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![]() △0380 『犯人に告ぐ』 雫井脩介 ○0379 『毒猿−新宿鮫II』 大沢在昌 △0378 『作家養成塾−プロの小説家になる』 若桜木虔 △0377 『愛逢い月』 篠田節子 ×0376 『組織変革のジレンマ』 Harvard Business Review編 △0380 『犯人に告ぐ』 >雫井脩介/双葉社/2005.02.03 週刊文春・ミステリー・ベスト10の2004年度第1位の作品である。『火の粉』が今ひとつだったので、高い単行本にはなかなか手を出せず、文庫化してから読もうと思っていたのだが、ブックオフで半額になっていたので思わず購入。文春で1位になるくらいだから、今回は相当面白いのだろうと、期待して読み始めた。 出だしは好調。「ワシ」と名乗る誘拐犯を主人公の巻島史彦が取り逃がすシーンから始まり、場面は一転。今度は「バットマン」と名乗る連続誘拐・殺人犯を追うことになる。そういえば、面白い誘拐モノには、なぜか過去と現在の2回に渡って誘拐のシーンが出てくるものが多い。『99%の誘拐』や『誘拐の果実』など。どれも趣向は異なるので、偶然の一致なのだろうか? さて、犯人捜査に行き詰った警察が、公開捜査に踏み切る辺りから物語は加熱してくる。公開捜査といえば、最近のテレビ番組で人探しや、超能力を使った犯人探しなどを放送しているが、私はあの手の番組があまり好きではない。散々気を持たせておきながら、結局犯人が捕まらない場合が多いからである。ごく最近まで犯人が住んでいたアパートなどは見つかるのだが、肝心の犯人が捕まったのを見たことがない。私自身がほとんど番組を見なくなったから余計に犯人逮捕のシーンを見ていないだけかもしれないが、果たしてこれらの番組を通じて捕まった犯人はいるのだろうか? 数ある超能力探偵の中で、私の知る唯一の成功例は、運動場に埋められたタイムカプセルを掘り当てることであった。これなども金属探知機などで何とかなりそうであるが…。いずれにせよヤラセ的な意図を感じてしまいあまり好きではないのである。まぁ、家出した人の人探しの方は、ある程度の成果をあげているようではあるが…。 話がそれてしまった。公開捜査である。公開捜査とはいえないが、『模倣犯』は犯人がテレビ出演するという点で似ているような気がした。最後の自白シーンは圧巻で、長い物語の終止符を打つにふさわしい壮絶なラストシーンであった。もう一つ、こちらも公開捜査とは言えないが、映画の『誘拐』 渡哲也が主演の1997年の作品である。前半の身代金受渡しのテレビ公開と後半の公害訴訟を背景にした哀しい物語。このコントラストが絶妙で、非常に面白い映画だったのを記憶している。 またまた話がそれてしまった。公開捜査である。本書で描かれている公開捜査は、もちろん超能力探偵を使ったものではなく、テレビ番組を通じて犯人に呼びかけるというもの。この発想が斬新で、これだけでも十分に魅力的な作品である。それにもかかわらず、△という辛口な評価にしてしまったのは、ラストシーンがあまりにもお粗末だからである。 重たい過去を背負った巻島の決意や、つまらないプライドの為に事件の進捗情報をライバルのテレビ局にリークする植草。巻島を陰日なたに支える津田や本田。これら登場人物のキャラクターも旨く描けており、最後の最後まで非常に面白く読み進めたのだが、あっけない犯人逮捕には愕然としてしまった。また、巻島のもう一人の敵ともいえる「ワシ」の正体も最後まで分からず仕舞い。わざと分からないまま伏せておくのも手法の一つかもしれないが、それならそれで、もう少し書き込んでもよかったのではなかろうか。いずれにせよ『模倣犯』のラストの秀逸さと比べると、なんとも見劣りしてしまう。宮部みゆきと比べるのは酷かもしれないが。 思うに、犯人を二人作ることにより、筆者の犯人に対する思いが分散されてしまい、犯人像の書き込みが甘くなったのではないだろうか。「ワシ」も「バットマン」も、なんとか旨く描写しようという苦労は見え隠れするのだが、迫力が感じられなかったのが残念である。『火の粉』の時も次回作に期待と書いたような気がするが、今回も次回作に期待、である。発想は面白いので、ぜひもっともっと構成を練って、面白い作品に仕上げてもらいたい。
○0379 『毒猿−新宿鮫II』 >大沢在昌/光文社文庫/1998.01.06・2005.01.29 背表紙あらすじ:歌舞伎町の女・奈美。孤独な彼女が心惹かれる外国人・楊は、謎の影を持つ男だった。一方、「新宿鮫」と恐れられる新宿署刑事・鮫島は、完璧な「職業兇手」(殺し屋)が台湾から潜入していることを知る。「毒猿」と呼ばれる男が動きはじめた刹那、新宿を戦慄が襲う!鮫島は、恐るべき人間凶器の暴走を止められるのか?奈美の運命は…。圧倒的な興奮と感動がふたたび!! シリーズ最高傑作とも言われる本書。私自身『新宿鮫』は6冊目の『氷舞』まで読んでいるが、本書が一番面白かったように思う。しかし、今回再読してみて、初読の時の興奮が感じられなかった。再読前は◎の予定だったのだが、再読してみて評価を○に落としてしまったのである。小説というのは読む時期や読む時の環境に影響されるものだとつくづく思った次第。 そうは言っても面白いことには変わりなく、一気に読了できた。今回は新宿鮫・鮫島の敵役・劉(=毒猿)を完全な悪役にしなかったところが勝因であろう。台湾マフィアを劉の敵にすることにより、鮫島だけでなく、劉にも感情移入できるようにしているところが旨いのである。 台湾の刑事・郭の存在も面白さを増幅させている。郭と劉の友情、郭と鮫島の友情も見所の一つである。そしてラストの劉vs台湾マフィアの闘い。副都心の新宿御苑を舞台にしたところなど、盲点を付かれた気がした。日本の繁華街で銃撃戦を展開させるとすれば、公園くらいしかないであろうが、新宿の妖しさと新宿御苑の静けさが妙にマッチして緊張感を高めている。 犠牲者が多すぎたのが玉に瑕だが、手に汗握る展開に魅了された。新宿鮫シリーズは、これからも少しずつ再読する予定。7作目以降も出ているようだし、まだまだ楽しめそうである。
△0378 『作家養成塾−プロの小説家になる』 >若桜木虔/KKベストセラーズ/2005.01.25 読書日記なぞ書いていると、ときどき自分には文才があるのではないかと錯覚してしまう。これはもう大いなる錯覚であり、誤解であり、自惚れであるのだが、自分にも小説が書けるのではないかなどと思うことがある。しかし、どんな世界でも「評論家」ほど楽なものはない。他人の努力にあーだこーだと文句をつけるだけなのだから。(ここでいう「評論家」とは、会社内で第三者的に文句だけ言う人のことであり、職業としての評論家ではないので、あしからず) そんな私の深層心理が手に取らせたのが本書である。ミステリーを読んでいると、ここをこうすればもっと面白いのにと思うことがあったり、こんなトリックで小説を書けば当たるのではと思ったり。今は仕事が忙しくて時間が取れないが、例えば50歳くらいになって、窓際に追いやられたりしたりなんかしたら、趣味で小説というのも粋かもしれない、と思ったり。 そんな私の思いを見事に打ち砕いてくれたのが本書である。やはり評論家は評論家に過ぎず、趣味は趣味に過ぎない。プロの作家というのは、これほどまでに色々なことを意識して書いているのだなぁと、改めて思い知らされた。主人公をはじめとする人物については、その性格や生い立ちなど、とことんまで考え抜き、構成に至っては伏線の張り方やネタをバラすタイミングを緻密に計り…。読めば読むほど「創作」の難しさを思い知るばかりだが、本書を読んで、少し小説の読み方が変わったように思う。 結局、書店で売られている本というのは、どんなに駄作であっても一定の水準を満たしているわけであり、「本」にすらならない新人作家が書いた読み物というのは、我々が目にすることは非常に少ない。今でこそ、インターネットで自作の小説を書くことが可能だが、個人的にはまだそのような小説を読んだことはない。本書の面白いところは、実際の応募作品の中から2作品を取り上げ、その短所や長所を挙げながら解説しているところである。2作ともそれなりの作品とのことだが、やはりきちんと発売されたものに比べると、読みづらさを感じてしまう。では、気になった部分を抜粋。 ■売れる小説の構成案
△0377 『愛逢い月』 >篠田節子/集英社文庫/2005.01.21 背表紙あらすじ:甘く切ない恋の至福のときは短くて、頂点を極めたあとには、ただ、執着と妄想に満ちた永い時間が続くだけ…。かつての恋人と共に、死者の世界を永遠にさまよう甘美な地獄を幻想的な筆致で描く「38階の黄泉の国」。出ていった男を待ち暮らす寂しい女の危うい心理を追う「ピジョン・ブラッド」など、恋と、恋の残滓の中にひそむ、恐怖とサスペンスとミステリーを描く愛の終わりの物語全6編。 6編の短編が収められているのだが、前半の3つが今ひとつ。篠田節子にしては、と途中で読む気をなくしてしまった。ずっと放っておいたのだが、ふと思いついて読書再開。すると後半の3編は見違えるように面白いではないか。個人的に合う合わないの問題もあるだろうが、短編というのは難しいものである。1つ1つの作品を書くのも難しいが、このように本として出版するときの構成、つまりそれぞれの順序・並べ方も難しい。 では、後半の3つだけ感想を述べたい。ちなみに前半3つのタイトルは『秋草』『38階の黄泉の国』『コンセプション』 『柔らかい手』…名作『家鳴り』の中の『操作手』にも似た面白さ。スキューバ・ダイビングの事故で左手以外動かせなくなってしまった主人公と、その妻の話。ダイビングに夢中でろくに妻の相手をしなかった夫を、結婚してはじめて独占することが出来た妻の狂気を描いている。パソコン通信を使って、なんとか助けを求めようとする夫が、結局は妻に組み伏されてしまう様が憐れ。日常の狂気を描いた秀作である。 『ピジョン・ブラッド』…結婚を間近に婚約者と別れてしまい、そのまま既婚者でなければ住むことのできない公団住宅に居座り続ける女。ベランダに集まってくる鳩とその糞に悩まされながら日々を過ごしている。そんな彼女の前に現れた年下の男性。彼を独占したくて、ウソをつくのだが…。これも日常の狂気を描いており、なかなか怖い作品。ラストも衝撃的。 『内助』…東大法学部卒でスポーツも万能な男。数々のライバルを蹴落とし、彼の妻になったのはよかったのだが…。司法試験に落ち続ける夫と、それを支える妻。結局夫は司法試験を諦め、主夫になると言う。そんな夫に愛想を尽かし、別れると宣言した途端…。『ビジョン・ブラッド』にも似た、最後の最後で不幸に陥ってしまう女性と、そこへ至るまでの心理描写が面白くも恐ろしい。篠田節子にしか書けない作品である。
×0376 『組織変革のジレンマ−ハーバード・ビジネス・レビューケースブック』 >Harvard Business Review編/ダイヤモンド社/2005.01.16 組織変革に関する問題点をケーススタディとして取り上げている。全部で6つの事例を挙げているので、まずは目次を抜粋してみたい。
画期的な手法があるのかと期待して読んだだけに、拍子抜けしてしまった。だいたい、うまくいっていない組織というのはコミュニケーションを図るのが大変なのである。お互いいがみ合って話し合いの席につこうとしなかったり、せっかく話し合いの場を持っても牽制なのか遠慮なのかその場では身のある話ができなかったり。 人によっては面白いと感じるのかもしれないが、個人的にはあまり内容のある本だとは思えなかった。組織以外にも、人材育成やマーケティングについても同様の本が出ているのだが、手を伸ばす気にはなれそうにない。
苗村屋読書日記 [76]
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