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◎0310 『呪縛…金融腐食列島II』 高杉良
◎0309 『OUT』 桐野夏生
△0308 『上に立つ人の24時間管理術』 野村正樹
△0307 『取締役になれる人 部課長で終わる人』 上之郷利昭
△0306 『仕事の道具箱』 中島孝志


◎0310 『呪縛…金融腐食列島II』 >高杉良/角川文庫/2000.12.03・2004.08.08

 背表紙あらすじ:思いもかけなかった検察による大手都銀への強制捜査。朝日中央銀行企画部次長の北野浩は崩壊の危機に直面し、志を同じくする役員、上司、同期のMOF(大蔵省)担らと共に銀行の健全化のために立ち上がる。派閥問題をめぐる上層部の葛藤、外部勢力の圧力、マスコミによる糾弾が続くなか、北野たちは闇社会や組織の呪縛と闘っていく。新執行部のもとで頭取秘書役に抜擢された北野は、行内の軋轢と外圧にさらなる闘いを挑む。ビジネスマン誰もが感じる大組織の閉塞感からいかにして脱却していくかを、一人の管理職の生き方を通して活写する問題作。

 本書は何気なく見た映画がきっかけで手に取った作品。それまでにも高杉作品は何作か読んでいたが、映画の方は高杉が原作とは知らずに見て、非常に面白く感じた。早速、原作を読んで見ようと手に取ったのが、前作の『金融腐食列島』だったというエピソードは既に書いた通り。結局、『呪縛』の方は文庫化を待って読了。

 前回は映画のストーリーと比べながらの読書だったせいか、本より映画の方が上だなと感じたが、今回、再読してみて改めて名作だと感じ入った。存亡の危機に面して、何とか銀行を良くしようというミドルたちの意気込みに感動を覚えたのである。また、責任を感じて逝ってしまった久山相談役の自殺のシーンを始め、多くの場面で涙を誘われた。

 中でも一番感動的だったのが、石井企画部副部長が、頭取就任を受けるべきか迷っている中山常務に対して放ったセリフである。少し長いが抜粋してみたい。「僭越とは思いますが、ひとこと申し述べさせていただきます。強制捜査以来、ACBのゆくすえについて、わたしたちなりに懸命に考えてきました。ここにいる四人だけではなく、心あるACBマンは明けても暮れても、ACBの再生を信じて闘わなければならない、と心に誓ったはずです。わたしたち四人は、中山常務にリーダーになっていただけなければ、ACBを去ります。なぜならば、それなくしてACBの再生は期し難いと思うからです。以上です」

 中澤専務のセリフも良い。長くなるので全ては抜粋しないが「若い人たちにACBマンとしての誇りを取り戻してもらうためにも、われわれは去るべきなんです」と代表取締役の総辞職を早い段階で主張していた人物である。彼の言葉を聞いていた北野が涙をこぼしそうになるシーンを読んでいて、自分自身の経験を思い出した。先日、会社の現状に対して危機感を抱いている役員の方が、会社を変革させるためには、このような具体的施策が必要だと、熱く語っておられるのを聞いて、我が社も捨てたもんじゃないと涙が出そうになったのである。

 以前読んだときと比べると、自分自身が、部長や役員の話を少しではあるがダイレクトに聞ける立場になり、会社に対する危機感を強く持つようになったからかもしれないが、ずっしりと重い手応えの作品だと感じた。また、いろいろと考えさせられることの多い作品でもあった。

 小説の中の小技として気に入っているのは、主人公・北野の緊張すると耳たぶを引っ張るという癖。岳父である佐々木との直接対決の場面や、頭取など幹部連中を前にして自説をぶつときなど、激しく耳たぶを引っ張っている。この「癖」によって、主人公の緊張具合が分かり、読み手としても何となく緊張してくるのである。時には真似をして、自分の耳たぶを引っ張って見たりして。また、副頭取に就任した陣内に、その癖はみっともないからやめた方がいい、と言われるあたりも面白い。その後、耳たぶに手が行きそうになるのを、じっとこらえている北野の描写も、緊張感漂うものであった。

 さて、本書は言うまでもなく旧第一勧業銀行の総会屋に対する利益供与事件をもとに描かれたフィクションである。綿密な取材に基づく迫力は、高杉良の真骨頂と言えるだろう。企業の危機に際して立ち上がった「四人組」が実在したというのは、何だか心強い。特に石井副部長(のちに部長)は、主人公の北野以上に魅力的に描かれている。普段は寡黙な人物なのだが、いざという時の行動力は水際立っており、北野をして、「石井は凄い人だ、修羅場で輝く人に相違ない」と言わしめている。自分は修羅場に耐えられる人間だろうか、いざという時にきちんと決断し、行動できるだろうかと、思わず自問自答してしまった。少し景気が上向きになってきたとはいえ、日本はまだまだ修羅場である。結局は平時の積み重ねでしかないのだろうが、やはり有事に強くありたいと思うのである。

>2004.08.08.SUN


◎0309 『OUT』 >桐野夏生/講談社/1999.02.02・2004.08.13

 背表紙あらすじ:深夜の弁当工場で働く主婦たちは、それぞれの胸の内に得体の知れない不安と失望を抱えていた。「こんな暮らしから脱け出したい」そう心中で叫ぶ彼女たちの生活を外へと導いたのは、思いもよらぬ事件だった。なぜ彼女たちは、パート仲間が殺した夫の死体をバラバラにして捨てたのか?犯罪小説の到達点。’98年日本推理作家協会賞受賞。

 本書は初読の際に強烈なインパクトを受けて、いつか再読せねばと義務感のように思い続けてきた作品である。文庫化されて久しいが、私が所有しているのは単行本で、通勤時に持ち歩くのはちょっと、と思ってトイレ本になってしまっていた。(桐野さん、ごめんなさい) 引越し前から断続的に読み進めていたので、約4ヶ月。私としては遅読最長記録である。そういえば、今日は13日の金曜日。更にお盆。迷信を信じるわけではないが、妙な因果関係を感じる。

 前半の死体をバラバラにするシーンの印象の方が強くて、後半どのような展開になるか、すっかり失念したいた私。今回も大いに楽しめた。むしろ、前半の派手なシーンにしか目が行っていなかった前回に比べて、後半の雅子と佐竹の陰鬱な闘いを、ねっとりと楽しむことが出来たかもしれない。

 舞台を深夜のコンビニ弁当工場に設定したこと、普通の主婦が徐々に狂気に犯されていく様を描写したこと、ローン地獄の恐ろしさを強調したことなど、時代背景とマッチしており、社会派小説としても楽しめるであろう。また、これらの時代を反映した設定も、通常であれば5年前の作品であるから色あせて当然なのだが、未だに新しさを感じるということは、桐野夏生が取り上げたテーマが、それだけ根深く残っているということに他ならない。

 原田美枝子主演で映画化もされたようだが、そちらは観ていない。佐竹役が間寛平というのは、はまり役のような、かなり違うような・・・。寛平ちゃんを観る為だけに、ビデオを借りてきてもいいかなぁ。

 桐野夏生は本作品で、完全に一皮向けたのだであろう。その後の『柔らかな頬』『グロテスク』等、犯罪と狂気を織り交ぜた心理小説という独特の作風につながっていると思う。どの作品も、心理描写を書き込みすぎるため、長めになりすぎるのが玉に瑕かもしれないが、この心理描写こそ桐野夏生の真骨頂であり・・・、一気に読ませる小説というのは難しいものである。

>2004.08.13.FRI


△0308 『上に立つ人の24時間管理術』 >野村正樹/すばる舎/2004.08.12

 私の読書欲にはムラがあり、ビジネス書が無性に読みたくなるときや短編小説が読みたくなるときが、突然やってくる。普段は長編ミステリー中心なのだが、ビジネス書に飢える時期というのがどうやら存在するらしい。最近のビジネス書評はそんな私のムラを反映した結果である。

 さて、本書について。帯には「5つの時間を操れ!」とあるのだが、ここでいう5つの時間とは(1)自分の仕事時間、(2)部下の時間、(3)組織全体の時間、(4)仕事以外の時間、(5)家族との時間、である。今まで、自分の仕事時間の効率化について書かれた本は沢山見てきたが、部下の時間や組織全体の時間に触れたものは少なかった様に思う。そういった意味では、新しい視点の本と言えるであろう。

 自分の時間については他のビジネス書でも語られていることなので割愛し、まずは部下の時間管理について抜粋したい。

  • 部下に対しては「ホウレンソウ」を期待するのではなく、自分から声をかけて進捗を確認する。声のかけ方は部下の能力に合わせること。ある程度任せてよい部下にあまり細かく声をかけると、鬱陶しがられるし、新人を放ったらかしでもまずい。
  • 進捗状況に応じて、具体的な問いかけを投げて見るのも一案。例えば10枚綴りのパワーポイントの作成を依頼した場合、4枚目のグラフはうまく描けそうかと聞いてみる。すると、既に進んでいる部下なら、グラフの色はこれでいいかだとか、文字はもう少し大きくした方がいいかだとか聞いてくるであろう。一方、まだ1枚目でてこずっているようであれば、その時点でSOSが得られるであろう。
  • 仕事の与え方にも気をつけること。能力に見合った質・量の仕事を与えないと、ある部下は暇になり、ある部下は猛烈に忙しいという偏りが生じてしまう。
  • 権限委譲もスピードアップの一手段。但し、イイトコ取りでは、部下に責任を押し付けるだけになってしまう。仕事の醍醐味や面白さも委譲すること。
 次に組織全体の時間管理について。
  • マニュアル作りは効率化の第一歩。まず、実務を共有化し、時間のある人が忙しい業務に集中できるようになる。次に、マニュアル化によって無駄な仕事や非効率な仕事が見えてくる。これを、最初は上司が指摘することによって修正させ、やがては自発的に改善できるようになれば組織は一層効率化する。
  • 残業防止のためには、上司が率先して早く帰ることも大切。上司よりも先には帰りづらい、早く帰ってしまうと不真面目だと思われるのではないかといったような悪循環は、上司自らが断ち切ること。
  • メールや電話のスキルアップも時間の効率化につながる。メールや電話でのコミュニケーションはは、(1)正確に、(2)的確に、(3)簡潔に、(4)平易に、行うこと。
  • 朝型、つまり早朝出社を奨励する。但し、せっかく早く出てきている部下に、あれこれ質問して、部下の貴重な時間を奪わないこと。お互い最も集中できる時間なので、有効に活用すること。
 これらの時間管理のほかに、自分の時間や家族の時間について触れているのも本書の特徴であろう。一流のビジネスマンたるには、趣味の時間も持つべきであるし、また家族との時間も大切にすべきとのこと。趣味や家族との語らいが気分をリフレッシュさせ、明日への活力になるという。

 筆者はここで「黄金分割」なる原則を提言している。これは、5/8は仕事に充てて、それ以外を趣味や家族との時間に充てるべきというもの。通勤時間を入れて1日10時間働いたとして、睡眠時間以外の16時間のうち、5/8が仕事である。また、週休2日、有給20日で、一年の3/8を休むことになるそうである。このように、仕事とそれ以外の比率が、5:3くらいが一番バランスがとれているそうで、どちらかに傾くとあまり良くないというのが筆者の持論である。

 最後にひとつ。人間は地位によって考える期間が長くなる。平社員が1日1日のことを考えているとすれば、課長は1ヶ月、部長は1年、社長は5年、50年というように。一方で、いくら地位が上がっても、5分、10分といった細切れ時間を大切にすることも忘れてはならない。ドッグ・イヤーと呼ばれ、目まぐるしく時間が流れていく現代こそ、時間の大切さを噛み締めていかなければならないのであろう。

>2004.08.12.THU


△0307 『取締役になれる人 部課長で終わる人』 >上之郷利昭/リュウ・ブックス・アステ新書/2004.08.10

 先日、妻が友人から借りてきた『取締役・島耕作』を6巻まで読了。課長から始まり、部長、取締役とどんどん偉くなっていくのだが、弘兼憲史氏が島耕作をできるだけ現場に近いところで活躍させようとしている意図を強く感じる。「部長」の連載時には、世の中全体が不景気であったせいもあり、ワイン業界や音楽業界の子会社への出向を命じられる。不景気の中、最前線で奮闘する島を描いているのだが、家電メーカーの初芝でワインだの音楽だのというのは、ちょっと無理があると感じてあまり面白くなかった。さらに偉くなってどうするのだろうか、と疑問に思っていたところ、「中国」という切り札を持ってきた。このあたり、弘兼氏の目の付け所はなかなか鋭いと思う。

 弘兼氏自身が以前書いていたことだが、日本の取締役の実態を描こうとすると、毎日会議会議でお話にならないとのこと。そんな中、中国という最も将来性のある国で、リーダーシップを発揮する島をうまく描いている。中国マフィアや乱交パーティが出て来たりするのはどうかと思うが、連載漫画としては何か事件を起こしておかないと読者が離れていってしまうのだろう。そういえば、漫画雑誌の『モーニング』を立ち読みしている時には面白く感じたストーリー展開も、纏めて読むと無理を感じる。次週に引っ張ろうとしすぎて構成に綻びが生じているのかもしれない。

 さて、前置きが長くなってしまったが、本書は『取締役・島耕作』を読み終えた直後に本屋で見つけて、ついつい買ってしまったもの。こういうタイトルの本を読むのは出世の亡者みたいで嫌なのだが、まえがきを読んで買う気になった。出世というのはより大きな仕事をするための手段であるというようなことが書いてあったのである。確かにその通りであり、出世そのものを目的にしてしまうと、上ばかり見るような嫌な人物になってしまうだろうが、大きな仕事をするため、会社をよくするためという目的意識を持って臨めば、心構えが変わってくるように思う。

 本の内容については、様々な経営者の言葉を抜粋した部分が多く、経営書の寄せ集めの様に感じてしまった。アサヒビールの樋口廣太郎、オリックスの宮内義彦、京セラの稲盛和夫など、私自身が既に読んでいる本が多かった為、さほど目新しさは感じなかった。先日読了した『仕事の道具箱』に続いて、寄せ集めてきな本だったので少しがっかりしたのだが、実績のある経営者の自伝や経営書を余り読んだ事のない人には適当な入門書といえるかもしれない。

 では、気になったところだけ抜粋しておきたい。(以前はビジネス書の一字一句を丸写ししていたのだが、最近は要点のみを箇条書きにするようになった。転記するのが面倒なのもあるが、咀嚼して自分自身の言葉に置き換えた方がよいと思った為。これにより微妙にニュアンスが変わっている可能性もあるので、気になる方は実際に呼んで見ることをお薦めします)

  • 30代はどんどん自分に投資をする時期。専門性や英語力などをこの時期にしっかりと強化しておくべきである。
  • 30代では仕事も猛烈にこなすべき。机の上の勉強では学べないビジネスの要素を身に付けるにはOJTしかない。
  • 総務など裏方の地味な仕事も組織にとっては大切。経営者はこのような地味な仕事を黙々と続けてくれている人の価値をしっかりと理解し、評価しなければならない。(劉邦が兵站を担当した蕭何を最大の功労者と評したエピソードより)

  • 悪い上司にあたったからといって、全てを上司のせいにしてはいけない。自分自身にも非があるのではないかと、一度冷静に考えて見ること。また、上司一人を説得できないで多くの部下を率いることは出来ないと頭を切り替え、上司をうまく使うことも必要。
  • 上司が責任を取るとなると、非常によく仕事の出来る人がいるが、その人に取締役が務まるかどうかは別。真価が問われるのは自分が責任を取る立場になったとき。何かを聞かれて「それは○○部の仕事です」という答えを出すような人物には責任回避型が多く、リーダーとしての仕事はできない。
  • 帝人会長・安居祥策が考えるリーダーの条件:大きな方向性が出せること、決断して実行する力、健康、明るい性格、語学力
  • 日産社長・カルロス・ゴーンが考えるリーダーの条件:戦略マインドを持つこと、業績主義、透明性

  • 「どんな方針で部下を使い、働かせようと思っているのか」という問いに対し「率先垂範で頑張ります。まずは自分がやって見せます」というのは管理職失格。部下というものは自分以上の能力を持っているかもしれない。それを引き出すのが管理職の役目。自分でやってしまうと、部下は自分と同じレベルに留まってしまい、自分を越えることはない。
  • 企業が利益を出すこと=税金を払って国に貢献することにもつながる。利益最優先というと、貪欲すぎるイメージがあるが、利益は大切である。
  • たとえ左遷されてもきちんと仕事をこなすこと。不貞腐れていては戻れるものも戻れなくなってしまう。また左遷先は暇なことが多いから、この時期に勉強するのも一案。
>2004.08.10.TUE


△0306 『仕事の道具箱』 >中島孝志/青春出版社/2004.08.08

 以前にも書いたかもしれないが、仕事を進めるためには(1)実務能力、(2)基礎知識、(3)仕事の進め方等のノウハウ、の3つが必要だと思っている。例えば経理部に所属している私にとってシステムへの伝票の入力の仕方や、上司への提出書類の作り方などが(1)に相当する。簿記の知識や会計知識は(2)に、そして仕事の進捗管理や上司への報告方法などが(3)にあたる。このうち(2)はどこへ行っても通用するが、常にアップデートしておかなければならない種類の「知識」である。(1)は残念ながら、今いる会社さらには所属している部署でしか通用しない。しかし、(1)を究めていくと、各仕事との共通項が見つかり、それは(3)へと発展していく。

 新入社員は、まず(1)の実務を習得しなければならない。とにかく新人の頃は意味もわからず伝票を打たされたり、表を作らされたりするものである。ついた上司が出来た人であれば、その仕事の意味や目的を教えてくれたり、必要な予備知識を教えてくれたりするのだが、昔風にスパルタだったり、今風に面倒臭がったりで、なかなかそこまでは教えてくれない。しかし、やらされている仕事を漫然とこなすか、意味や目的を考えつつ、必要な知識も習得していくかでは、仕事に対する意欲や今後の成長度が大きく異なってくると思う。

 (2)の基礎知識も重要なのだが、これも使い方を誤るとおかしな方向に行ってしまう。まったく基礎知識がないのも困りものだが、変に知りすぎていて頭でっかちになり、融通が利かなかったりすると、せっかくの知識も宝の持ち腐れである。また、せっかくの知識を仕事に活かしきれず、単なるお勉強好きで終わっている人も多い様に思う。せっかく得た知識は、実務に活かしてこそであり、もちろん仕事と直接関係ないことを勉強するのも重要なのだが、きちんと意識している人は、一見無関係に見える勉強をしっかりと仕事に活かしているものである。

 意外に盲点なのが(3)のノウハウである。(1)や(2)を教えてくれる先輩は沢山いるが、(3)については、なんとなくOJTで学ぶもの、あるいは盗むものという不文律があるように感じる。だからこそ、本屋のビジネスコーナーには、仕事の進め方、部下の育て方といったノウハウ本が並んでいるのであろう。こういったノウハウは非常に重要な反面、本で読んだだけで会得できるものでもなく、実際のビジネスシーンで自分流にアレンジしながら体得していくべきものであろう。

 などと偉そうなことを書きながら、自分の仕事の進め方に不安を抱いている私なのだが、その証拠に『仕事の道具箱』というタイトルに惹かれて購入してしまったのが本書である。本書では仕事上のノウハウを10のカテゴリーに分け、「道具箱」と称している。「道具箱」の中には当然の事ながら、「道具」が入っており、「道具=ノウハウ」なのである。既に確立された手法などを、カテゴライズしただけのようにも感じるが、いつでも適切な手法を取り出せるように整理した点は評価したい。

■段取りの道具箱

  • 与えられた仕事の「全体」を見ながら、重要度、緊急度によって優先順位を決めること。重要なものから取りかかること。
  • パレートの法則:仕事の20%の部分が、全体の80%の成果を生む。
  • 戦略思考:(1)何をやるか、(2)何をやらないか、(3)なぜやるのか、(4)なぜやらないか、(5)自分の資源をどう選択しどこに集中するか。
  • 課題分割法:牛1頭を食べて見ろといわれたらどうするか→ステーキにして1日3枚ずつに分けて食べる。MBAでよく問われる問題。大きな課題は分解して解決せよという教訓。
■時間の道具箱
  • 10分間の細切れ時間を有効活用する。雑務、勉強(暗記)、スケジューリング、電話の折り返し、書類整理など。
  • とにかくすぐに着手する。早めに着手すれば、途中で問題が発生しても対応できるが、締め切り間際では気持ちばかりが焦って、良い仕事が出来ない。「気分が乗らないから」と先送りせず、すぐに始めるべし。
  • 朝型人間へのシフト。特に朝7時はもっとも脳が活性化する時。
■情報の道具箱
  • メモの活用:(1)記憶の代行、(2)発想・着想を逃がさない、(3)構想を練る、(4)発想を敷衍する、(5)発想を纏める、(6)発想を爆発させる。
  • 本の活用:引用部分をパソコンに保管。サイドバリュー(本から浮かんだ自分の考え)をどんどんメモする。
  • ヘッドラインチェック法:新聞の見出し、本の目次などヘッドラインを眺めているだけでも、情報を入手できる。気になった部分は本分を読む。
 この他にもアイデアの道具箱、問題発見の道具箱などがならんでいるのだが、あまり目新しいものはなかった。最後に「6つの質問力」を紹介して終わりたい。
  1. 論理的な質問:なぜそうなるのか?
  2. 分析的な質問:これからどうするか?
  3. 多角的な質問:他に何かないか?
  4. 建設的な質問:どうすれば可能になるか?
  5. 破壊的な質問:本当にこれでいいのか?
  6. 懐疑的な質問:何かおかしくないか?
>2004.08.08.SUN

苗村屋読書日記 [62]

     



































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