ったときには、てっきり秋月さんとの共著で、文章に合わせて漫画を書き下ろしたのだと思っていたのだが、丸っきり逆であり、秋月さんの漫画に、先生たちがコメントするという構成。膨大な4コマ漫画の中から、テーマに沿うものを抽出するというのは大変な作業だったに違いない。 想像するに、やはり本を書くからには構成というものがあり、第1章では何々を、第2章ではこれこれをという構想があったに違いない。その構想に合わせて、秋月さんの漫画を、ああでもないこうでもないと組み合わせる先生の姿が目に浮かぶのだが、どうだろうか。「最近あの先生、昼真っから漫画ばっかり読んでるわね」と変な噂が立っていなければいいのだが。意外に秋月さんの漫画を読んでいて、突然閃いて出来た本なのかもしれない。そうそう、先入観を持たずに色々な角度から考えることが、クリティカル・シンカーへの第一歩なのである。 本書を読む前に、『MBAクリティカル・シンキング』(ダイヤモンド社)や『ロジカル・シンキング』(照屋華子・岡田恵子著、東洋経済新報社)といった本を読んでいた私であるが、これらの本がビジネスシーンを意識してかかれたものに対して、本書は主に大学生やOL、新入社員などを対象に書かれたのではないかという印象を持った。『MBAクリティカル・シンキング』の目次をパラパラと見返してみると、本書に出てくる「スキーマ」や「因果関係」といった用語がでてくるのだが、まったく記憶に無い。一方本書は、漫画を多用しているせいもあるかもしれないが、「クリシン」について何の予備知識も無い人に対して、懇切丁寧に「クリシン」を語ろうというスタンスを感じる。「スキーマ」や「因果関係」といった用語もわかりやすく解説してあり、「クリシン」入門書には最適の本であろう。 せっかく頭に入ってきた「クリシン」なので、備忘の為に簡単な用語解説を。
△0301 『始祖鳥記』 >飯島和一/小学館文庫/2004.07.21 背表紙あらすじ:空前の災厄続きに、人身が絶望に打ちひしがれた暗黒の江戸天明期、大空を飛ぶことに己のすべてを賭けた男がいた。その”鳥人”幸吉の生きざまに人々は奮い立ち、腐りきった公儀の悪性に毅然と立ち向かった。ただ自らを貫くために空を飛び、飛ぶために生きた稀代の天才の一生を、綿密な考証をもとに鮮烈に描いた、これまた稀代の歴史長編である。数多くの新聞・雑誌で紹介され、最大級の評価と賛辞を集めた傑作中の傑作の文庫化。全日本人必読! 北上次郎氏解説。 最大級の誉め言葉で始まるあらすじを背負った小説だが、なんとなく馴染めなかった作品である。もともと「このミス」で紹介されていた頃から、気にはなっており、文庫化の際に早速購入したもの。しかし、ページをめくったとたん、「ふりがな」の応酬でで少し読む気が失せてしまう。当時の雰囲気を出そうとしてなのか、例えば刺股(さすまた)、袖絡(そでがらみ)、打込(うちこみ)、突棒(つくぼう)といった単語が並んでいたりするのである。さらには、これらの時代がかった単語や修飾語が至るところにちりばめられ、背景の描写がやたらと長いのも読みづらく感じた一因である。 さて、物語の方はまずまずであった。最初は、とにかく空を飛ぶことだけを考えつづけてきた男の話かと思いきや、空を飛んだことによって罰せられたり、その後船乗りの見習の様になったり、江戸で入れ歯やを始めたりとなかなか波乱万丈の男の話である。個人的には、幸吉自身よりも、第二部で登場する巴屋伊兵衛に興味を持った。公儀の悪性によって大打撃を被った塩業者を救うべく立ちあがる商人の物語である。直接的に幸吉と交わるわけではないが、幸吉の生き様に感銘を受け、自らも頑張ろうとする姿など、なかなか凝った構成になっている。 その伊兵衛であるが、公儀の規制の隙間を塗って逞しく商売を進めようとする様に、現在の「元気な」日本企業を重ねて見てしまった。景気回復といわれながらも、結局元気なのは、政府の保護を受けずに独自で世界企業を相手にしてきたトヨタ自動車をはじめとする企業群である。公的な保護というのも最低限は必要だろうが、過保護では企業の根底を腐らせてしまういうことを改めて感じた作品。特に第二部は冒険小説というよりも、ビジネス書的な感覚で読み進めた。 また、第三部で幸吉が入れ歯屋を始めるあたりも面白い。どんな窮地に陥ろうと手に職を持っていれば何とかなるということ。これも現在のビジネス環境に通じるものがあると感じた。幸吉は今で言うならば「プロの職人」といったところだろうか。前半が少しだらだらとしてしまうところが難点ではあるが、ラストに向けては勢いが出てきて結構楽しめた。『パンク侍、斬られて候』に続いて、妙な時代小説を読んだ気分である。
苗村屋読書日記 [61]
![]() |