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△0455 『4TEEN』 石田衣良
△0454 『廃用身』 久坂部羊
△0453 『奇想、天を動かす』 島田荘司
×0452 『千円札は拾うな。』 安田佳生
×0451 『予知夢』 東野圭吾


△0455 『4TEEN』 >石田衣良/新潮文庫

 背表紙あらすじ:東京湾に浮かぶ月島。ぼくらは今日も自転車で、風よりも早くこの街を駆け抜ける。ナオト、ダイ、ジュン、テツロー、中学2年の同級生4人組。それぞれ悩みはあるけれど、一緒ならどこまでも行ける、もしかしたら空だって飛べるかもしれない―。友情、恋、性、暴力、病気、死。出会ったすべてを精一杯に受けとめて成長してゆく14歳の少年達を描いた爽快青春ストーリー。直木賞受賞作。

 『池袋ウエストゲートパーク』がなかなか面白かった筆者であるが、本書は直木賞受賞作ということで気になっていたもの。気にはなっていたのだが、単行本で買うほどでもないかなと、伸ばし伸ばしになっていたのを、文庫化に伴い購入。中学生という微妙な年齢を上手く、かつ瑞々しく描いた秀作である。

 帯から抜粋すると「太って大きなダイ、小柄でメガネのジュン、ウェルナー症のナオト、ぼくはテツロー」という4人が織り成す青春小説である。8編からなる連作小説だが、4人それぞれが主人公となり、青春の1ページを刻んでいく様が面白い。

 印象的だったのは一番最初の『びっくりプレゼント』 ウェルナー症という早期老化症候群にかかっているナオトに、吃驚するようなプレゼントを贈ろうというもの。そのプレゼントはなんと女の子。母親をだまして、病院の個室で二人っきりにさせてやるのだが…。少し哀しい結末なのだが、少年達の友情に心温まる作品でもある。話を盛り上げる為に、ラストではナオトが死んでしまうのではないかと危惧を抱いたのだが、杞憂に終わってよかった。

 もう一つ面白かったのは『十四歳の情事』 普段は冷静なジュンの恋物語である。しかも相手は人妻。ジュンに限らず、皆マセガキで、自分の中学生の頃はどうだったかと思い返してみたのだが、こんなおいしい話はなかったぞ。田舎と東京の差なのか、時代が違うのか。しかし、石田衣良といい、重松清といい、よくもこれほどまでに中学生になりきって小説が書けるものである。

 大作、という訳ではないが、1編1編が心温まる作品。筆者のあとがきによると随分長い時間をかけて出来上がった作品集だそうである。奇をてらった作品が注目されがちな昨今だが、このような小説が直木賞を取るということは喜ばしいことだと思う。

>2006.04.15.SAT


△0454 『廃用身』 >久坂部羊/幻冬舎文庫

 背表紙あらすじ:廃用身とは、脳梗塞などの麻痺で動かず回復しない手足をいう。神戸で老人医療にあたる医師漆原は、心身の不自由な患者の画期的療法を思いつく。それは廃用身の切断だった。患者の同意の下、次々に実践する漆原を、やがてマスコミがかぎつけ悪魔の医師として告発していく―。『破裂』の久坂部羊の、これ以上ない衝撃的かつ鮮烈な小説デビュー作。

 強烈なインパクトを持つ作品。正直、評価のしようがなく、やむを得ず△とさせていただいた。評価不能であり△というよりも「−」と表記した方がよいかもしれない。

 あらすじにもある通り、脳梗塞などで麻痺した四肢を切断することにより、身体の負担を軽くするというのが、本書の根幹をなす「Aケア」と呼ばれる治療法である。麻痺しているとはいえ、人間の肉体を切り離すというのには大きな抵抗があるのだが、確かに動かなく邪魔なだけの手足を持つ当人にとっては「切断」というのは有効な選択肢なのかもしれない。しかし、自分自身がそのような状態に陥ったとき、果たして切断を望むだろうか。人間の在り方そのものに疑問を突きつける作品であったと思う。

 さほど強烈な描写は無いのだが、なかなか読み進めることが出来ず、断続的に1ヶ月ほどかけて読了。なぜこんなにも時間がかかってしまったのか? 思い当たる節がある。小学生の頃、江戸川乱歩の『芋虫』という作品を読んでしまったのが原因であろう。小学生の頃の乱歩に対するイメージというと「怪人二重面相」であり、その延長で『芋虫』に手を出してしまったのがいけなかった。今読めば、もう少し感じ方も異なると思うのだが、小学生にとっては強烈過ぎたのである。

 作品としてはうまくまとまっていると思う。前半が主人公である漆原医師の原稿、後半は編集者の註記という形をとっており、なかなか面白い。しかし、前後半で一度話が中断してしまうのも、一気に読み進めなかった理由かもしれない。

 『廃用身』というタイトルも、改めて考えるとすごいものである。医学用語とのことだが、実在する言葉なのだろうか。筆者は『破裂』という作品もてがけている。未読だが怖いもの見たさで手を伸ばしてしまいそうである。

>2006.04.13.THU


△0453 『奇想、天を動かす』 >島田荘司/光文社文庫

 背表紙あらすじ:浅草で浮浪者風の老人が、消費税12円を請求されたことに腹を立て、店の主婦をナイフで刺殺した。だが老人は氏名すら名乗らず完全黙秘を続けている。この裏には何かがある。警視庁捜査一課の吉敷竹史は、懸命な捜査の結果、ついに過去数十年に及ぶ巨大な犯罪の構図を突き止めた。―壮大なトリックを駆使し、本格推理と社会派推理とを見事に融合させた傑作。

 一時期、このミスで10位以内にランクインした作品を読破してやろうと、過去の作品も古本屋で買い漁ったことがあるのだが、古い作品というのはなかなか手に取る機会がなく、積読になっている。本書もそんな中の一冊。積読を打破するきっかけというのは他愛もないもので、今日はゆっくり風呂に入ろうかと、多少濡れてもよさそうな本として選択したのが本書。なんとも失礼な話である。

 そんな失礼なきっかけで読み始めたのだが、1989年このミスの3位に選ばれているだけあって、なかなかの力作である。「本格」はどちらかというと苦手なのだが、本書は「社会派」とも融合していて、読み応えがあった。タイトルどおり、奇想天外なトリックも、多少無理があるとはいえ破綻はしていないし、なによりも「どうなっているんだ」と読者の興味を最後まで維持させているのは流石である。

 本当に小麦粉で列車が大爆発を起こすのか?など、疑問を持ち始めたらキリがないのだが、派手なトリックの裏に隠された、社会的なテーマをしっかりと読み取るべき作品であろう。結局、風呂からあがった後も読み続け、一気に読了してしまった…。

>2006.03.29.WED


×0452 『千円札は拾うな。』 >安田佳生/サンマーク出版

 日経新聞の広告欄が目に留まり、なかなか面白そうなタイトルだと思っていた本。広告のしかたもよく、本書に書かれているキーフレーズを適度に配して、読者の気をうまく惹いている。

 先日、妻と本屋に行った際、妻が本を選んでいる間に、パラパラと立ち読みを。買おうかなと思っていたのだが、目次だけでも読んでおこうと手に取ったところ、簡単に読めそうな内容だったので斜め読み。申し訳ないが、斜め読みで十分な本であった。というのも、広告に載せられたキーフレーズが全てであり、それ以上でも以下でもないからである。要は逆転の発想が大事ということであろう。

 本業の方では成功されている方のようなので、そちらについてあれこれ書くつもりはないのだが、本書に関しては、もう少し内容を充実させても良かったのではないかと感じた。そんな中、唯一心に残ったのが「成功できるか出来ないかは、今まで蓄積してきた経験やノウハウをリセットして、登りつめてきた階段から、エイヤと飛び降りることができるかどうか」というコメント。

 自分なりに解釈すると、1つのことに精通した人は、物事に精通する普遍的な方法をも知ることが出来る、ということだろうか。そうすれば、たとえ畑違いの仕事を任されてもある程度の成果は出せるものだし、また新しい物事に精通することも可能である。1つのことに精通し、その分野だけにしがみついていると、自分の可能性を狭くしてしまうことになりかねないので、チャンスがあれば、エイヤと新しい物事に挑戦すべきではないか。また、新しい挑戦によって視野や世界が広がり、やがては「T字型」あるいは「Π(パイ)字型」人間になることが出来るであろう。

>2006.03.25.SAT


×0451 『予知夢』 >東野圭吾/文春文庫

 背表紙あらすじ:深夜、16歳の少女の部屋に男が侵入し、気がついた母親が猟銃を発砲した。とりおさえられた男は、17年前に少女と結ばれる夢を見たと主張。その証拠は、男が小学四年生の時に書いた作文。果たして偶然か、妄想か…。常識ではありえない事件を、天才物理学者・湯川が解明する、人気連作ミステリー第二弾。

 本シリーズの第三弾である『容疑者Xの献身』がこのミスと文春ベストの1位になり、絶賛を受けている。ミステリーファンであり、東野作品も結構読み込んできている私としては、『容疑者Xの献身』はぜひとも読まねばならない作品。しかし、変なところで完璧主義なので、順序を重んじてまずは本書を手にとって見た。

 天才物理学者である湯川教授が活躍するのは『探偵ガリレオ』に続くものである。実を言うと、現時点で『容疑者Xの献身』を読み終えており、それを踏まえた上で感想を書くとするならば、本書は『容疑者Xの献身』には直接関係はなく、読んでも読まなくてもよい作品、ということになるであろうか。1作目の『探偵ガリレオ』は湯川の人となりを知る上で大切な作品かもしれないが、本書はあくまでも1作目の延長であり、トリックの内容も1作目を超えるものとは思えなかったのである。

 『夢想る(ゆめみる)』『霊視る(みえる)』『騒霊ぐ(さわぐ)』『絞殺る(しめる)』『予知る(しる)』と、またまた凝ったタイトルの短編が収録されているのだが、作品としてそれなりに面白いのだが、軽く読み流せてしまうものばかり。『容疑者Xの献身』を読み終えたばかりであり、点数が辛くなるのは仕方のないことかもしれないが、東野作品にしてはレベルが低いと感じてしまった。

 とはいうものの、筆者の湯川に対する思い入れの深さから、名作『容疑者Xの献身』が生まれたわけであり、湯川のキャラクターを一層昇華させるためには、通らなければならない道だったのかもしれない。

>2006.03.19.SUN

苗村屋読書日記 [91]

     



































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