[PR]看護師の好条件求人なら:5万人の看護師が利用する転職サイト!


     
○0320 『片想い』 東野圭吾
△0319 『シェエラザード』 浅田次郎
△0318 『だめだこりゃ』 いかりや長介
△0317 『遺作集・花見川のハック』 稲見一良
△0316 『催眠…Hypnosis』 松岡圭祐


○0320 『片想い』 >東野圭吾/文春文庫/2004.09.03

 背表紙あらすじ:十年ぶりに再会した美月は、男の姿をしていた。彼女から、殺人を告白された哲朗は、美月の親友である妻とともに、彼女をかくまうが…。十年という歳月は、かつての仲間たちを、そして自分を、変えてしまったのだろうか。過ぎ去った青春の日々を裏切るまいとする仲間たちを描いた、傑作長篇ミステリー。

 何度かホームページでも書いているが、私は大学時代ボート部に所属していた。当時は、文字通り「同じ釜の飯」を汚い合宿所で食べた仲間たちだが、卒業して10年も経つと、なかなか会う機会が少なくなってしまう。会う機会が少ないと話す話題も少なくなり、ますます疎遠になっていく…。ちょっと寂しい気もするが、たまに会っても当時のことを懐かしく話し合えるのは、それだけ濃密な時間が流れていたからであろう。

 本書は、アメフトに燃えた仲間たちが、同窓会で集まるシーンから始まる。最後の試合での痛恨のミスの話が何気なく交わされているのだが、これが後々の伏線になるあたり、東野作品らしく最初から気が抜けない。中盤までは前述のように自分の学生時代など思い出しながら読み進めており、少しインパクトが弱いかな、などと思っていたのだが、徐々に引き込まれ、ラストは一気に読まされてしまった。

 大学時代のスポーツ仲間を題材にしたストーリーということで、ボート部のOB・OGの物語である『愛という名のもとに』を思い出したりもした。鈴木保奈美・唐沢寿明・江口洋介といういかにもな配役で、映画『セントエルモスファイアー』のパクリだという噂もあったドラマだが、私がボート部に入部した冬に放映されたこともあり、毎週かかさず見ていたのを思い出す。ドラマ自体はあまり面白くなかったが、翌年の新人勧誘のネタとして大いに利用させてもらった。そういえば唐沢寿明と江口洋介といえば『白い巨塔』でも共演しているが、当時と比べると随分うまくなったのではないだろうか。

 さて、本書の方は「性同一障害」に悩むアメフト部のマネージャーであった美月を中心に展開する。彼女を取り巻く様々な謎を追っているうちに、主人公の哲朗は思いがけない事実に出くわすというストーリー。あまり馴染みのなかった「性同一障害」という症状を、単にミステリーのネタとして扱うのではなく、作者なりにしっかりと本質を見据えて書き込んでおり、重厚な作品に仕上がっている。ちなみに、性同一障害とは身体と脳=精神の性の不一致(gender identity disorder)によって起こるものであり、ホモセクシュアルやレズビアンといった同性愛とは異なるものである。医学的には「形態的には完全に正常で、自分の肉体がどちらの性に所属しているかをはっきり認知している一方、人格的には自分が別の性に所属していると確信している状態」と定義されている。

 しかし、解説を読むと、もともと「性同一障害」をテーマにしたかったのではなく、青春の残像を残した30代半ばの男女の物語が書きたかったとのこと。ラスト近くの中尾の言葉が、作者の思いをよく表しているのではないだろうか。

 「あの頃は楽しかったよな。どうして人間ってのは変わってしまうのかねえ。しかも悪いほうにさ。成功すれば傲慢になり、失敗すれば卑屈になる。俺は昔、こんな大人になりたかったわけじゃない」 ふと考えると、つまらないことでクヨクヨ悩んでいることが多い。そんな時は、こんな小さなことでクヨクヨ悩むような大人になりたかったんじゃない、と自分を励ませばいいのだろうか。

>2004.09.03.FRI


△0319 『シェエラザード』 >浅田次郎/講談社文庫/2004.08.28

 背表紙あらすじ:【上巻】昭和20年、嵐の台湾沖で、2300人の命と膨大な量の金塊を積んだまま沈んだ弥勒丸(みろくまる)。その引き揚げ話を持ち込まれた者たちが、次々と不審な死を遂げていく――。いったいこの船の本当の正体は何なのか。それを追求するために喪われた恋人たちの、過去を辿る冒険が始まった。日本人の尊厳を問う感動巨編。 【下巻】弥勒丸引き揚げ話をめぐって船の調査を開始した、かつての恋人たち。謎の老人は50余年の沈黙を破り、悲劇の真相を語り始めた。私たち日本人が戦後の平和と繁栄のうちに葬り去った真実が、次第に明るみに出る。美しく、物悲しい「シェエラザード」の調べとともに蘇る、戦後半世紀にわたる大叙事詩、最高潮へ。

 古本屋で購入してきて、しばらく積読状態だった本書。先日、終戦記念日を強く意識したばかりだが、ふと手に取ったのは偶然だろうか。戦時中の物語とは思わずに、何気なく手にしただけに、感慨深いものがあった。

 さて、本書は浅田色の濃い、落涙小説である。最初に欠点を書いてしまうと、「泣かせよう」という作者の意図が見え見えなのが気に入らない。また、律子と土屋少佐の出会いなど、偶然の要素が強すぎるのも駄目。偶然については、作者も随分気にしている様子で、神の導きだの、運命の必然だのと言っているのだが、いくら気にしてもご都合主義的な要素は否めない。さらには元自衛隊のヤクザが登場するという構図も、ワンパターンのような気がする。

 しかし、である。これらのマイナス要素を差し引いても充分に楽しめたのが本書。特に後半の宋英明の正体が明らかになるあたりは、ページを繰る手ももどかしいほどであった。結局、第一印象は△で、中盤からラストにかけては○。しかし、最後の最後で結論が曖昧になったような気がしたので、総合点は△とさせていただいた。

 本書の面白いところは、現在と過去のシンクロであろう。なぜ弥勒丸は沈められたのかという謎を、現在と過去の両面から追っており、知りたいという読者の意識をうまくくすぐっている。また、日本船舶振興会の笹川良一(小笠原)や伊藤忠の瀬島龍三(篠田郁麿)を思わせる人物が登場するのも面白い。これらの登場人物については、多少の予備知識があった方が楽しめるであろう。ちなみに瀬島氏は山崎豊子の『不毛地帯』の主人公・壱岐正のモデルとも言われている。

 船と戦争といえば福井晴敏の『亡国のイージス』『終戦のローレライ』を思い出すが、福井とは全く別のアプローチである。ただ一つ、弥勒丸の2千人の民間人たちが「人間の楯」だという表現が印象的であった。「亡国の楯」とイメージが重なり、戦争の矛盾をより強く感じた。

 さて、気になる宋英明の正体だが、いつもネタバレなので、今回も少しだけ触れておこう。ヒントは☆三度乗艦を沈められて三度生還した人間。彼もまた、カネの為ではなく、死んでいった仲間の為に一生を捧げた哀しき人物である。

>2004.09.01.WED


△0318 『だめだこりゃ』 >いかりや長介/新潮文庫/2004.08.28

 背表紙あらすじ:音楽は四流、笑いは素人。でも、それがドリフターズだった。東京の下町に生まれ、米軍キャンプやジャズ喫茶でのバンドマン生活を経て、ドリフターズに加わったいきさつ。最長不倒のお化け番組「全員集合」の陰でネタ作りに追われた日々と、メンバーの知られざる素顔。そして、俳優に転進してから「踊る大捜査線」の大ヒットまで。豪快半生と秘話の数々を綴る、いかりや長介自伝。

 いつもはあまり気にしない、作者の略歴の部分。「いかりや長介 ikariya chosuke 1931−2004」の「2004」についつい眼が行ってしまう。そう、いかりやさんが逝去されたのは2004年3月のこと。体調が悪いという噂は耳にしていたが、なんだか突然のような気がした。つい最近、『踊る大走査線2』で元気な姿を見ていただけに、余計に感慨深かった。映画というのは、撮影から上映されるまでにタイムラグがあるので、まだまだ元気だと思ってしまったのだろうか。享年72歳。改めてご冥福をお祈りしたい。

 『8時だョ!全員集合』といえば、16年間続き、時には50%を超える視聴率を記録したお化け番組。私もご多分に漏れず、子供のころの土曜日はテレビの前に釘付けであった。昼間は、関西系のお笑い番組を見つつ、夜にはドリフも楽しむという贅沢な環境。後半には『オレたちひょうきん族』が裏番組として台頭してきたが、私は浮気もせず、ずっとドリフにこだわり続けていた。おかげで、友人との会話に困ることもあったのだが、なんとなく『ひょうきん族』を見ると、ドリフに申し訳ないと思っていたのである。

 私が見始めた頃は、すでに志村けんが活躍し始めていて、荒井注をリアルタイムで見たことはなかった。しかし、志村と仲本がノミ屋から馬券を買ったため謹慎していた1ヶ月の間、いかりや、加藤茶、高木ブーの3人で乗り切ったというのは、印象深く覚えている。今、このエピソードを聞くと、なんだ競馬法違反かという程度だが、当時はもっと悪いことをして刑務所に入っているとまで思っていた。また、謹慎期間も半年くらいあったように記憶しているのだが、子供のころの記憶というのはこんな程度なのだろうか。

 さて、一視聴者として楽しむだけの『8時だョ』であったが、こうして裏話を読んでみると、当事者がいかに大変だったかがよく分かる。何度か同じシチュエーションのネタを繰り返したとはいえ、少しずつアレンジを加えているし、全く同じセリフをしゃべる舞台とは大きく違う苦労があっただろう。16年間、全て観客を前にした公開生放送。週1回とはいえ、これを16年間続けるというのは容易ではない。むしろ、公開生放送で、観客の反応を目にしながらだったから続いたのかもしれないが、リーダーいかりやの苦労は想像を絶するものであっただろう。

 松本人志の『「松本」の「遺書」』を読んだときにも同じような感想を抱いたのだが、笑わす側の人間の真摯さ、真剣さというのは、成果物が「お笑い」だけになかなか意識しづらいが、彼らは本当に「笑い」を重要視している。いかに「笑わす」かを寝ても覚めても考え続ける苦労というのは計り知れない。

 晩年は役者としても活躍されたいかりやさん。本書では駆け出しの役者と随分謙遜されていたが、いわば舞台俳優を16年間続けてきたようなもの。恐らく他の人には出せない味を、現場でも放っていたのではなかろうか。『踊る』はまだまだシリーズ化されそうな勢いだが、もう「和久さん」が見られないというのは、ちょっと寂しい…。

>2004.08.30.MON


△0317 『遺作集・花見川のハック』 >稲見一良/角川文庫/2002.04.23

 背表紙あらすじ:俺はもうまもなく死ぬだろう… ガン宣告を受けてからの覚悟の十年、残された日時に刻みつけるように小説を書いた作家・稲見一良。男らしいやさしさを追い求め、花見川の自然を呼吸し、ときに少年の憧憬さえ甦る。本作品集は、腹水がたまり、半身になりながら、虫の息で、原稿用紙に鉛筆をなぜるように書いた遺作の数々である。死を目前にして、透徹したまなざしで、人生を見つめた珠玉の物語。人は、こうやって生き、こうやって死ぬ…。

 あらすじ、というよりも解説通り「遺作集」である。ガンに犯され混濁した頭で書いた作品であることから、正直、物語性は少ない。中には筆者らしからぬ突飛な作品も混じっているのだが、これはむしろ童心に戻った証左と言えるかもしれない。

 死の床につきながらも、「男らしさ」を追求し続けた筆者。他の作品では「男らしさ」をモチーフにしながらも、それを表に出し過ぎるのは格好悪いと、寡黙なハードボイルドを書きつづけてきた筆者だが、ここへ来て「男らしさ全開」のように感じた。不謹慎な例えで恐縮だだが、蕎麦を食べる時につゆにどっぷりと浸すのは野暮だと思っている江戸っ子が、死ぬ前に一度たっぷりとつゆを付けて蕎麦を食べてみたいと言うように、思いっきり男臭いドラマを書いて見たかったのかもしれない。

 ミステリーとは呼べないような物語で、何度も「このミス」にランキングされている筆者の作品群。良質の作品は誰が読んでも面白いからこそであろう。ハードボイルドには抵抗を感じる私であるが、筆者の作品にはすんなりと入っていける。もう少し、物語を紡いで欲しかったと思うのは私だけでないであろう。

>2004.08.28.SAT


△0316 『催眠…Hypnosis』 >松岡圭祐/小学館文庫/2002.01.06

 背表紙あらすじ:ある嵐の晩、ニセ催眠術師・実相寺則之の前に突然現れた色白の女。稲光が走り雷鳴がとどろく中、突如女は異様にかん高い声で笑いだし、自分は宇宙人だと叫び始めた…。肝を潰す実相寺の前で、その女が見せた異常な能力とは? そして女の前に現れた東京カウンセリング心理センターの催眠療法科長・嵯峨敏也が見ぬいた女の能力の秘密とは? 複雑な精神病理と医療カウンセリングの世界を一級の娯楽作品に仕立て、ミステリー界の祥さんを集めながら一気に映画化まで上り詰めた奇跡のデビュー作、堂々の文庫化!

 なぜか一時期はまってしまい、『千里眼』をあわせてシリーズ作品を一気に読んでしまった。巻数を重ねるにつれ、設定頼みになっていき、だんだん魅力を失っていったのは残念だが、本書のファースト・インプレッションは強烈だった。もともと、こういった特殊能力が出てくるような作品が好きなこともあり、当時は非常に面白く感じたのだが、よくよく振り返って考えると、あまり後に残るものはない。まぁ、時間つぶし的なエンターテインメントとしては上々の出来であろうし、漫画や映画などに押されがちの文学界からしてみると、こういった娯楽性の高い作品で、読者層を広げておき、少しでも読書の習慣が広まれば良いのかもしれない。

 さて、作品の方は顔などの微妙な筋肉の動きで相手の思考を読むといった『千里眼』に通ずるテクニックや、トランス状態における人間の心理状態や反応など、どこまでが事実でどこからがフィクションなのか分からない設定がなかなか面白くて楽しめた。明らかにフィクションだろうと思いつつ、大真面目に解説されるとついつい信じたくなるのが読者心理というもの。

 登場人物もなかなか個性的なキャラクターが多く、時間を忘れて楽しめる作品なのだが、奥深さという意味ではもう一歩。しかし、シリーズものを一気に読ませてしまうとは…私も一種の催眠にかけられたのだろうか。

>2004.08.26.THU

苗村屋読書日記 [64]

     



































[PR][無料]足し算引き算で分かる:電卓で気になるあの人も恋人の相性も診断