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![]() ○0375 『天空の蜂』 東野圭吾 △0374 『日産を甦らせた英語』 安達洋 △0373 『富豪刑事』 筒井康隆 △0372 『日本電産永守イズムの挑戦』 日本経済新聞社編 △0371 『点と線』 松本清張 ○0375 『天空の蜂』 >東野圭吾/講談社文庫/2000.01.02・2005.01.13 背表紙あらすじ:奪取された超大型特殊ヘリコプターには爆薬が満載されていた。無人操縦でホバリングしているのは、稼働中の原子力発電所の真上。日本国民すべてを人質にしたテロリストの脅迫に対し、政府が下した非情の決断とは。そしてヘリの燃料が尽きるとき…。驚愕のクライシス、圧倒的な緊迫感で魅了する傑作サスペンス。 原発関係の小説として真っ先に思い浮かぶのが『神の火』と本書『天空の蜂』である。他にも『クーデター』や『スピカ・原発占拠』なども挙げられるがこの2作の右に出るほどではない。『神の火』がスパイ小説だとすれば、本書は「テロ小説」である。三菱重工を思わせる錦重工業という大手機械メーカーのヘリをラジコン操作で盗み出し、原発の上空でホバリングさせ、犯人の要求を受け入れなければ原発にヘリを墜落させるという荒唐無稽な設定。しかし、9.11の飛行機による自爆テロを目の当たりにした我々にとって、この物語を荒唐無稽と呼ぶことはできないかもしれない。 本書によれば、原発の上を飛行機が飛ぶことは想定していない為、上からの攻撃には弱いとのこと。まさに盲点を突く小説であり、大阪府立大学の電気工学科を卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めをした経験のある東野ならではの理系小説でもある。 ちなみに、現実の世界では「もんじゅ」という高速増殖炉が建設されている。高速増殖炉とはウランとプルトニウムの混合燃料を燃やし、使った以上のプルトニウムを生み出すもので、開発段階である原型炉。「夢の原子炉」と呼ばれ、1994年4月に初臨界、95年8月に送電を開始したが、同年12月にナトリウム漏れ事故を起こし、運転を停止している。高速増殖炉の実用化は、国の原子力発電政策の柱として進められてきたが、現在は行き詰まっている。本書は95年11月に書かれており、翌月の事故をまさに預言しているといってよいであろう。 「もんじゅ」が運転を停止している一方で、青森県六ヶ所村に建設中の日本原燃の使用済み核燃料再処理工場で、試験運転に使用する劣化ウランの搬入が始まっている。輸送船「ほくしん丸」がむつ小川原港に接岸し、茨城県東海村の施設で加工された劣化ウラン約31トンの陸揚げを開始。再処理工場は、使用済み核燃料からプルトニウムとウランを分離・回収する初の商業用施設で、2006年7月の操業開始を目指している。試験運転は機器の性能や、不具合がないかを確認するのが目的。放射性物質を使った試験は初めてで、期間は1年間を予定している。原燃によると、劣化ウランは天然ウランに比べて核分裂しやすいウランの割合が少なく、臨界の恐れはないとしている。 核燃料の輸送に関する話は、曽野綾子の『陸影を見ず』に詳しいが、輸送船を狙ったテロや、事故などどのように予防したのだろうか? また、再処理工場での臨界の恐れはないとしているものの、どこまで信じてよいのか不安である。 さて、「電気」は今や空気や水と同じくらい、なくてはならない存在となっている。贅沢といえばそれまでだが、電気無しの生活というのは考えられない。そういえば先日の季節外れの台風で、我が家の近辺が停電になったのだが、本当に久しぶりの停電で大いに慌ててしまった。まず、電話が通じない。FAX兼用となっているせいか、電気がなければ通じない仕組のようである。そしてトイレ。ボタンを押せば水が流れるシステムなのだが、電気がないと水も流せない。これは後ほど、手動のレバーを発見し解決したが、一瞬慌ててしまった。勿論パソコンは使えないから、停電の状況をネットで検索しようにも不可能で、本当に不便だと感じた。また、夏の冷房、冬の暖房も不可欠である。私が勤務する会社は、夏の電力量を抑えようと冷房の設定温度を高めにし、ノーネクタイを奨励しているのだが、それでも不快さは消えず、仕事の効率が落ちている様に感じた。 このような状況を鑑みると、私自身原発に真っ向から反対することはできない。ずるい言い方かもしれないが「消極的賛成」といったところだろうか。原発の電力に生活の一部を委ねているのは事実であり、なくてはならないと思う反面、東海村の事故などが起こっているのも事実であり、恐怖を感じもする。 そんな中、本書に出てくる「原発=飛行機説」は興味深かった。これは、飛行機というのは絶対安全とは言えないが、その危険を限りなくゼロに近づける為に多くの人々が努力を行っており、原発もこれと同じであると言う説である。しかし、筆者は更に突っ込んだ説を展開しており、飛行機には「乗らない」という選択肢が用意されているが、原発はいくら反対しても近くに建設されてしまえば、その問題に不可避的に巻き込まれてしまうというのである。確かに、一度建設されてしまった原発からは、「引っ越し」という非現実的なオプション以外に地域住民の選択の自由が奪われてしまっている。昨今は太陽電池や風力発電など新分野での発電技術も進んでいる。技術立国を誇る日本の各メーカーには、ぜひこれらのクリーンエネルギーの開発にも注力してもらいたいものである。 本書のテーマは原発の在り方を、原発大国日本の国民としてもう一度考えてみようというものである。テロリストたちの狙いもそこにあったのだが、これは恐らく筆者の狙いでもあろう。東野圭吾という作家が書いた作品だからこそ、多くの人に読まれる機会を得るであろうし、それによって多くの人が原発について考えるきっかけになると思う。しかし、このような意義のある作品にもかかわらず、東野作品としてはあまり注目されていないのが残念。代表作の1つといってよいほどなのだが。 ただひとつ、難点を挙げるとすれば人物が描き込まれていなかったことだろうか。主人公が誰だか分からないし、犯人が抱えるトラウマもありきたりである。物語の中心が原発であり、ヘリであったと言えなくもないが、機械的でなく、もっと人間臭く描いていれば良かったのではないだろうか。
△0374 『日産を甦らせた英語』 >安達洋/光文社ペーパーバックス/2005.01.10 英語の勉強方の本を読むヒマがあるなら、英語そのものを勉強しろよと自分でも思うのだが、本書のように、タイトルに「日産を変えた」などと付くとついつい買ってしまうのが我ながら悲しい。内容の方はいたってオーソドックスで、取り立てて日産流という印象は受けなかったが、1つだけ印象に残ったものがあった。「日産社内の英語辞書」である。辞書というよりも用語の定義書で、例えばゴーン社長のマスコミに対する発言で有名になった「コミットメント」という言葉。約束するという意味だが、その受け取り方が各人によって違っていた為、定義を明確にしたという。この他にも、特に重要で、頻繁に社内で使われる単語を1つ1つ定義付けたそうである。これによりコミュニケーション上の誤解を無くそうとしたところが、日産流であり、ゴーン流であろう。 本書を読んで羨ましいと思ったのは、日産の社員が英語を使わざるを得ない環境に無理やり身を置いてしまえたという点である。仕事で必須となれば、勉強への身の入り方も真剣になるし、なにより学習したことを応用できる機会が与えられる。机の上の勉強だけでは、なかなか継続が難しいし、上達も遅い。しかもフランス人と日本人というノン・ネイティブ同士が英語というツールをもってコミュニケーションを図らざるを得なかったという環境が羨ましい。これが、英米系の企業との合弁であれば、向こうはネイティブ、こちらはノン・ネイティブというコンプレックスという優劣感から、活発な議論が行なえず、対等な提携にならなかったのではないだろうか。 さて、肝心の英語だが、せっかくの機会なので、過去これまでに読んできた学習法を振りかえり、自分なりに効果があったと思われるものだけを纏めてみたい。今後、新たに英語学習法の本が出ても、簡単に飛びつかないように…。(注)以下は、本書内容の抜粋ではない。
■リスニング そのMDが理解できるようになったら、次の章に挑戦する。徐々に理解の速度が上がっていくので、最初はテキスト1冊を終えるのに3〜4ヶ月かかるが、あせらないこと。このときテキストは見ても見なくてもよい。薄いテキストなのでカバンの中に忍ばせておき、電車がすいていれば取り出して読みながらMDを聞けばよいし、満員電車であれば、音声だけに頼ってみるのもトレーニングになる。 また、テキストやテープ・CDを毎月買う必要はない。気に入ったトピックスがある月を狙って2〜3ヶ月に1度購入し、繰り返し聞けば十分である。受信料以外でNHKを肥えさせる必要はない。これを半年程度続けていれば、英語に対するコンプレックスが随分となくなるのではないだろうか。現に私はこれだけの勉強でTOEICのスコアが200点近くアップした。MDの編集が少々面倒だが、効果は抜群である。 さて、英語になれてきたら、毎日同じ教材というのに飽きてくる。また、日常の会話やビジネスシーンでは、何度も繰り返して聞きなおすことはできず、いかに一度で聞き取るかということが重要になってくる。そこで、次のステップとしては、英語のニュースなど毎日変わる題材を聞くことである。これは、『たった3カ月でTOEICテスト905点とった』で紹介されていた手法だが、私はスカパーで視聴しているCNNのニュースを30分だけMDに収め、通勤電車で聞くことにした。毎日違う題材だから最初は大変だと思ったが、例えばイラク問題についてなど、内容が似通っていることを異なるフレーズで話してくれるのでいいトレーニングになる。同じ内容のニュースであれば、出てくる単語も限られてくるので、何度か辞書を引くうちに自然に覚えてしまう。 最近は、ダビングが面倒でさぼり気味だったのだが、さらに簡単な方法を発見。eigozaiというサイトの中に、「ニュースクリップ」というコーナーがあり、そこで比較的簡易な英語での国際ニュースが手に入る。しかもMP3形式なので、パソコンに簡単にダウンロードできるし、MP3プレーヤーへの転送も容易である。1日2回アップデートされ、それぞれのニュースが約10分なので、繰り返し聞くにはちょうどいい長さ。ただし、CNNと比べて劣るのが、毎回同じアナウンサーだということ。CNNは世界各国のあらゆる人の発音に触れることができた。まぁ全て完璧という方法はないので、ダビングの時間がなかなか取れない私には、ちょうどいい学習法である。
■リーディング 通常であれば、徐々にレベルを上げてペーパーバックや英字新聞などに挑戦するのがよいのであろう。しかし、現在の私はUSCPAという米国公認会計士の資格取得を目指した学習を始めることで、リーディングのトレーニングを兼ねている。英語を学習するのではなく「英語で学習する」というのは逆転の発想だと思うし、本来、ツールとして使いこなすべき英語の正しい学習法のような気もする。テキストも問題も解答さえも英語というのは骨が折れるが、専門的な単語も身につき一石二鳥である。
■ボキャブラリー そこで、自分にあっていると思う英単語の教材を1冊買ってきて、徹底的に覚えるのが有効となる。どの単語本も取り扱っている単語はさほど変わらないから、レイアウトや同じページに載っている単語群などの好みで選べばよいであろう。ただし、アルファベット順はやめたほうが良い。単純作業の極みの様に感じ、やる気を著しく損なうのである。ちなみに私は桐原書店のものを使用した。 1冊丸暗記してしまうと、驚くほど読むことが苦痛でなくなってくる。ここで「単語を忘れてしまったからもう一度丸暗記をしなければ」と思う必要はない。あとは多読で忘れるのを防げばよい。読んでいて出てこない単語は、自分に必要のない単語だと割り切ればよいのである。また、1ページに1つや2つの分からない単語は飛ばして読んでも問題ない。ある程度の意味は推測可能であり、また、頻繁に目にするようであれば辞書を引けばよい。そうすることにより「文脈で覚える」ことが可能となる。 この方法は、リスニングで紹介したのと同じく、最初の「壁」を破る為のものである。単語を知っていると、多読が苦痛でなくなってくるし、英語を楽しめるようになる。いや、英語を、というよりも、英語で書かれた文章を楽しめるようになる。正直、私も理想的だと思う多読法だが、初期の段階はテキストの内容が子供向けで、大人が読むにはつまらないものが多い。早く単語の壁を破って、楽しめる内容のテキストに移行したいものである。
■グラマー 日常会話程度であれば、文法が正しくなくても十分通じるし、現に東南アジアの国々では必ずしも正しいとはいえない英語できちんとコミュニケーションを図っている。あまりこだわりすぎる必要はないとは思うのだが、ビジネスパーソンとして会話をする際には、あまり変な文法では格好悪い。まぁ会話の中で徐々に覚えていけばよいと考えている。
■ライティング
■スピーキング そこで現在通っているのがマンツーマンの英会話学校である。少々、値段は張るが、効果は抜群である。しかし、これとて、リスニング力を付けてからでないと、先生の発言を何度も聞き返してしまい、効率の悪いものになるであろう。野口悠紀雄が『「超」英語法』で述べている通り、「駅はどこですか」と尋ねても、相手の回答が聞き取れなければ意味はないのである。「早く話せるようになりたい」と焦らず、まずはリスニング力の強化が必須である。 また、語彙力の方も、読んで分かる単語と実際に使える単語は別であるという認識を持つべきである。リスニングやリーディングなどの「受信」がある程度できるようになっても、スピーキングやライティングなどの「発信」の際に使用できる語彙は驚くほど少ない。英単語を見て日本語が分かるだけでなく、日本語から英単語を連想する訓練も必要かもしれない。
△0373 『富豪刑事』 >筒井康隆/新潮文庫 背表紙あらすじ:キャデラックを乗り廻し、最高のハバナの葉巻をくゆらせた“富豪刑事”こと神戸大助が、迷宮入り寸前の五億円強奪事件を、密室殺人事件を、誘拐事件を……次々と解決してゆく。金を湯水のように使って。靴底をすり減らして聞き込みに歩く“刑事もの”の常識を逆転し、この世で万能の金の魔力を巧みに使ったさまざまなトリックを構成。SFの鬼才がまったく新しいミステリーに挑戦する。 最近のテレビドラマは、小説を原作にしたものが多いのでは、という話は何度も書いてきたが、まさかこの小説がドラマ化とはと驚いた。なんと筒井康隆の『富豪刑事』 しかも主役が深田恭子…。何気なく入った本屋に平積みされていたのだが、驚きと懐かしさに思わずパラパラと眺めてしまった。読んだのは高校生の頃。中学3年生くらいから星新一に傾倒し、そのエッセイなどから筒井康隆の名前を知り、星新一以上にのめりこんだ作家である。古本屋を漁って、ほとんど全ての文庫本を読んだのではないだろうか。高校生にはちょっと刺激が強い作品が多かったが、大人の小説を読んでいるような気分になり、それはそれで楽しかった。 大富豪の息子が刑事となり、事件解決のために湯水のように金を使う。この発想自体が非常に面白く、こんな主人公を考え付いた時点で作品はほぼ出来上がったも同然ではないかと思ったのだが、解説を読むとそうでもないようである。SF作家の筒井が推理小説を書くのには相当な苦労があったようで、4編を書き上げるのにかなりの時間を要したとか。しかし、誘拐、密室などベースとなっている部分はオーソドックス。ここに「大富豪」というテイストを付け加えている。例えば、5億円の大金を強奪した犯人を4人に絞り込んだのだが、時効が目前という設定。主人公の神戸大助は、この4人に金を使わせれば誰が犯人か特定できるのでは、富豪ならでは贅沢な世界に引きずり込む。また、別の作品では事件解決のために会社を一つ設立してしまったり、ホテルを貸しきってしまったり。 才能ある作家が苦労して作り上げた作品だけに完成度は高い。馬鹿話としても楽しめるし、ミステリーとしても読み応え十分である。これをドラマではどのように展開させていくのか楽しみであるが、あまりいじくりすぎてつまらないものにならなければよいがと心配でもある。視聴者の立場から言えば『警部補・古畑任三郎』のように一話完結の方が見やすいのだが、原作では4つの物語しか用意されていないので、あとはオリジナルとするのだろうか。 ちなみに、筒井康隆と深田恭子は『死者の学園祭』という映画で共演している。今回も筒井自身が役者として出演するらしい。また、筒井康隆のミステリーといえば『ロートレック荘殺人事件』も有名。そのうち、再読してみたい作品である。
△0372 『日本電産永守イズムの挑戦−すぐやる 必ずやる 出来るまでやる』 >日本経済新聞社編/日本経済新聞社/2005.01.03 日本電産・永守社長の経営哲学を纏めた本である。永守社長といえば、思い出すのが「マッチ理論」 雑誌『PRESIDENT』の2002年4月29日号に掲載されていたものなのだが、当時のメモが残っているので抜粋してみたい。「人間には3つのタイプがある。1つめはマッチを持った人間。つまり自分で心に火をつけ、燃えることが出来る。全体の3%しかいない。次は、マッチは持っていないが、マッチを持った人間がいれば一緒に燃えることが出来る人間。これが80%を占める。残りの17%は燃えられない人間。マッチを持った数少ない人間の大半は一流企業に就職するが、一流企業はなかなか彼らにマッチを擦る機会を与えない。せっかく持っているマッチでも使わなければ湿ってしまう。大企業病はそのあたりが原因ではないか」 この時の『PRESIDENT』にはソニーの出井氏、ミスミの田口氏、オリックスの宮内氏など、名だたる経営者がコメントしていたのだが、一番印象に残ったのが永守氏の「マッチ理論」であった。これまで、日本電産という会社も、永守社長のことも全く知らなかったのだが、この時の印象が強烈で、その後新聞記事なども気にするようになった。 さて、本書にはそんな永守社長の経営論が散りばめられている。印象に残った部分を列記してみたい。
また、休日に会議を開催することをスパルタだと皮肉られたこともあるようだが、永守氏曰く、休日に開催するといっても月一日だけ。しかも、休日に会議を開催することにより、単身赴任者は会社のカネで家族に会いに帰ることができる。むしろ社員にやさしい企業だと考えているとのこと。ちなみに、各会社の会議は月一日だが、永守氏自身は全ての会社の会議に出席するため、休みなし。正月1日休むだけで、あとは本当に年中無休だそうである。正月から身の引き締まる思いであり、年始にうってつけの本であった。今年も一年頑張ろうという気にさせてもらえた貴重な一冊。
△0371 『点と線』 >松本清張/新潮文庫/1999.07.20・2005.12.31 背表紙あらすじ:九州博多付近の海岸で発生した、一見完璧に近い動機づけを持つ心中事件、その裏にひそむ恐るべき奸計! 汚職事件にからんだ複雑な背景と、殺害時刻に容疑者は北海道にいたという鉄壁のアリバイの前に立ちすくむ捜査陣…。列車時刻表を駆使したリアリスティックな状況設定で推理小説界に“社会派”の新風を吹きこみ、空前の推理小説ブームを呼んだ秀作。 2004年も今日でおしまい。あっという間の1年であった。振り返ってみると、2004年度は1月3日のセコム会長・飯田亮氏の『経営の実際』に始まり本書まで167冊。ほぼ2日に1冊の割合で更新したことになる。結構、思い出し書評に助けられたりして、実際に読書したのは3分の2くらいだろうか。初年度の2003年はサイト開設ということで、随分頑張って203冊。半分くらいは過去に書き溜めたものなので、これを追い越すのは大変だろう。2005年は本格的にUSCPAの勉強をしなければならないし、なかなか読書に費やす時間が取れないかもしれない。 さて、本書であるが、なんと昭和33年の作品。西暦に直すには25を足せばよいので…1958年の作品である。私の持っている文庫本でさえ、1973年の発行で、1999年の92刷。あと4年すれば50周年。歴史を感じさせる凄い作品である。あらすじにもある通り「社会派」の「推理ブーム」を巻き起こした作品だが、さもありなんと納得させるだけの構成である。 ☆時刻表の盲点をついたアリバイ作り、心中に見せかけた殺人など、当時にしてみれば随分斬新だったに違いないアイデアが各所に散りばめられている。しかし、時代の流れは隠しようもなく、「心中」という最近はあまり聞かない自殺をトリックに使ったり、飛行機をつかったアリバイ作りに気付くまでかなりを時間を要するなど、現代に置きかえるには無理のある設定も。☆ 「心中」といえば、最近ネットで出会った見知らぬ者同士が練炭自殺するという事件が相次いでいる。☆男女を並べて殺しておけば心中に見えるだろうという発想は面白いが☆ 見ず知らずの全く関係のないもの同士が、自殺をするためだけに集まる世の中を、清張は想像し得ただろうか? 彼が生きていれば、この世の中をどのように描写しただろうかと、興味深い。松本清張といえば、中居正広の『砂の器』、米倉涼子の『黒革の手帖』と、現代に舞台を置き換えて続々とドラマ化されているが、本書も練炭自殺や飛行機のwebサイト予約、携帯電話などを取り入れて現代化できないだろうか? 長い作品ではないので、年末年始の2〜3時間のドラマに仕立て上げれば面白いような気がする。 話は逸れてしまったが、少し設定を変えるだけで現在でも通用しそうな物語ということ。改めて松本清張の偉大さを感じさせる。現代に置き換えたらどうなるだろうかとあれこれ想像するのも楽しく、いろいろな楽しみ方の出来る作品である。
苗村屋読書日記 [75]
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