◎0340 『一瞬の光』 白石一文
△0339 『通勤大学MBA−ゲーム理論』 グローバルタスクフォース
△0338 『通勤大学MBA−ストラテジー』 青井倫一
△0337 『司法戦争』 中嶋博行
△0336 『通勤大学MBA−マーケティング』 青井倫一


◎0340 『一瞬の光』 >白石一文/角川文庫/2004.10.15

 背表紙あらすじ:三十八歳という若さで日本を代表する企業の人事課長に抜擢されたエリート・橋田浩介。彼は、男に絡まれていたところを助けたことがきっかけで、短大生・中平香折と知り合う。社内での派閥抗争に翻弄されるなか、橋田にとって彼女の存在は日増しに大きくなっていった。橋田は、香折との交流を通じて、これまでの自分の存在意義に疑問を感じ、本当に大切なことを見いだしていくのだった…。―混沌とした現代社会の中で真に必要とされるものは何かを問う、新たなる物語。各紙誌書評で絶賛と感動の声を集めた気鋭のデビュー作、待望の文庫化。

 白石一郎氏が逝去されたと聞いた妻が「最近売れている白石一文は、一郎氏の息子らしいよ」と教えてくれた。それをどう勘違いしたのか、白石一文の作品が読みたいと聞き違えた私が、早速買ってきたのが本書である。ちなみに父・一郎氏の作品は『海狼伝』を読もうとして、そのままになっており未読。また、双子の弟の白石文郎氏も作家とのこと。はじめて知った・・・。しかし、父の名前にそれぞれ「文」という文字をくっつけた、いかにも文学一家という感じの名前である。

 さて、そんな勘違いから買ってきた本であり、まったくのノーマークだった一文氏の作品だが、読み始めて止まらなくなり、一気に読了してしまった。改めてネットで検索してみると、随分と話題になった作品のようである。主人公の浩介を取り巻く、仕事、恋人、そして香折という3つが上手く交差しあい、絶妙のバランスを保ちながら展開していく。ビジネスと恋愛とを扱った作品といえば、佐々木譲の『屈折率』を思い出すが、それぞれの割合が崩れてしまうと、とたんにつまらなくなってしまう。本書はビジネスと恋愛というアンバランスな中から生まれてきた名著だと思う。

 まずは、ビジネスシーンから。大手企業の社長に眼をかけられ、エリートの道をまっしぐらに歩く浩介。脇目もふらずという形容詞がぴったりのワーカホリックぶりである。経営企画畑から人事課長に異動となり、さらに出世が期待されるのだが、過去に犯した不正から一転して危機に陥ってしまう。この急転直下ぶりに少し落ち込んでしまった。不正を犯したのだから仕方が無いのだが、一所懸命会社に尽くしてきた代償がコレかと思うとやりきれない。たまたま仕事が行き詰っていたこともあるのだろうが、中盤は読み進めるのがしんどかった。

 その前後に、人事課長として面接した少女が香折である。母親と兄から酷い虐待を受け、薬なしでは眠れない少女。自分とはかけ離れた環境に育った香折になぜか共感し、香折を救おうとする浩介。香折の常軌を逸した行動がリアルに描かれており、ここも読んでいて辛くなる部分である。

 しかし、香折は直接的な恋愛の対象ではない。浩介自身、作中で兄のような存在と語っている。そんな浩介の恋人として登場するのが瑠衣である。モデル並のスタイルとルックスで、性格もよく、料理も上手いという欠点のない女性。ちょっとこのあたりが出来過ぎのような気もしないでもないが、まぁ作者の好みなのであろう。一方、浩介も東大法学部卒でルックスもいいエリート。大胆な性描写のシーンもいやらしくなく、むしろ二人の親密度が伝わってくる。こんな理想のカップルなのだが、そう旨くは進まない・・・。

 仕事に疲れ、恋にも疲れたときに人が求めるもの。本書のテーマは「無償の愛」だと思う。求めるのではなく与える愛。ハッピーエンドでない恋愛小説は、いや、そもそも恋愛小説自体が苦手なのだが、思わず◎の高評価をつけてしまった。そういえば食わず嫌いの『世界の中心で、愛を叫ぶ』だが、こちらも感動できるだろうか? たまには恋愛小説もいいもんだと思わせてくれた作品。ビジネスシーンも読み応えあり。

P.S.50,000 hits over! >2004.10.15.FRI


△0339 『通勤大学MBA−ゲーム理論』 >グローバルタスクフォース(株)/通勤大学文庫/2004.10.14

 実を言うと、今回購入したMBA関連書類の中で一番興味があったのが、本書で展開されている「ゲーム理論」である。有名な「囚人のジレンマ」以外に、どんな理論があるのかと、ワクワクしながら読み始めた。にもかかわらず、残念ながら、結果は△。ちょっと私の頭には難しすぎて、付いていけなかったのが半分。もう半分の理由は後述したい。

 とはいうものの、せっかくなので「囚人のジレンマ」だけでも紹介しておこう。これは強盗を犯した二人が軽い窃盗容疑で逮捕された際に、互いに黙秘すれば両者とも懲役2年、互いに自白をすれば両者とも懲役5年。ただし、どちらかが自白してどちらかが黙秘した場合は、自白した方は懲役1年だが、黙秘した方には懲役20年が科されるという状況において、どのような行動を取るかという理論である。お互いの腹を探り合いながら自分の選択肢を決めていくところからゲーム理論と呼ばれるようになったのだろうか?

 容疑者Y→
↓容疑者X
黙秘自白
黙秘X:懲役2年 Y:懲役2年X:懲役20年 Y:懲役1年
自白X:懲役1年 Y:懲役20年X:懲役5年 Y:懲役5年

 前述の前提を図式化したのが上図である。ここで、まずYが黙秘をした場合のXが取るべき行動について考えてみる。Xが黙秘をすれば懲役2年だが、自白すれば懲役は1年になる。つまりXとしては自白した方が有利ということになる。また、Yが自白した場合。Xが黙秘すれば懲役20年だが、自白すれば懲役5年ですむのである。つまり、Yの黙秘・自白に関わらず、Xは自白した方が有利となるのである。同様に、Yにとっても自白の方が有利となる。囚人のジレンマとは、このように、お互いに黙秘していればそれぞれの懲役が2年ですむにもかかわらず、自白して5年の懲役を科されてしまうというジレンマを表わしたものである。

 この他にも「ナッシュ均衡」「ミニマックス定理」などなど、さまざまなパターンが用意されているのだが、電車で学習するには無理があると感じた。通勤大学とはいうものの、じっくりと机に向かって、自分で図を書きながらでないと理解出来ないと思ったのである。

 さて、私の理解の範疇を超えているという他に、もう一つ納得の行かない点があったので、ちょっと述べてみたい。頭のいい人から見れば、浅はかな素人考えと思われてしまうかもしれないが、素人なのだから仕方がないと開き直ってみよう。例えば先ほどの「囚人のジレンマ」であるが、本書では具体例として、自動車メーカーの価格戦略を取り上げていた。

 容疑者B→
↓容疑者A
価格据え置き価格引き下げ
価格据え置きA:売上500億円 Y:売上500億円A:売上200億円 Y:売上700億円
価格引き下げA:売上700億円 Y:売上200億円A:売上400億円 Y:売上400億円

 上図はA社・B社が販売価格を据え置いた場合と、引き下げた場合の売上予想値をマトリックスにしたものである。両者とも価格を据え置いた方が、それぞれ売上高500億円を確保できるにもかかわらず、囚人のジレンマに陥って、価格を引き下げ、売上高400億円に甘んじてしまうというストーリー。ここで忘れてはならないのが、マトリックスを埋めるために前提となる売上高を予想しなければいけないということ。果たしてこのような予想が旨く立てられるのだろうかと、甚だ疑問なのである。

 いくらゲーム理論に習熟しても、大前提となる売上高予想が間違っていれば、まったく意味を成さないものになるではないか。適当な数値を当てはめてああでもない、こうでもないと言っても始まらない気がするのである。実際のビジネスに応用する際には、緻密なマーケティングを経た上で予想を立て、予想に食い違いが出てきた時点でこまめに戦略を立て直すのだろうか? この辺りの疑問が解消できない点が、独学の限界なのかもしれない。

 という訳で、消化不良のまま終わってしまったのだが、ロジカルに考える為には有効なツールだと思うし、もう少し他分野の勉強をこなした後なら、私にも理解できるかもしれない。本書を入門書として、次回はもう少し詳細な本に挑戦したいと思うのだが、果たしていつになることやら…。

 P.S.横山秀夫の『第三の時効』の中に、『囚人のジレンマ』という短編が収められています。御参考まで。

>2004.10.14.THU


△0338 『通勤大学MBA−ストラテジー』 >青井倫一/通勤大学文庫/2004.10.11

 「マーケティング」に引き続き、「ストラテジー」つまり「経営戦略」を読了。戦略とはもともと軍事用語で「大局的見地から敵を打ち負かす方法」という意味。これを企業経営に置き換えて定義すると「長期的な視点で経営活動の基本的な方向付けを行なうこと」といえる。具体的には次の4つの内容が挙げられる。

  1. 自社を取り巻く経営環境を分析し企業として対応すること。
  2. 成長のための事業分野を選択すること。
  3. 選択した事業分野における競争上の優位性を確保すること。
  4. 経営資源の有効配分を行なうこと。
 要するに、自社を取り巻く環境を分析し、その分析内容に即して成長戦略や競争戦略を立案するということである。本書では、経営環境の分析の手法としてSWOT分析をあげているのだが、これは先日の「マーケティング」にて紹介済み。また、成長戦略では「製品−市場マトリックス」と「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)」を、競争戦略では「ファイブフォース分析」や「アドバンテージマトリックス」を取り上げている。PPMとファイブフォース分析もすでに紹介済みなので、ここでは「製品−市場マトリックス」と「アドバンテージマトリックス」を紹介したい。

 まず、「製品−市場マトリックス」だが、これは下図のように、市場と製品を既存と新規とに区分してマトリックスにしたものである。これらの4象限について、それぞれ具体的な対応策を挙げている。

 既存製品新規製品
既存市場市場浸透新製品開発
新規市場新市場開拓多角化

(1)市場浸透戦略→製品の使用量を増加させる

  • 注意喚起情報を提供する:オイルの交換時期が近づいてきた旨をダイレクトメールで知らせる。
  • 使用頻度を増加させる:浄水器の交換時期を色で知らせる。
  • インセンティブを提供する:マイレージサービスで、使用量に応じて特典を与える。
  • 頻繁な使用による好ましくない結果を排除する:低カロリービールを、体重を気にしている人に売り込む。
(2)新製品開発戦略
  • 製品特性を追加する:自動車購入時のオプション。
  • 新世代製品を開発する:ブラウン管テレビから液晶テレビへの転換。
  • 製品の幅を拡張する:幼児向け玩具店での、育児書の取り扱い。
(3)新市場開拓戦略
  • 地理的に拡大する:県内から県外へ、地方から全国へ、国内から海外へ。
  • 新たな市場セグメントへ拡大する:年齢(子供用→大人用)、性別(女性用→男性用)、流通チャネル(百貨店→コンビニ)
(4)多角化戦略
  • 関連多角化:新事業領域が既存事業と戦略上意味のある共通性を持たせて行なう多角化。シナジー効果あり。
  • 非関連多角化:戦略上意味のある共通性を持たせずに行なう多角化。シナジー効果なし。
 次にアドバンテージマトリックスについて。これはボストン・コンサルティング・グループが開発したもので、業界の競争要因の多寡と、競争優位性構築の可能性の大小を縦横に配してマトリックスを作成したものである。(下図参照) それぞれの特徴は次の通り。

 優位性構築の可能性・小優位性構築の可能性・大
競合上の戦略変数・多分散型事業特化型事業
競合上の戦略変数・少手詰まり型事業規模型事業

  1. 規模型事業:規模の利益を追求することで優位性を構築できる事業。仮に差別化を試みたとしてもコストが高くなるだけで、収益性が向上しない業界。自社の事業が属しているなら、ある程度の規模を追求できることが収益性向上の条件となる。
  2. 特化型事業:競争要因(競争上の戦略変数)が多く存在し、かつ、差別化や集中化によって特定の分野で独自の地位を築くことで競争優位性が保て収益性が確保できる事業。
  3. 手詰まり型事業:優位性構築が困難な事業。過去には規模による格差が存在したものの、コスト低下が進み、企業間格差がなくなってしまった業界。自社事業が属しているなら、撤退するかまたは他の事業の比率をあげることを目指すのが賢明。また、M&Aなどにより川上・川下へ進出し、付加価値を高める方法も考えられる。
  4. 分散型事業:競争要因が数多く存在するものの、圧倒的な優位性構築が困難な事業。事業が小規模な段階では高い優位性を維持できるが、事業規模を拡大すると収益性を維持できなくなる。
 言葉だけを取り上げるととっつきにくいが、それぞれ言っていることはそれほど難しくない。むしろ当然のことのように思えるが、こうしてきちんとマトリックスで整理してみると、自社がどのような戦略を取るべきかがはっきりしてくるのであろう。ストラテジーとは、「知識」というよりも「技術」のように思う。色々な場面で使いこなしてこそ、自分の血となり肉となるのであろう。

 今回は事前に「マーケティング」を読んでおいたおかげで、大きな抵抗なく読み進めることが出来た。人によっては同じ内容が書いてある本を買わされたと怒る人もいるかもしれないが、こういった知識・技術は何度も何度も違った観点・文章を読むことによって、少しずつ積み重なっていくものだと思う。

>2004.10.11.MON


△0337 『司法戦争』 >中嶋博行/講談社文庫/2004.10.10

 背表紙あらすじ:沖縄で最高裁の判事が殺された。判事はなぜ死なねばならなかったのか。東京地検、法務省、内閣情報室、警視庁、あらゆる国家権力を巻き込みながら潜行していく巨大な陰謀がついに暴かれる。現役敏腕弁護士作家ならではのリアリティ。司法制度を根本から問い日本を震撼させるリーガル・サスペンスの最高峰!

 昨日は所要があって京都の方へ。どうしても今日の朝までに関東へもどってこなければならなかったのだが、台風22号の影響で新幹線が完全ストップ。名古屋で6時間も待たされた。皆が在来線に乗り換えたりする中、なんとか深夜にでも帰れたらいいだろうと腹をくくって、ずっと新幹線の中で待っていたのだが、結局東京についたのは深夜1時過ぎ。JRが特急券代を払い戻してくれるというので少し得したような気もしたのだが、6時間の代償に比べると割に合わない。

 しかし昨日の台風は凄かったようで、トラックがひっくり返ったり、屋根が吹き飛ばされたり。新幹線の中、ほとんど情報が入ってこない状態で、しかも名古屋は雨が少し降っている程度だったので、余計に現実感がなく、今朝テレビを見てビックリしてしまった。ちなみに、JRは新幹線が遅れて乗継が出来なかった乗客の為に、新幹線を宿泊所として解放すると車内放送していた。確かにホテルを確保するのは大変だろうし、車両を使えば只なのだが、なんだがちょっと間が抜けている感じがした。

 そんな中、時間つぶしに読んだのが本書。何を持っていこうか迷ったのだが、途中で読む本がなくなると辛いので、未読の中で一番分厚いものを持ってきたのが正解だった。途中、仮眠を取ったり、駅弁を食べたりしながら、だらだらと読み続けて、東京到着の30分前に読了。意識的に時間をかけて本を読んだのは初めての経験かもしれない。

 あらすじの通り、最高裁の判事が殺されるところから物語が始まるのだが、中盤までは、東京地検・法務省など法律関係者の内部抗争などが延々と語られており、正直つまらない内容。なかなか読み進めることが出来ず、読了を諦めようかと思ったほどである。しかし、前述のような特殊な環境に置かれて、他にすることもなかったため、なんとか読み進めることが出来た。我慢して読み進めた甲斐があって、後半から急激に面白くなってくる。スピード感も出てきてなかなか面白いラストだった。

 ☆物語は、原子力発電所の暗号化技術が電子マネーに応用できるという特許絡みの話と、裁判所の忙しさを少しでも緩和しようと、陪審制度を日本へ導入しようという話の2つからなっている。☆ 特に2つ目の話は、伏線をいたるところにちらつかせながらも、最後の最後になるまで表に出てこないため、なかなか意外性があって面白かった。  前作の『検察捜査』では女性検事を主人公としているが、本書の主人公も女性である。作者は男女が平等に働くことの出来る法の世界をアピールしたいのかもしれない。今回は検察から最高裁に「判検交流」の一環で派遣されている真樹加奈子が主人公。どうでもいいことだが、この感想を書くまで、作中の真樹というのが苗字ではなく名前だと勘違いしていた…。

 検事と判事というあまりなじみの無い世界にスポットを当てており、こういった未知の世界のことを知ることが出来るのも中嶋作品の魅力のひとつである。横山秀夫の『半落ち』でも、検事や判事が描かれていたが、どうしても刑事が中心となりがちの日本のミステリー会において、これらの職業にきちんとスポットを当てられる作家というのは貴重だと思う。本書の難点は長すぎること。前半からもっともっとアップテンポで話を展開させれば、もっと多くの読者の心をとらえることができるであろう。そして、もっと多くの人に、検察や裁判所の仕事を知ってもらえると思うのだが…。

>2004.10.10.SUN


△0336 『通勤大学MBA−マーケティング』 >青井倫一/通勤大学文庫/2004.10.07

 中間決算の準備で9月末からバタバタとしていたが、決算自体は少し目処が付いてきた。これから幹部に対する資料作成が待っている。経理部にいると10月の体育の日の連休はあって無きに等しい。そういえば夏休みもとっていないし。少しはノンビリしたいものである。

 さて、本書はMBAに関する様々なテーマを文庫本より少し大きめのサイズにまとめて発刊されたものである。その名も「通勤大学」で、通勤時間でしか自分の時間を持てないサラリーマンを対象にしており、なかなか面白いコンセプトである。私も、この言葉につられて買ってみたのだが、2ページの見開きに1つのテーマが書かれており、なかなか分かり易い。さすがに薄い本の中に色々詰め込むには無理があり、あまり突っ込んだ内容にはなっていないが、それが逆に初心者向きであり、知らない分野を勉強するには手頃なものとなっている。

 今回購入したのは、本書『マーケティング』に加えて、『ストラテジー』『ゲーム理論』である。この他にも『アカウンティング』や『コーポレートファイナンス』『クリティカルシンキング』といったテーマもあるが、これらはある程度の知識があるため、わざわざ初級コースに立ち戻ることも無いと考えて割愛。また、『マネジメント』はこれらの個別のテーマを体系的にまとめただけなので、同じく割愛・・・。しばらくは「通勤大学」を足がかりに、新しいテーマに取り組んでみたいと考えている。

 さて、内容のほうだが、初めて取り組むテーマだったので読み進めるのに苦労するかと思っていたが、今まで読んできた経営書などで目にした言葉やコンセプトが結構含まれていたので、概要は理解することが出来た。要するにマーケティングとは、顧客や市場のニーズ・ウォンツを調査しつつ、自社の強みや競合他社の強みを分析し、今後の戦略を立てるためのデータを提供するものである。今までマーケティングというと、イコール市場調査のことだと思っていたので、自社や他社についても分析が必要だというのは新たな発見であった。

 具体的な流れとしては、(1)マーケティング環境分析(SWOT分析)、(2)標的市場の選択(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)(3)マーケティングミックスの最適化(製品政策、チャネル政策、価格政策、プロモーション政策)の順に実行していく。きちんと学ぶのは初めてなので、本の流れに沿って纏めてみようかなとも思ったのだが、いくらコンパクトな本とはいえ、一冊を網羅するのは大変な作業である。よって、気になった部分、覚えておくべき部分のみを抜粋して引用しておく。

 まずは環境分析の一環として出てくるSWOT分析である。よく耳にする用語だが、体系立ててきちんと学んだことがなかったので、改めてなるほどと頷く部分が多かった。SWOT分析のプロセスでは、まず経営環境を「内部環境」と「外部環境」に区分し、縦軸にこれらを置く。次に横軸には「好影響」と「悪影響」とを置いてマトリックスを作成する。さらに、このマトリックスで得たセグメントを軸にして、もうひとつのマトリックスを作成する。(このホームページはデータベースとして活用しやすいように、テキスト形式にこだわって来たのだが、さすがにSWOT分析を文章だけで表現するのは至難の業なので、表を挿入)

 好影響悪影響
外部環境機会(Opportunity)脅威(Threat)
内部環境強み(Strength)弱み(Weakness)

 機会(Opportunity)脅威(Threat)
強み
(Strength)
自社の強みで取り込むことの出来る事業機会は何か自社の強みで脅威を回避出来ないか
他社には脅威でも自社の強みで事業機会に出来ないか
弱み
(Weakness)
自社の弱みで事業機会を取りこぼさない為には何が必要か脅威と弱みが合わさって最悪の事態を招かない為にはどうすればよいか

 これらの4つを整理して攻めと守りの観点から環境を総合的に分析することで、具体的な戦略課題を明らかにし、事業の進むべき方向性を明確化していくものである。ちなみに、外部環境分析にスポットを当ててみると、マイケル・ポーターのファイブ・フォース分析という手法が有名である。これは、自社への脅威が(1)既存の競合だけでなく、(2)新規参入業者、(3)代替品、(4)売り手の交渉力、(5)買い手の交渉力、という5つに分類できるというもの。確かに、既存の競合だけでなく、新規参入業者にも眼を配らなければいけないし、売り手や買い手との価格ネゴシエーションも必要である。

 次にプロダクト・ポートフォリオ・マネジメントについて。これはPPMと略されており、「金のなる木」や「負け犬」といったセグメントの名前で有名なもの。横軸に相対的マーケットシェアをとり、縦軸に市場の高低をとってマトリックスを作成する。「金のなる木」で得たキャッシュを「問題児」への投資に充て、その「問題児」を「花形製品」に育て、積極的な投資を行なって、将来的には「金のなる木」に成長させるというシナリオが理想である。一方、PPMだけにとらわれず、社会貢献やブランディングといった多角的な観点からの製品戦略が必要なのは言うまでも無い。

 ←シェア(高)シェア(低)→
↑市場の成長率(高)花形製品(Star)問題児(Problem Child)
↓市場の成長率(低)金のなる木(Cash Cow)負け犬(Dog)

 以上、主要な部分だけ抜粋したが、アカウンティングやファイナンスに比べて、マーケティングというのは曖昧な印象がある。例えばSWOT分析など、自分では「強み」だと思っていたものが、客観的にみるとさほど強くないかもしれない。外部環境によっても「強み」や「弱み」は常に変化するし、まぁ生きた市場を相手にするからこそ、マーケティングというのだろうが・・・。理解するのは難しいが、一度手法を身に付ければ応用が簡単なアカウンティングやファイナンスに比べて、マーケティングの方は、手法を覚えてからの訓練や実践が大変だと感じた。例えば、ファイナンスは数式を理解するのは大変だが、使い方さえ覚えれば、あとは数値を当てはめていくだけなのに対して、マーケティングはパターンやセグメントにどのような事象を充てていくかに悩みそうである。経理という仕事をやっていく上では、それほど必要となる機会は少ないかもしれないが、基本的な考え方を知っているだけでも、随分と違うのではないかと感じた。新分野の読書というのは非常に疲れるが、刺激的でもある。

>2004.10.07.THU

苗村屋読書日記 [68]

     



































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