△0355 『内側から見た富士通−「成果主義」の崩壊』 城繁幸
△0354 『国盗り物語』 司馬遼太郎
△0353 『出口のない海』 横山秀夫
△0352 『プラスティック』 井上夢人
△0351 『英語は絶対、勉強するな!』 鄭讃容


△0355 『内側から見た富士通−「成果主義」の崩壊』 >城繁幸/光文社ペーパーバックス/2004.11.22

 一時期流行った、いや、今でも取り入れようとしている企業が多いと思われる「成果主義」 大企業の中では先陣を切って成果主義を導入した富士通だが、その有効性に疑問が持たれて久しい。私も随分前に経済誌で、成果主義に疑問を投げかける記事を目にした記憶がある。本書は、富士通の人事部に所属していた筆者が、その内幕を赤裸々に綴ったドキュメンタリィである。

 最初の数十ページは、成果主義のメリットについて述べられている。給与格差がやる気を生み出す、目標未達成の場合でも改善点が見出しやすい、残業に縛られず結果重視の勤務体系が取れる、等など。しかし、これらのメリットをほとんど享受することなく、富士通の「成果主義」は崩壊していったという。

 なぜ、成果主義が崩壊してしまったのか。筆者は様々な角度から分析を重ねている。その結果を時系列で追って見ると、まず、成果主義といいながらSA、A、B、Cなどの評価をつける割合が決まっており、絶対評価ではなく相対評価にしてしまった点が最初の間違いである。しかも、最終査定は部長同士で決定するため、部長間の力の差によって、もっというと、部長間の年功序列によって、その部下のうち何名に良い評価を付けられるかが決まるというのである。結局、賞与の総額は変わらない中で、出来る社員により多くの報酬を与えようというのが成果主義だが、部長の力関係で評価が決まってしまうとなれば、本来評価されるべき人に、正当な評価が下されないという矛盾が起こってしまう。

 また、残業がつかない裁量労働制、つまり結果重視の欧米型勤務体系と、従来の一般勤務とを社員が自由に選択できるため、評価が良い者は裁量制でボーナスアップを狙い、最初から評価されないと諦めている者は一般勤務で残業代を稼ぐという方法が横行した。結果として、人件費が2割アップするという矛盾まで抱えてしまったそうである。

 そこで、相対評価を廃し、絶対評価に切り替えたのだが、その途端、SAやA評価の人間が続出。A評価以上の社員が全体の7割を越える評価のインフレが発生した。結果として、ボーナスの総額は変わらないため、元から好評価を得ていた社員のボーナスが減るという現象が起こってしまった。すると、当然のごとく、優秀な社員は辞めてしまう…。

 こうして順を追って読み進めると、シチュエーション・コメディのような結末で、苦笑が盛れてしまうような有様である。しかし、どの事象をとっても大いに有り得る話であり、自分自身の身に降りかかってきた場合には、苦笑が泣き笑いに変わってしまうだろう。実際に富士通は、一度陥ってしまった悪循環から逃れることが出来ず、今ももがき苦しんでいる様である。

 さて、本書の著者は私とほぼ同年代である。入社当初から人事部に配属され、このような成果主義の崩壊を目の当たりにしてきた。今回は、机上理論や理屈だけでは動かない成果主義の実態を公開し、愛着のある富士通に立直って欲しいという思いを込めて筆を取ったという。しかし、筆者は既に転職したようであり、本当に富士通に愛着があるのならば、会社に留まって、会社内で成果主義の矛盾を唱えるべきではなかったかとも思う。

 私くらいの年代というのは、ある程度会社全体の様相が見えてくる時期でもあり、その一方で自分の意見を通すのはまだまだ難しい時期でもある。正論であればあるほど、なかなか通らなかったりするのも現実。そんな中、転職を考えるのは悪いとは思わない。しかし、会社を辞めた後、結果として会社を貶めるような文章を発表するのはどうなのだろうか。ただ、実名で堂々と発表している勇気は認めたいと思う。

 最近の売れ筋ということで手に取った本書だが、ビジネス書として読むか、企業内部の暴露本として読むかは、読み手の価値観に負うところが大きい。本書の読者層に、後者が少ないことを祈りたいが、実際はどうなのだろうか。昨今、CSRだのコンプライアンスだの、企業責任が厳しく追及されているが、内部告発でしか解決の手段がないというのは少し寂しい気がする。本当に健全な企業であれば、幹部自らが自己矛盾に気付き、改善の方向に向かうはずなのだが…。

>2004.11.22.MON


△0354 『国盗り物語』 >司馬遼太郎/新潮文庫/1996.10.08

 背表紙あらすじ:【第1巻】世は戦国の初頭。松波庄九郎は妙覚寺で「智恵第一の法蓮房」と呼ばれたが、発心して還俗した。京の油商奈良屋の莫大な身代を乗っ取り、精力的かつ緻密な踏査によって、美濃ノ国を“国盗り”の拠点と定めた! 戦国の革命児斎藤道三が、一介の牢人から美濃国守土岐頼芸の腹心として寵遇されるまでの若き日の策謀と活躍を、独自の史観と人間洞察によって描いた壮大な歴史物語の緒編。【第2巻】気運が来るまで気長く待ちつつ準備する者が智者。気運が来るや、それをつかんでひと息に駆けあがる者が英雄。―それが庄九郎の信念であった。そして庄九郎こそ、智者であり英雄だった。内紛と侵略に明け暮れる美濃ノ国には英雄の出現は翹望する気運が満ちていた。“蝮”の異名にふさわしく、周到に執拗に自らの勢力を拡大し、ついに美濃の太守となった斎藤道三の生涯。

 【第3巻】美濃を征服した斉藤道三は義理の子義竜の反乱に倒れたが、自らの天下統一の夢を女婿織田信長に託していた。今川義元を奇襲して鋭鋒を示した信長は、義父道三の仇を打つべく、賢臣木下藤吉郎、竹中半兵衛の智略を得て美濃を攻略した。上洛を志す信長はさらに畿内制覇の準備工作を進めてゆく…。信長の革命的戦術と人間操縦、その強烈な野性を、智将明智光秀を配して描く怒涛編。【第4巻】すさまじい進撃を続けた織田信長は上洛を遂げ、将軍に足利義昭を擁立して、天下布武の理想を実行に移し始めた。しかし信長とその重臣明智光秀との間には越えられぬ深い溝が生じていた。外向する激情と内向し鬱結する繊細な感受性―共に斉藤道三の愛顧を受け、互いの資質を重んじつつも相容れぬ二つの強烈な個性を現代的な感覚で描き、「本能寺の変」の真因をそこに捉えた完結編。

 1・2巻が斉藤道三を、3・4巻では織田信長を主人公にした歴史物語である。高校1年生の頃、友人から借りて読んだ記憶があり、社会人になってからも再読している。個人的には1・2巻の斉藤道三の物語が気に入っている。一介の油売りから下克上で美濃の太守となった道三の一生を非常に興味深く描いている。どちらかといえば英雄の織田信長にスポットを当てがちであるが、義父の道三から物語を紡ぎ始めたあたりは、さすが司馬遼である。

 以前から、いつか感想を書きたいと気になっていた作品なのだが、たまたまネットで検索すると、なんと来年の正月にテレビ東京開局40周年記念でドラマ化されるとのこと。斉藤道三を北大路欣也が、織田信長を伊藤英明(誰?)が演じるとのこと。一挙10時間はちょっと見る気がしないが、ビデオにでもとっておこうか。しかし、開局記念というと過去の名作を取り上げたがるのはどこの局も変わらないなぁ…。

 道三の京都での妻である油商家のお万阿、違う男の種を宿しながら道三に嫁ぐ深吉野など女性も魅力的。高校生の私には少々刺激が強いシーンもあったが、それはそれで楽しめた。ちなみにドラマでは、高島礼子・菊川玲・鈴木杏樹・酒井法子といったメンバーが登場するらしく、一流女優ではないにせよ、なかなかの面子である。

 信長・秀吉・家康といった有名武将ではなく、道三という一匹狼に惚れ込み、魅力的に描いた名作。多分に司馬遼の創作部分もあるのだろうが、なぜか司馬遼が書くと実話のように思えてくるから不思議である。これぞ「戦国の時代小説」であるが、司馬遼の作品は、他にも数々の名作ぞろいなので、相対評価として△とさせていただいた。

>2004.11.17.WED


△0353 『出口のない海』 >横山秀夫/講談社/2004.11.14

 今年の8月9日に発行された本書。長崎に原爆が落とされた日でもあり、終戦のきっかけとなった日でもある。本書は、終戦直前の特攻型魚雷爆弾・回天の搭乗員となった、ひとりの青年を描いた物語である。

 甲子園で活躍しながらも、大学野球へ進んだ後、肘を壊してしまいボールが投げられなくなった投手・並木浩二。そんな並木が、肘を壊しても投げられる「魔球」の完成を夢見ながら、自分の意志に反して、回天に乗ることになってしまう。ずっと、ミステリーを書いてきた横山氏にとっては異色の作品だが、氏の戦争に反対する気持ちが強く現われており、感動的な作品に仕上がっている。

 日本人は戦争に敗れた後、ずっと平和ボケした生活を送ってきているが、世界ではイラク戦争をはじめ、まだまだ紛争が絶えない。数年前の同時多発テロでは、飛行機によるビルへの特攻という、かつての日本人の特攻隊を彷彿させるような事件が起こっている。崩れ落ちるビルを見たときもショックであったが、そもそも「特攻」とは日本人が考え出したものではないか、というコメントをテレビで耳にしたとき、さらに大きなショックを受けたことを思い出す。横山氏がそこまで意識して「特攻」というテーマを選んだのかどうかは不明だが、イラク戦争が正当化されようとしている世論に、反対すべく本書を執筆したと思いたい。

 今年は、終戦記念日の8月15日が日曜日だったせいもあり、終戦記念番組を例年よりも多く見ることができた。龍陵会戦の話や、韓国人の特攻隊、満州国の話など、改めて身につまされるものばかり。一方でイラクへの自衛隊派遣を決める首相がいたりして、あの戦争は何の教訓も生まなかったのかと残念でならない。加えて、そんな日に平気で『スターシップ・トゥルーパーズ』(昆虫と人間の戦争もの)を放送する某テレビ局の常識も疑いたくなった。

 さて『出口のない海』というタイトルどおり、出口のない結末が哀しすぎて、評価は△にしてしまった。300ページというのも、テーマの割りに短かったかもしれない。いろいろ考えさせられる作品だが、なぜか主人公に感情移入しきれなかった。しかし、横山秀夫という売れっ子作家が、戦争を繰り返してはならないと主張することに、大きな意義があると思う。「戦争」だけでなく「野球」というテーマも絡んでおり、若者にもとっつきやすい作品ではないだろうか。一人でも多くの人に読んでもらいたい、今、現実に起こっている戦争にも目を向けてもらいたいものである。

>2004.11.14.SUN


△0352 『プラスティック』 >井上夢人/双葉文庫/1999.02.11

 背表紙あらすじ:54個の文書ファイルが収められたフロッピィがある。冒頭の文書に記録されていたのは、出張中の夫の帰りを待つ間に奇妙な出来事に遭遇した主婦・向井洵子が書きこんだ日記だった。その日記こそが、アイデンティティーをきしませ崩壊させる導火線となる! 謎が謎を呼ぶ深遠な井上ワールドの傑作ミステリー。

 ワープロのファイルを順に読ませるという構成はなかなか面白いが、パソコンにも精通した著者がなぜ今更ワープロを使うのだろうと、疑問に思いながら読み始めた作品である。主婦の向井洵子が、比較的操作の簡単なワープロを選択したのは分かるのだが、他の登場人物の中にはパソコンを使用してもおかしくないような人物が登場する。

 結局、全編を通じてワープロという構成そのものが、伏線にもなっていたのかなと思わせる作品。随分昔の作品なので、あえてネタバレさせると、☆本書は多重人格ミステリーである。☆ 読んでいる途中から、このネタについてはある程度見えてくるが、主人公の背負ったトラウマなど、心理描写を書き込んでいる為、ついつい結末まで読んでしまう。ネタバレしたから楽しめない、という作品ではない。特に54個目のファイルは思わせぶりでもあり、非常に印象的であった。ちなみに、タイトルの『プラスティック』という言葉は、作中では「可塑的な」と訳されており、いかようにも変化可能な小説という雰囲気を漂わせている。

 しかし、である。井上夢人という力のある作家にしては、少々安易なトリックのように感じてしまった。岡嶋二人時代からは大きく作風が変わり、叙述トリック的なものにも手を出すようになってしまったが、個人的には『99%の誘拐』や『チョコレートゲーム』のようなミステリーの方が好みである。叙述ミステリーは少々苦手で、後に残るものが少ないと感じるせいかもしれない。本書は双葉文庫に続いて、講談社文庫、新潮文庫と3社から文庫化されている。そこまですべき作品かなとも思うのだが、この辺りは好き嫌いの問題なのであろう。

>2004.11.10.WED


△0351 『英語は絶対、勉強するな!−学校行かない・お金かけない・だけどペラペラ』 >鄭讃容(訳:金淳鎬)/サンマーク出版/2002.09.05

 先日読了した『Monster』を押入から引っ張り出す際に、見つけたのが本書。引越しで変なところに本が紛れ込んでいたりする。本書は読書日記にアップしていなかったなと、パラパラ読み返してみた。英語の本が出るとついつい買ってしまうのは、コンプレックスの裏返しだろうか。結局、コツコツと努力するしかないのだろうけど、少しでも道のりを短縮したいと思うのは人間のサガであろう。

 本書では英語の習熟を、5つのステップに分けている。

  1. 完全に聞き取る。英語のテープを徹底して聴き続ける。話の意味内容を理解するのではなく、ただひたすら発音を聞き取る練習をする。これによって英語の音やアクセントを完全に耳に馴染ませる。この際、自分の水準よりやや低めのテープを選ぶこと。英語を聞くというよりも、それぞれの発音を聞き取ったり、チェックするようなつもりで聞くこと。1日2回、テープを最初から終わりまで聞くこと。6日間聞いて、1日休むこと。全ての内容が完全に聞こえるまで続けること。

  2. 完全に書き取る。聞き取った内容を聞こえたとおりに書き取る。一文ごとに書き取り、わからない単語があってもこだわらず、不正確なスペルでもいいから聞こえたとおりにいったん書いておく。全て書き取った後で、それを最初から最後まで大きな声で、テープの話し方や発音をそっくりそのまま真似するように読む。これによって話されたとおりの音で英語を文章化する力が身につき、また、英語の発音が完全に口に馴染む。この際、あくまでも1つのセンテンス全体をひとつながりのものとして書き取るようにすること。

  3. 英語の語彙や表現法に精通する。書き取った内容のうち、わからない単語を「英英辞典」で引く。そこには言葉の意味そのものより、説明や用法や例文が記されているが、当然、英語で書かれているから、そのなかにも分からない単語が出てくる。それもさらに英英辞典で引く。そして分からない単語がなくなるまで引く。このとき、英和辞典に絶対頼らないこと。これを繰り返すことで、「英語の意味を英語で理解する」ことができるようになり、意味や表現法が自然に理解できるようになる。
 この後、第4ステップ:生きた英語を完全に体得する、第5ステップ:英語文化を理解し、幅広く多様な英語力を深める、と続くのだが、第4ステップでは映画の英語を教材に使ったり、第5ステップでは英字新聞の記事を朗読したりと、他の英語本と変わり映えしない内容。映画の英語はスラングが多くて、教材には向かないという指摘もあるので、ここでは詳細を割愛する。

 このように1〜3のステップを踏むと半年から1年で英語がペラペラになるといのだが、結局、1年近く毎日毎日英語を聞き続けることができるかどうかが勝負である。特に、書き取り、つまりディクテーションの効用はよく聞く話だが、なかなか時間が取れず実践出来ないのが本当のところである。海外で居住しない限り、相当な努力を強いられるのは仕方のないことであろう。最近は、CPAの勉強でリスニングよりもリーディングばかりであるが、バランスの取れた学習が必要だと、反省。

>2004.11.06.SUN

苗村屋読書日記 [71]

     



































[PR]子育てママさんへ:3年毎に15万円うけとれる保険?