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![]() ○0490 『リミット』 野沢尚 △0489 『灰夜−新宿鮫VII』 大沢在昌 △0488 『氷舞−新宿鮫VI』 大沢在昌 △0487 『野村ノート』 野村克也 ×0486 『外資系の仕事術』 岩崎哲夫 ○0490 『リミット』 >野沢尚/講談社 背表紙あらすじ:連続幼児誘拐事件の謎を追う警視庁捜査一課・特殊犯捜査係勤務の有働公子。婦人警官でなく、1人の母親として事件の当事者となってしまった彼女は、わが子を取り戻すため、犯人のみならず警視庁4万人を敵にまわすことに……。驚愕の展開、そして誰も予想だにしなかった戦慄の結末。ミステリーの到達点! 初読は1998.09.01。野沢尚の「小説」の中では一番好きな作品である。「小説」と敢えて書いたのは、彼は脚本家でもあるから。「脚本」として好きな作品は『眠れる森』 中山美保と木村拓哉との共演でも話題になったようだが、ドラマの方は見ておらず、脚本を読んだだけ。ミステリー調の凝ったストーリーは、恋愛物中心の当時のドラマ界に衝撃をもたらしたであろう。 本書『リミット』も安田成美主演でドラマ化されている。こちらのドラマも見ていないのだが、小説をドラマ化したものと記憶している。野沢尚の頭の中がどうなっているかは分からないが、恐らくドラマの脚本と小説とでは、物語の組み立て方が大きく異なるであろう。特に連続ドラマを前提とした脚本では、11〜12話をいかに視聴者に飽きられることなく引っ張るかという点に気を遣わなければならないであろうし、撮影が出来ないような無茶な設定とならないようテレビならでの制約もあるだろう。 本書も、たまたまテレビドラマ化されたが、最初からドラマを意識していたら、これほどスピード感のある物語にならなかったのではなかろうか。主人公の有働が仲間の警察官を振り切るシーンなど、なかなかのものである。撮影現場における交通事情を考慮しながら書いていたのではこうはいかないような気がするのだが。そういえば『殺し屋シュウ』という作品で野沢尚はハリウッド進出を目指していたとのことだが、個人的には本書の方が面白く、映画向きだと思う。11〜12話のドラマよりも、もう少し話をシンプルにして2時間程度に収めた方が、よりスピード感が出るだろう。なんなら思い切って舞台をロスあたりに変えてもよい。 さて、ドラマのことばかり語ってしまったが、本書が面白いと思ったのは子供を臓器提供の為に誘拐するという設定と、その被害者として自分の息子を誘拐されてしまった婦人警官という設定。この設定を思いついた時点で、野沢尚の頭の中にはさまざまなアイデアが飛び交い、そのアイデアを傑作へと昇華させていったのではなかろうか。一方で子供の臓器移植に関する記述については、大きな憤りを感じた。ヒール役の智永たちが語る幼児輸出の謀略には本当にムカムカしてしまった。 秀逸なアイデアとスピード感溢れる描写。これだけでも十分面白いのだが、ラストのどんでん返しにも吃驚。再読にもかかわらずすっかりと失念しており、見事に「してやられた」という感じである。よくこんなことを考えつくものである。こういう傑作を読んだ後には、もう、新作が読めないのかと、改めて野沢尚の存在の大きさを感じてしまうのであった…。 △0489 『灰夜−新宿鮫VII』 >大沢在昌/光文社文庫 背表紙あらすじ:目覚めたとき、鮫島は闇に包まれた檻の中にいた―自殺した同僚・宮本の七回忌に彼の故郷を訪れた鮫島。宮本の旧友と会った直後、周囲で何かが動き出す。麻薬取締官、県警の刑事、地元の暴力団。その深夜、鮫島は拉致された―底知れぬ力の影が交錯する中、見知らぬ街で孤立無援の闘いが始まった!男の誇りと友情をかけた熱い怒りが弾けるシリーズ第7弾。 前回も書いたが、シリーズもので読者を飽きさせない演出というのは難しいと思う。今回は新宿鮫といいながら舞台は新宿ではなく、また今まで必ず登場してきたサブキャラクターの桃井や晶が一切登場しない。鮫島一人の孤独な戦いである。新宿という限られたシチュエーションを抜け出して、違った展開をさせようという筆者の苦労が滲み出た作品。 新宿ではない舞台がどこかというと、明記はされていないが九州のある県と思われる。福岡に近い様なので、長崎か宮崎か、はたまた架空の都市か。しかしながら、この地方に降り立つことになったきっかけの部分で、しっかりと読者の心を掴んでしまう辺りに熟練した技術を感じる。今までぼかされてきた鮫島の持つ極秘文書。その筆者である宮本との経緯が書かれているのである。今回のきっかけも宮本の七回忌に出席するためのもの。 ところでこの宮本文書の中身を筆者は考えているのであろうか。私の勝手な想像だが、1作目を書いたときには唯の「極秘文書」であり、その中身まで考案していなかったのではないだろうか。シリーズを書き進めるにつれ、鮫島が持つにふさわしい「極秘」の内容を少しずつ考えていけばよいと思ったのではないだろうか。『氷舞』では公安の持つ暗部が浮き掘りにされたが、さらに大きな秘密となると…。警察に対する知識の乏しい私には想像もつかないが、そろそろネタが明かされてもよいような気がする。もしかしたらネタバレとなるときが、新宿鮫シリーズの終焉となるのかもしれないが。 このシリーズは長い時間を掛けて少しずつ刊行されているが、その象徴とも言えるのが携帯電話の存在。少し記憶が曖昧なのだが、シリーズ1作目で晶を狙った木津の変造拳銃は肩からかけるショルダーバッグのような携帯電話ではなかったか。その後、ポケベルで連絡を取り合うシーンなどを経て、携帯電話を普通に使いこなすようになる。「どこにいても連絡が取れる」というのはある意味、ミステリーを書くにあたっての大きな制約になりそうである。携帯電話の電源が切られていたり、圏外だったりするのは、よく見かけるシチュエーションであるが、違和感を感じさせないようにするのはなかなか大変なように思う。 さて、本書『灰夜』の物語そのものは、他の作品に比べて面白いとは思えなかった。何かは分からないが、何かが足りないという感想を抱いてしまった。それは舞台が新宿でないことかもしれないし、晶が登場しないことかもしれない。一方で古山という素晴らしいキャラクターを生み出してもいる。水商売の世界に生きながらも一本筋の通った傑物。部下をして「よごれ役を下に押しつけない、希有な人です」と言わしめている。素晴らしい人物だけにラストシーンは残念。この救いのなさが、私の本書に対する評価を下げているのかもしれない。
△0488 『氷舞−新宿鮫VI』 >大沢在昌/光文社文庫 背表紙あらすじ:西新宿のホテルで元CIAのアメリカ人が殺された。事件の鍵を握る平出組の前岡に迫る鮫島。しかし、なぜか公安警察が立ちはだかった。その背後には元公安秘密刑事・立花の影が。捜査の過程で鮫島は、美しく孤独な女・杉田江見里と出逢い、惹かれていく…。江見里と事件の関わりが浮上するなか、鮫島は“核心”に挑む。興奮と感動の傑作シリーズ第6弾。<P> 新宿鮫シリーズは本書までが既読。これ以降の『灰夜』と『風化水脈』は未読である。不思議なもので、今回時間をかけて再読しているが、作品によって記憶が鮮明なものと全く覚えていないものがある。『無間人形』と本書『氷舞』はまったく記憶にない方の作品。本書など、公安OBが出て来たり米国CIAがからんだりと派手な設定なので覚えていてもよさそうなものだが、個人的には『炎蛹』の「蛹」の方が印象的だったらしい。 さて『炎蛹』で本シリーズは技巧的転換を迎えたと書いたが、それを裏付けるかのような凝ったストーリーである。これまではむしろアクション警察小説的な印象が強かったが、本作品では謀略的な要素がたくさん混入されており、これはこれで読者を飽きさせない。 音楽の世界でもそうかもしれないが、読者(または視聴者)は、1人のアーティストに自分の望む世界をたくさん作り上げて欲しいと願う反面、今までと違う世界につれていって欲しいといった矛盾した要求を抱えている様に思う。同じような作品・楽曲ばかりではファンに飽きられるであろうし、かといって大幅な路線変更は従来のファンを失ってしまうことになりかねない。サザンオールスターズなどは、独自のスタイルを維持しながら、次々と新しいものに挑戦しており、凄いなぁとおもうのである。全く毛色の異なる新曲を聞いても「あっサザンだ」と分かるのは本当に凄い。 話がそれてしまったが、本書は従来の派手なアクションを望む新宿鮫ファンをも納得させ、更なるファンの獲得に挑戦しようとする作者の心意気が伝わってくる。奇しくも、本書に登場する鮫島の恋人・晶がロックの世界でメジャーデビューし、鮫島を大事にするか、ファンを大事にするかという問題に直面している。これは新宿鮫という物語がメジャーデビューし(1作目からすでにメジャー級ではあったが)物語の方向性について悩み出した筆者自身の苦悩の表れでもあるかのようだ。 公安が登場するということもあり、全体的に暗い雰囲気で進む物語は、個人的には好きなタイプではないが、練りこまれたストーリーは秀逸。鮫島の新たな恋にも注目したい。「ファン」ならば外せない一冊である。
△0487 『野村ノート』 >野村克也/小学館 随分前に購入し、その日の内に読破し、感想を書かないまま放っておいてしまった。感想未筆の本があと何冊か。USCPA学習中だったので、読むだけ読んでそのままというのが結構ある。 一気に読了し、気になる部分に線を引いておいたのだが、読み返して見るとさほど感心する内容でもない。やはり時間が経つと、読み進めているときの新鮮な感覚というのは薄れてしまう。一方で「間」を置くというのも大切なこと。その時は必要以上に感動し、素晴らしく思えたものが、時間を置くとさほどでもなかったというのは良くあること。個人的な書評であるし、熱のこもったものと、冷静なものとが混在していても面白いだろう。 野村克也氏の本といえば『勝者の資格』がある。こちらは読んだタイミングもあるだろうが、非常に感銘を受けた記憶がある。それに比べると本書は二番煎じ的な感じが拭えなかった。そうはいっても名のある監督の書く本である。メモしておきたい箇所を抜粋しておきたい。
人を育てるというのは難しい。私如きに「人を育てる」資格などあるのだろうか。そうはいいつつも、年々歳を取るわけであり、やはし今居る組織の中で若手を育成していかなければならない。仕事の効率や正確性も大事だが、人を育てることが一番難しく、かつ一番重要であるということを気付かせてくれる本である。
×0486 『外資系の仕事術−世界で活躍する人物になれ』 >岩崎哲夫/PHP 某商社からアプライドマテリアルズという半導体製造装置メーカーの日本法人を立ち上げた著書の体験に基づく本である。いろいろと示唆に富んだアドバイスも多いのだが、企業の立ち上げという、なかなか経験できないことを基礎に書かれており、一般論としてどこまで通用するのかと少し疑問が残った。タイトルからして外資系企業に就職・転職したいと考えている人が購入する例が多い様に思うが、そのような読者からすると期待外れになるのではなかろうか。 では、気になった部分を抜粋。
苗村屋読書日記 [98]
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